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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・八部 超英雄
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先に行くための条件

「単刀直入に聞くけど、神魔級迷宮に今はなくなっている迷宮があるのは知っているわよね。それは、何処にあるの?」

(どれのことだ?風魔級・ウインガルか?火魔級・ヴァルタリアか?)

「全部よ。全部」

(我々とて見つけるのは難しい。奴らは、自ら迷宮を閉ざしているのだ。外界との接触を避け、力を蓄える。それが、奴らの考え。それが、世から姿を消した神魔級迷宮。最も強き属性の魔力が渦巻く地たちだ)

(奴らには知性がある。他の迷宮とはわけが違うのだ。そのせいで、簡単に見つけることが出来ない)

「……あんた達でも、無理か」

(知ってどうする)

「勿論、挑むのよ。ベイが!!」

「……えっ、俺が?」

「そして掴む、神魔級進化を!!」

「!?」


 え、何? どういうこと? 挑めば出来るの、神魔級進化を?


「アリーさん」

「それはどういうことですか?」


 俺の周りに、皆が出てくる。そして、皆がアリーに疑問を投げかけた。


「いい、何故あなた達の中の誰もが神魔級に進化していないのか、分かる?」

「それは、魔力が足りないからではないですかね?」

「確かに、魔力があれば進化できるでしょうね。それは、レムが証明したわ。でも、あなた達はとうに聖魔級の枠を超えている魔力であるのにも関わらず進化できていない。よって、おそらく今の段階で魔力は足りていると思うのよね。それでも進化できていない。ということは?」

「はい!!進化する先が想像できていないからではないでしょうか?もっと、具体的な進化先を心に描けば出来るとか?」

「そうね。……でも、はっきり言うけどそれも違う気がするのよ。今までだって、皆の願望を少なからず反映した進化ではあったと思うわ。それでも、実力などは曖昧な想像と心持ちで進化できたはず。なら、今回もそれで行けるはずよね。でも、あなた達は行けていない」

「とすると?」

「実力不足とか?」

「それは、……考えにくいわね。一体化で、十分な戦闘経験と力の扱いも身に着けているはず。それが反映されているのなら、とうの昔に進化できていてもおかしくない」

「では、何が足りないのですか?」


 アリーは目をつむる。そして大きくのけぞると、こう言った。


「貴方達と神魔級の魔物には、違いがある。それが分かるかしら?」

「違いですか?」

「知性があるとか?」

「そう、それ」

「え、どういうことだ?それに、何の関係が?」

(神魔級の魔物は、生きている別個体の生物のように見えるが。実際は、全て迷宮自体が作り出した管理者にすぎない)

「……は?」


 え、どういうことだ? 神魔級の魔物は、自我がないということか?


「私の、まぁ、もう一人の私の観察して分かった結果だけど。簡単に言うと、神魔級の魔物は多少の自我はあるもののそのすべての行動が本能的なのよ。つまり、皆のようにベイを愛したり、仲間を守ろうとかいう考えはない。何時でも冷徹に判断を下し、全てを決められているかのように行動している。それが、神魔級の魔物なのよ」

「……嘘でしょ。だって、眼の前にいる彼等だって、自我があるではないですか?」

(私達は、いわば特例だな)

(我々は、直接的に迷宮によって生み出された魔物ではない。迷宮が管理を誤った区域に、偶然できた魔力溜まりから生まれてきたのが我々だ。よって、我々は迷宮の意志の影響を受けずに、神魔級魔物として誕生することが出来ている。迷宮の意志とは、蚊帳の外の存在なわけだ。よって、生きていく為にも自我を持つ必要があった。考え、行動する力を)

「そんな。……何故、彼等には自我がないのですか?」

(魔物を構成しているのは、魔力だろう。彼等は、頭の大半をその体を維持するのに使っている。ようは、自身の体に押しつぶされそうになっているのだ。考えるということを放棄せねばならぬほどの力を、生まれながらに持っているゆえに。だとしても、生きる以上行動せねばならない。それが最低限の本能的な行動であり、それこそが迷宮に植え付けられた意志だ)

 

 プロティアとダールは、何処か悲しそうな表情をしている。二頭なりに思うところがあるのだろう。


「じゃあ、もしかして私達が進化できないのは?」

「進化したら、増大した力でこの記憶を、感情を殺してしまうかもしれないから?」


 皆が、とたんに静かになった。誰一人、何も言わずに固まっている。……正直、それは辛い。いくら力を手に入れても、失いたくないものもある。記憶とは、感情とは人間にとって生きている者にとって自分が自分でいるために欠かせないものだ。それを失うとなれば……。


「私、進化したくないです」

「ミルク……」

「貴方を、ご主人様を愛していたい。失いたくないんです。一番大事なものを!!」

「……ああ、それでいい。俺も、賑やかじゃなくなったミルクを見るのは辛いしな」

「マスター」

「フィーもいいんだよ。皆も、そんな顔をしなくて良いんだ。自分であることを捨ててまで、力を手にしなくていい。俺は、そう思う」

「主人……」

「主様……」


 少しは、皆の表情が和らいだ気がする。だが、まだ曇ったままだ。……正直に言うと、進化しなければ創生級に現時点で勝てる可能性は1%あれば良いほうだろう。やはり、生き残るためには選択肢としてどうしても出てくる。進化。今まで、大喜びでしていたものが、いきなり嫌なものに変わるとは。世の中、上手く出来てはいないものだな。


「そう落ち込む必要はないわよ。何故って言ったでしょう?今、姿を消している神魔級迷宮。その迷宮の魔物は、知性を持っている。つまり、奴らを見ることができれば、知性を保ったまま進化する方法が見つかるかもしれない。その枷を外すことが出来た時、皆は神魔級に進化することが出来る。私は、そう思っているわ」

「そ、それは本当ですか!!」

「ええ。無意識に進化を拒否している部分を何とかしてOKにすればいい。そのはずよ」


 アリーの言葉を聞いて、皆の顔に笑顔が戻った。そして何処か皆、覚悟を決めたような表情のようにも見える。それぞれが拳を強く握り、次の目標を定めたような顔をしていた。


「なるほど、そんな可能性が。盲点でした」


 アルティが、スッと俺の前に降り立つ。顎下に当てている腕を外し、とある考えを口にした。


「属性ごとに迷宮があるように、その知性の保ち方も属性ごとに違うかもしれません。出来れば、全ての迷宮を回りたいところですが」

「そこなのよね。データを取る上でも、多くの迷宮を回りたいんだけど」

「一番近いところってあれですよね。風魔級・ウィンガル。サイフェルム近くにあったとされる古代迷宮ですよね」

「そうね。あそこが探す上で、拠点的にも近いかもしれないわ」

「……1つ、知ってるかもしれない。失われた神魔級迷宮を」

「えっ、本当ベイ?」

「ああ、全属性迷宮・フェアリハル。あそこなら、二度ほど行ったことがあるはずだ」


 かつてレムが、聖魔級進化を行った場所。アルティの人化の為の魔力吸収の地。その場所を、俺は思い浮かべた。



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