ちょっと多すぎませんかね?
「なるほど。そんなにいるのなら、確かに邪魔にも思うだろうな」
「まだ、これでも全員じゃないんです」
「!?」
……全員の視線が、俺に集まっている。やめてくれよ。そんな目で見ないでくれ。
「ああ、何人いるのか分からんが。ともかく、全員アリーが認めるような女性なんだな?」
「ええ、間違いなく。……ロデは、まぁ、金だけはありますし」
「……」
何故かロデだけは、仕方ない感じで付け加えるんだな、アリーは。まだ、認めていない感じなのだろうか。
「……大丈夫なのか?その、そんな大人数で」
「ええ。まだ足りないと、私は思っています」
「!?」
だから、そんな目で俺を見ないで欲しい。頼むから。
「元気なのね」
「はい、お母様」
「そ、そうか。あの動きをしていたんだ。体力も、かなりあるんだろうな。若いし」
「……」
いや、俺何も言えないよ。この会話に入っていけないよ、そんなセリフ。なんて言えばいいの? そうです、とか言えないよ!! 言えたら怖いよ!! この場で。空気読めなさすぎるよ!!
「でも、ほら、そんなに多いと性格の不一致とか、ウマが合わないとかあるんじゃないか?そこら辺は……」
「問題ありません。そんな人はいませんので」
「そ、そうか」
「他の子は、どんな感じなの?名前を上げてくれた子たちは、なんとなく想像がつくのだけど……」
「そうですね。各属性魔法に特化した子たちが多いですね。後は、それぞれ異なった武器の使い手であるとか、サポートが可能であるとか、ベイと渡り合えるほどの力を持っているとかでしょうか」
「このベイ君に、渡り合える女性がいると?」
「はい。私の次に早くベイと出会い、嫁候補となった女性です」
「世の中には、まだそんな使い手が……。城の中にいるだけでは、わからんこともあるもんだな」
フィーの存在なんて、知りようが無いからな。お城に居ても居なくても、変わらない事実だったと思う。
「そして、彼女達の容姿も多種多様。当たり前ですが、それでいて全員美が付く女性ばかり。私ですら、負けていると思える子も……」
「アリー以上だと?」
「そんな子が……」
……アリーの、胸の前で腕を回している動き。明らかに、ミルクの胸を指しているな。いや、あれは誰も勝てないよ。反則級だもんな、あれは。一体化より反則級なきがする。
「胸はミルク、足はカザネ、腹はカヤ。肌のすべすべ具合はフィー。変幻自在な技巧ナンバーワンのミズキ、連携攻撃が強力なミエル、シスラ、サエラ、シゼル。愛らしい仕草ならシデン、そして、トータルバランスに優れ、圧倒的な技巧を誇るレム。完全な補助を行うアルティ。……あれ、私、勝ってない。やっぱり、どこも勝ててない」
「アリー、そんなこと無いよ。俺は、アリーの全てが大好きだ」
「ベイ」
アリーは、アリーだから良いんだ。何処が良いとかじゃない。アリーが最高なんだ。アリー最高!! アリーバンザイ!!
「まぁ、アリーとの仲は大丈夫そうだな。なら良いか」
「でも困ったわね。バルトシュルツは無理となると、お祖父様になんて言おうかしら」
「そのままを言って下さい。ベイは、バルトシュルツという家名に収まる器ではないと。それ以上、それよりも大きくなれる才能がある人間であるのだと。ですので、家名で縛るのはやめて頂きたいと」
「そうか……。だがな、魔法がなぁ」
「私も、バルトシュルツ家の奥技は知らないわけですから、別にいいんじゃないですか?そこまで、慎重に考える必要がありますか?」
「いや、そう言われるとそうなんだが。何個かは見せてあげただろ?それに、ベイ君はクリムゾンランスを相殺した。アリーが教えたんじゃないのか?」
正直、アリーが使っているのを見て覚えたんだけど。まぁ、普通はできないからな。そう思っても仕方ないか。
「いえ、教えていません。あの程度の魔法でそんなことを、ベイにする必要はもうないですから」
「あの程度って……」
「それじゃあ、どうやって相殺を?」
「構成されている魔力の流れに合わせて、アドリブで相殺をするんです。今回は、うまくいきました」
「……ベイ君、君、本当に人間か?」
「は、はい」
やはり、この説明でもおかしく感じるか。まぁでも、これで通すか。
「ふむ、鍛えるとそういうことも出来るんだろうか。今度、うちにも筋トレを取り入れてみるか」
「健康的ね」
筋肉のおかげ、という所に落ち着いたようだ。流石筋肉、伊達じゃないぜ!!
「よくよく考えると、彼ほど鍛えている魔法使いは見たことがないな。やはり、体力がある方が成長できるということか。納得だ」
「研究ばかりに打ち込んでいても、逆に、研究が遅くなることもあるものね」
「ええ。それが、ベイの強さです。それに、ベイの周りには色々な魔法の使い手が居ますからね。そのおかげもあるでしょう」
今や、皆の魔法を真似るほうが強くなれるもんな、俺。やはり、俺は召喚魔法使いなんだなぁ。皆が居ないと、ここまで来れなかった。
「あら。なら、召喚魔法使いの方とかも、いらっしゃるのかしら?」
「!!」
……アリーが、静かに冷や汗をかいている。この後の展開を想像して、青ざめているに違いない。ゴクリとアリーはつばを飲み込むと、ゆっくりと話し始めた。
「い、いえ、そんな人は居ないですね。ベイも、そっちはあまり詳しくないですし……」
「えっ、そうだったかしら?」
「そ、そそ、そうですよお母様。他の魔法の修行ばかりで、そっちはあまりしてませんよ。あはは、あはは」
「アリーちゃんのあんな白々しい顔、初めて見たよ」
「過去に色々と考えた結果、マリーさんにはああいうしか無いと分かったんだよ。アリーも、全力でその未来を回避しようとしているんだ。それが、あの姿さ」
「何かわからないけど、よっぽど召喚魔法を知らせてはいけない何かがあるんだね?」
「そういうことだ」
頑張っている正妻の姿を見ながら、俺は深く頷いた。




