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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・八部 超英雄
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血の魔神

 決意も新たに、俺達は眠ることにした。そして、朝起きて早朝の特訓をする。皆何処か、張り切った表情だ。訓練は、うるさい音が出るのでヒイラの実家から離れたところで行っている。アリーも、ヒイラも一緒に来て魔法の練習をしていた。


「……えっと、一応出来たけど」

「おっ、もう出来た。流石、編み出した本人ね」

「……これで合ってるのかな?」


 ヒイラが、魔力で練り上げた魔神・ブラッズを見ている。俺もそれに目をやると……。


「何だこれ……」

「筋肉モリモリの、痩せこけた顔の騎士。まるで死霊ね」

「正直、引く見た目なんだけど……」


 そこには、明らかに死んだ後のような表情の赤黒い騎士が立っていた。だと言うのに、目を血走らせていて闘争本能がむき出しなのが分かる。なにこれ、ゾンビか何か? それに、むせ返りそうなほどの血の臭がする。これは怖い。


「ちょっと、動かしてみて」

「……うん」


 ぐわんとブラッズは腕を振る。硬質化させた腕で木を殴り、その木の幹を破壊した。倒れてくる木をらくらくと受け止めて、振り回してそこら辺に投げる。


「……うわぁ」


 操っているはずのヒイラが、その光景に引いていた。ヒイラは更に本を読み、ブラッズの形状を変化させる。ブラッズの腕が、鋭い刃物のような形状に変化した。うわぁ~、化物だ。ホラー映画に出てきそう。


「……うわぁ」


 また、ヒイラが引いていた。


「というか、表情が怖いよ」

「明らかに、人を殺しそうな表情してるよな」

「あれは、もうすでに何人かやってる気がする。今作ったけど、そんな気がする」


 ブラッズ、恐ろしい子。そう思っていると、ヒイラがブラッズに何かし始めた。ブラッズの頭が形状変化する。すると、可愛らしい熊のぬいぐるみの頭へと変化した。……余計キモくなった気がする。


「……これは駄目だね」

「駄目ね。猟奇的な変態って感じだわ」

「より怖い気がする」


 もう一度、ヒイラが頭を変化させる。今度は、目の部分だけ見える鉄仮面をつけた姿に変化した。


「これなら、まだましじゃない?」

「強そう」

「そうね」

「うん、これで行こう」


 これなら、ベルセルクと言う感じだな。でも、赤黒いからなぁ。歴戦の戦士に見える。やはり、恐ろしいことに変わりはない。返り血を浴び続けたかのような姿だ。


「相手したくないですね」

「ミルクもそう思うか?」

「近づけさせて血の匂いでも移ったら、ご主人様に抱きしめて頂けませんからね」

「……そうか」


 更に、ヒイラは同時に3体のブラッズを出現させる。もう一体は牛の頭の骨を、もう一体は岩で出来たようなお面を着けていた。


「牛……」

「ミルクさん、どうかしたんですか?」

「いえ、何でもないです」

「岩……」

「レムさん、どうかしたんですか?」

「いや、何でもない」


 気にするよなぁ。そりゃあ、仕方ないわ。


「えっと、練習としてブラッズを争わせるのが有効っと。こうかな」


 そのヒイラの言葉を開始の合図に、3体のブラッズが争い始めた。一体は、腕から刃物を生やし、一体は巨大な槌を持ち、一体は巨大な鎌を持って争いだした。凄い迫力だな。まるで映画みたいだ。


「……なんかこう、戦争って感じね」

「そうだなぁ」

「1人不死軍団。頷けるあだ名な気がする。これが百体もいたら、裸足で逃げ出すと思う」


 ギンギンとお互いの武器をぶつけ合い、はじきあい、ブラッズの動きはどんどん良くなっていった。結果、朝の訓練だけでブラッズは切られたり、吹っ飛ばされた箇所を瞬時に再生できる様になっていた。……まじ恐ろしい。


「……午後はベイの家に行きましょう。正式な挨拶をしに行かないと」

「ああ、そうだね」

「勿論、ヒイラもね」

「えっ?」

「ああ、ヒイラよ。汝はベイ・アルフェルトを夫として愛し、健やかなるときも病める時も、世界が無くなりそうになっても共にいることを誓いますか?」

「……いやいや、急すぎるよアリーちゃん!!私にだって、心の準備が!!」


 そういうヒイラに対して、アリーはブラッズを指差す。


「あんな化物扱う女、他にもらいていないわよ。というか、あんたがベイ以外とくっつくのを見たくない!!分かった?決定!!ヒイラ・アルフェルト誕生!!」

「そ、そんなぁ!!」

「何、嫌なの?」

「いやいや、そんなわけ無いじゃん!!私だって、その……。ベイ君がいいし。アリーちゃんと家族とか憧れるし……」

「決定!!」


 アリーが、嬉しそうにヒイラの手を取る。そして、二人して微笑み合っていた。うん、いいコンビだな。そして、二人共俺の妻になる。最高と言わずして何と言おう。最高です!! 最高です!!


「……」


 そう思いながら、俺はふと自分の腕を見た。目を閉じて一体化をイメージする。魔力を近づけそれを再現するイメージを持った。すると、腕の周りに鎧のような装甲が纏わりつく。


「……問題ないな」


 試しに、俺は腕を振ってみた。素の自分では、あり得ない程の威力が腕から放出される。軽くではあるが、その威力は風を起こし、辺りの木の葉を舞い上げた。


「出来そうですね、マスター」

「ああ、問題なさそうだアルティ」


 一体化無しでも鎧を纏えるか。その上から強化魔法をかければ、かなりの力が出せるだろう。皆との一体化程ではないだろうが、これで、今までより俺の戦闘力は増したと考えていいだろうな。もっと早く気づけばよかった。いや、今までの経験があったからこそ、今鎧が出せるのか? そう思おう。


「カザネさんの高速移動や、ミズキさんの水の糸。皆さんの特徴を真似てきたからこそ、今出来ていると思います」

「だよな。皆の魔法を感覚で頭の中で再現しようと考えてきた。それが、積み重なってできたんだよな。今の俺だから、出来るってことか」


 俺は、鎧を解除する。うん、やはり鎧は鎧だ。一体化ほどの一体感は無いし、着ているという感覚がする。やはり、一体化の完全再現は今は無理か……。出来なくは、なさそうな気がするんだけどなぁ。皆という、バックアップがいない状態にはなるけれど。


「そこが、おそらく到達点ですね。マスターの最強の力の」

「俺の、最高の力」


 魔力での一体化の完全再現。確かに、出来たら凄そうだ。



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