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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・八部 超英雄
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未踏の入り口

 その後、皆を戻してバルトシュルツ家の応接間に戻り、しばらく談笑して食事をして帰ることにした。結局、ガーノは帰ってこなかった。帰る時、しれっとアリーもこっちに付いてきた辺り、もう色々許されたんだなと感じた。式はいつ上げましょうかね、アリーさん?


「まぁ、これで全ての問題が片付きそうね。後はお祖父様とお兄様だけど、お兄様は私の結婚とかには興味なさそうだし、お祖父様は時間が経てば陥落できるでしょう。全て、終わったわね」

「おめでとう、アリーちゃん」

「ありがとうヒイラ。……これで、正式に正妻ね。そして、貴方と皆と正式な仲間になれた。そんな気がするわ」

「大げさだよ、アリーちゃん」

「そうかもね。でもヒイラ、貴方と同じ人を愛せるんだもの。なんだか嬉しいわ」

「そ、そう?」


 そう言いながら、アリーが俺の右腕に抱きついてくる。その動きに合わせるように、ヒイラも俺の左腕を優しく握った。両手に花だな。


「うちの子も、成長したなぁ」

「そうね。あの子が生まれてきたことが、つい昨日のことのようなのに……」

「時が経つのは早いな……」


 しみじみとそう言いながら、うちの両親は付いてきている。楽しそうに、俺を交えて会話を進める嫁2人を見つめてなんだか嬉しい気分になりながら、俺は家に帰った。


「さて」

「行くの、ベイ?」

「まぁ、思い立ったが吉日とも言うしね。ちょっと、様子だけ見てみるよ」

「気をつけてね」

「頑張って、ベイ君」

「分かった」

「ご主人様が気をつける相手なんて、そうそういないと思いますけどね」


 夜。少し神魔級迷宮を気にかけていた俺は、取り敢えず行ってみようと考えた。アリーとヒイラを家に残し、まだ空が完全に暗くなっていない今のうちに行くことする。今の俺達なら、すぐに帰ってこれるだろう。転移で少し移動し、一体化をして目標の地点まで移動を開始した。予想通り、ものの数分でその場所にたどり着く。まぁ、場所自体が近いというのもあるが。


「さて、ここか」


 サイフェルムに、ほど近い山の頂上。まるで、何かでくり抜かれたかのように頂上が抉れているその付近に、俺達は着地した。


「……確かに、普通では無いな」

「ええ、風の魔力がここだけ多い。当たりで、間違いはないでしょう」

「しかし、何もないが」

「……地下、とかでしょうか」

「うーん、探っているが何もなさそうだ。何処にあるんだ?」


 ジャリ、っと音がする。見ると、山の頂上端に布切れを纏った何かが座り、こっちを見ていた。……何時からいたんだ。


「……少し大きな魔力がしたから来てみれば、面白そうなやつがいるもんだな」

「誰だ?」


 そいつは喋っている。だが、纏っている布切れから見えている足と腕は人間のそれではない。そう、例えるなら鳥だ。人間のような大きさの鳥の腕と足だ。


「申し遅れた、ウインガル四翼の一羽、円眼のホロウズという。そして、会ってすぐで悪いのだが、死んでもらえないだろうか」

「フクロウ?」


 そう言いながら、そいつは顔を見せてきた。何処と無くフクロウに似た顔付きをしている。だが、その鋭い目つきは愛らしいフクロウのものではない。闇夜の中で、不気味に光り輝いていた。訝しげに、俺はホロウズと名乗った奴を観察する。すると、ホロウズの目から、まばゆい光が放たれた!!


「うわっ!!」

「ふっ!!」


 眼を腕で隠し、光を遮る。そうしているうちに、ホロウズが接近し突きを放ってきた。だが、戦闘慣れした俺達にその程度の攻撃は通らない。もう一方の腕でホロウズの腕を掴み、その突きを止めた。


「なんという幸運!!こいつ、神魔級魔物ですよ!!」

「ちっ!!」


 俺達の腕を振り払い、ホロウズは飛び退く。……俺達の掴みから逃げた。それだけで、普通以上の強さをしていることがわかった。油断は出来ない相手らしい。


「外は平和ボケしていると思っていたが、そうでもないらしいな」

「アルティ」

「お任せ下さい」


 アルティに解析を任せ、俺達は構える。ホロウズに合わせて、素手で迎撃態勢を取った。


「やはり、内にいただけでは知れない強さもあるか。面白い。せいぜい楽しませてくれ」


 そうつぶやくと、俺達の目の前からホロウズの姿が消えた。


「なっ!!」

「遅いぞ」


 背中を蹴られる。まともに攻撃を受けた。一体化している俺達がだ。……何だこいつ。強いぞ。


「くっ!!」

「かなり硬いようだが、いつまで耐えられるかな!!」


 ホロウズが動く度、蹴りを放つ度、周囲の大気が揺さぶられ振動する。明らかに、今まで戦ってきた奴らとは格が違う強さだ。これが、本当の神魔級クラス。その攻撃を、神魔級強化をかけ、カザネの高速移動魔法でなんとかさばいていく。マジかよ。俺達が、ついていくのがやっとのスピードを持つ魔物がいるだなんて。


「面白い相手ですね」


 カザネが、ホロウズを見てそう言った。そして、蹴りを放ちホロウズを後ろに下がらせる。


「何故、いきなり交戦してくるんだ」

「……声が変わる。おかしなやつだ。何故だと、それはな、この地に殺した者の魔力をなじませるためだ」

「ほぅ」

「お前みたいなやつは特に良い。その魔力がこの地に吸い上げられ、やがて俺達の力となる。その巨大な魔力がだ。隠しても無駄だ。俺には分かる。お前の実力が、魔力の大きさが。この目でな!!」

「伊達ではないらしいな」

「モードチェンジ・カザネ!!」


 アルティが、俺達の足につき脚力を強化する。足に全体重を乗せ、俺達はホロウズを睨みつけた。


「解析を完了しました。何時でもどうぞ」

「分かった」

「1人じゃないのか?まぁいい。次で殺す」


 ホロウズも、こちらを見て体重を足に乗せている。来るか!!


「……はぁああああ!!!!」

「でやぁあああああ!!!!」


 お互いに風属性の魔力を纏い、全力の蹴りを放ちあった!! 山の中央付近で、風と風が激突する!!

 空気の壁がぶつかり合い、大きな衝撃波を周りに撒き散らした!!


「この!!」

「終わりだ!!」

「馬鹿な!!」


 徐々に激突の均衡が破られ、俺達が押し始める。そして、超高速の蹴りで、ホロウズを真っ二つに蹴り抜いた!!


「……お前、遅すぎたな」

「俺が、馬鹿な……」


 カザネが、決め台詞でも言うかのようにそう呟く。俺達が着地した後ろで、ホロウズの残った身体が爆発した。巨大な風の魔力を周りに撒き散らしながら、その体を消滅させていく。その光景を、俺達は風魔法でガードしながら見ていた。



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