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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・八部 超英雄
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迫る決戦

「……奴は、どこから出てきたんだ」

「急に現れたように思えましたが」

「ミズキも、そう感じたか。なら、それで間違いなさそうだ」


 まだ周りを警戒しながら、俺達は山の上を見渡す。どうやら、他の敵は出てこなさそうだ。


「アルティ、大丈夫か?」

「はい。相手の生体情報は、問題なく記録致しました。後は、情報の解析を進めるだけです」

「そうか。これで、カザネが進化できると良いんだが」


 その後、少し立ち止まって周りの魔力を観察してみたが、風の魔力が強い以外は特におかしなところを感じられなかった。迷宮は恐らくここにある。だが、今の俺達ではその場所にたどり着くことも、感じることも出来なさそうだった。数分後、諦めて転移して俺達は帰ることにした。


「ただいま」

「おかえり、ベイ」


 家に帰ると、アリーが走ってきてキスをしてくれる。ああ~、なんだろう、新婚気分だ。


「おかえり、ベイ君」

「ただいま、アリー、ヒイラ」

「……見てたわよ。簡単に見つかりそうにもないわね」

「ああ。アリーも見てたのか」

「ええ。まぁ、見てたのはもう1人の私だけど。で、どう、アルティ?」

「もう少し時間がかかりそうですね。しばらくお待ちください」

「そう。まぁ、あの魔物は私も見たから、私も調べてみるわ。身体が魔力だと、記憶も楽でいいわね。人間のときより遥かに大容量に、自由に覚えていられる。まぁ、初めは苦労したけど……」


 魔力体だと記憶が楽なのか。それは、ちょっとうらやましいかなぁ。いずれ、俺もそうなるんだろうか。


「まぁ、今日はもう寝ましょう。結構な強敵だったみたいだしね」

「ああ、そうだな」


 一体化した俺達が、少しは苦戦した相手だ。一体化せずに戦っていたら、かなりの強敵だっただろう。……訓練をもっと頑張るか。皆の進化ばかりに、頼るのもいけないだろうからな。そう思いながら、俺は自分の部屋に移動する。そして、アリーの出した布団を引いて、皆で眠った。ベッドを部屋外に移動して寝たのだが、やはり狭い。


「……う~ん」

「?」


 目が覚めた。朝日の光が目に差し込んでくる中、誰かが唸っている。それは、アルティだった。俺の頭の上らへんで、目を閉じて唸っている。


「どうしたんだ、アルティ?」

「マイマスター、おはようございます。……一応、解析が済んだのですが」

「お、どうだった?」

「……謎ですね」

「謎?」

「そうです。とてもおかしいのです。奴には、記憶を管理する領域が、見つけられませんでした」

「えっ?」


 それはどういうことだ。脳みそがないということか。だが、あいつは喋っていた。そういうことではないと思うのだが。


「厳密に言えば、脳みそはあります。ですが、記憶を管理できるほどの容量はなかったと私は判断します。あれでは、まともに戦うことも出来ないはず。ですがあいつは、まともに喋り戦えていた。謎です」

「それは、謎だな」

「はい。謎です」


 あれほどまともに見えていたのに、中身はそんな感じだったのか。やはり、目で見るだけではわからないこともあるものだな。


「う、うーん。おはよう、ベイ」

「ああ、アリーおはよう。アリーは、どう思う?」

「えっ?……ああ、そういうこと。えっと、そうね。私も、そういう考えにたどり着いたみたい。確かに、アルティの言うとおりね。何故、あそこ迄動けているのか謎だわ。……いや、出来ないこともないか。ただ、この方法だと少し厄介な……」

「アリー?」

「……もうちょっと、情報を集めましょう。結論を急いで、下手をうつ必要はないわ。一体だけですもの。情報不足だといけないし、他の魔物は違うかもしれないわ。カザネや、皆に使えるかどうかは、その後考えましょう」

「ああ、分かった」


 それから、月日が流れた。訓練をし、迷宮を探して回る。だが、迷宮は見つからず月日が過ぎ、学校も始まってもう10月になろうとしていた。


「……そろそろでしょうかね。例の件は」

「ああ、そろそろだろうな」


 風属性中級迷宮で訓練をしながら、ミルクと話す。相変わらず打撃が重い。アルティでいなすのが精一杯だ。


「創世級が相手ですか。さて、勝てるでしょうかね」

「戦うかも分からん、だが、やるなら勝つさ!!」

「ふふっ、そうですね。ご主人様がそうおっしゃるのなら、必ず勝ちましょう。私達も、全力でお手伝いいたします!!」


 そういって、ミルクは俺に強化した拳を叩きつけてきた。俺は、アルティでそれを真正面から受け止める。腕に魔力で作った鎧を纏わせ、腕力を強化して受け止めた。だいぶ、この鎧の構成の仕方、扱い方にも慣れてきた。全身にも、今は問題なく纏える。アルティの言っていた一体化も、今なら出来るだろう。


「おお、流石ご主人様!!」

「……ミルクの打撃を、受け止められるなんてな。俺自身、ビックリだよ」


 ミルクを跳ね飛ばし、アルティを下ろす。すると、アルティが人に変化した。


「真・一体化仮も今なら5秒保つでしょう。必ず勝てるとわいいませんが、強烈な一撃は放てるはずです」

「5秒か」

「心もとないですねぇ。せめて、30秒は欲しい」

「研究を進めます……」

「いや、アルティはよくやってくれてるよ。この調子で頼む」

「はい!!」


 さて、一応の決戦準備はできたか。あとどれだけ、日数が残されているのだろう。もう数日もしないうちに、人生を分けるような決戦が待っている。……サリスを引き抜き、俺は空に向かって刀身を掲げた。切り抜けるとするか、人生の目標の敵との決戦を。煌めくサリスの刀身を眺めた後、俺は空を切り裂いた。風が、僅かに周囲にたなびくように吹き、流れた。


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