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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・八部 超英雄
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切り札の魔力

「……」


 魔力の動きを見ることに集中して相手の出方を伺う。雷虎が、ゆっくりと俺目掛けて近づいてきた。エイと俺を挟むように動き、爪に魔力を込めている。


「来いよ」


 俺がそう言うと、雷虎が襲い掛かってきた。その爪での攻撃を避けると同時に、俺は背後から飛んできた毒針をアルティで弾く。雷虎の動きを伺っていると、視界から雷虎が消えた。


「おっ?」


 気を抜かずに、周りの気配に集中する。


「こっちか?」


 真横から、スピードを上げた雷虎が襲い掛かってきた。しかも、雷を纏いながら。


「ガントレット!!」


 土のガントレットで、即座に叩き伏せる。纏っている雷がうざいな。しかも、だんだんと相手の動きが良くなってきている。どういうことだ? こいつらは、傷つく度に強くなるとでも言うのか?


「……いや、更に強化しているのか」


 俺の目には見えている。纏った雷とは別に、雷虎の中に火の魔力が燃えているのを。火と雷での身体強化。それが今の速さの理由か。


「?」


 おかしい。あれだけの他属性での強化だ。強化の代償に、雷虎の身体にダメージが出ていてもおかしくはない。だが、回復魔法の魔力も受けていないのに、雷虎の身体はダメージを受けず強化された状態を保っている。あの火魔法、何か秘密がありそうだな。


「とは言え、俺にはこれ以上はよく分からんか」

(殿、私には見えますよ)

「え、マジかミズキ?」

(はい。あの火魔法は、どうやら体の細胞を活性化させているようです)

「活性化?」

(簡単に言うと熱量を与えて、細胞の動き一つ一つを強化していますね。その小さな強化から、表面に近づくたびに強化の幅を上げていき、下地をちゃんと整えることで、ダメージを減らしているんだと思います)

「……人間には、出来そうもない魔法だな」

(かもしれません。あれだけの細胞を全て管理しての強化ですから、脳が疲れると思います)

「いや、多分焼ききれるよ」


 そんな魔力だったのか。顕微鏡でもないと分からんよ、そんなの。ああ、だから回復が速かったのか。細胞の活性化と回復。それら2つが合わさっているからの超瞬間回復なわけか。納得した。


「……さて、問題はどうやって倒すかだが」

(もう、あのお爺さんを仕留めて終わりでいいんじゃないですかね?)

「それだと、この状況を乗り越えた勝利にならない気がしてな……」


 3体の神魔級召喚獣の攻撃を、ひょいひょいと躱しながら俺はそう言う。これだけの魔法攻撃の音の中だ。周りには、この声は聞こえていまい。


(我々が出られれば、すぐに終わるのだが)

(ですねぇ。私達が、回復など無視して押さえ込む。それですぐ終わります。まぁ、殺し続けても良いんですけどね)

「あれなら行けるか?」

(あれとは?)

「ミルクの、大量に牛を呼ぶ魔法があっただろう。あれなら、蹂躙できるんじゃないか?」

(ああ、私の牛ちゃんたちですか。良いですね、それでも行けると思います)

「見た目的に酷いけどな」

(それはありますね。まして、相手は家の秘匿物として扱われていた神魔級召喚獣。そんな倒したかたをしたら、恨まれそうですね)

「だよなぁ~」


 他になにかあったっけ? 魔神創造とかなら行けるか。2体で上手く押さえ込みきれるかが問題だが。


(あれを使いましょう、マイマスター)

「あれとは?」

(大人アリーさんが使っていた、皆さんの分身を出す魔法です)

「ああ~、あれか」


 アイラ戦の皆の偽物か。確かにあれなら、召喚じゃないし強い相手にも対応できる。それに、絵的にも悪くない。牛に蹂躙されるよりは良いだろう。


「出来るかな?」

(先輩方と、常に一緒にいるマスターなら簡単でしょう。それに、マイマスターがそれを出来るようになって頂ければ、私としても都合がいいのですが)

「?」


 何が都合がいいのだろうか? まぁ、やってみる価値はあるな。俺は、静かに集中するべくアルティを鎖に変化させ、3体の魔物を一気に纏めて鎖で捕獲し、距離が離れた壁に投げつける。


「……さて」


 そして目を閉じた。思い描くのはあの時の記憶、皆の記憶、魔神創造の魔力の流れだ。それらを、記憶を頼りに構成していく。そうしている間に、雷虎が迫ってきているのがわかった。雷虎の爪が、俺に届きそうになる。先端の雷が、俺に届きそうになったその瞬間。


 ドゴッ!!


 何かが、雷虎を横から蹴った。雷虎は、受け身を取れず壁にぶつかる。その何かは、俺の前にスッと立った。


「まぁ、こんなもんかな」


 それは、風の魔力で出来たカザネだった。勿論、人化している。でも所詮は風の魔力だから、なんか全体的に緑色だし細部まで同じではないけども、まぁ、カザネだ。


(流石マイマスター。素晴らしいです)

「ありがとよ。さて……」

「何だそれは?」


 ガーノが不思議そうに偽カザネを見ている。まぁ、答えてやる義理もない。フィーとレム、ミエル、シスラ、サエラ、シゼルは魔力の属性の関係で無理だからな。後は……。


「クォォ!!」


 何かが火の鳥の動きを縛った。その雷の鎖は、小さな雷の魔力の塊へと向かっている。そこには、少女を模した雷の魔力が佇んでいた。


「シデン」


 雷の鎖に、雷撃が走る。その雷は、完全に火の鳥の動きを奪っていった。偽シデンに雷虎が攻撃を仕掛けようとする。だが、何かが雷虎をわしづかんだ。


「ミルク」


 巨大な土のガントレットを装備した土の魔力の塊(ロリ爆乳)が雷虎を地面に叩きつける。そのまま巨大にした土のガントレットで、雷虎を握りつぶすかのように偽ミルクは拳を閉じた。


「カヤ」


 火の魔力の塊が、地面に向かって棒を振り下ろす。その衝撃で地面の中で爆発が起こり、エイを地面から引き擦りだした。


「ミズキ」


 そのエイを、水の糸が空中でがんじがらめにしていく。尻尾の先も入念に巻きつけ毒針を撃てないようにした。その水の糸は、天井に張り付いた一人の水の魔力のニンジャに向かっている。そのニンジャが指を動かすと、更にきつく水の糸がしまった。エイが、その動作で丸まったボールのようになる。


「さて、ガーノさん。これで終わりにしましょうか」

「それはスペリオの、いや、違うか。今まで見た、どの魔法でもない」


 俺は、ゆっくりとガーノに近づいていく。今度は、多少の焦りが見えるな。やっと、この戦いが終わるようだ。俺は、ガーノの正面に立った。


「さて」

「くっ」


 ガーノが、魔法を発動させようとする。だが、それよりも早く偽カヤと、偽カザネがガーノの喉元に足と棒を突きつけた。


「ぐっ」


 動きを止めたガーノに向かって、俺は拳を突き出す。俺のそこそこに威力を絞った拳はガーノの腹に当たり。その意識を、体力を一撃でかなり奪った。


「ガハァッ!!」


 集中力が痛みで消し飛んだからなのか、ガーノが解除したからなのかは分からないが、召喚獣が消えていく。皆の偽物を解除しながら、俺はアリーを見た。


「ベイの勝利!!」


 駆け寄ってくるアリー受け止める。そのまま、俺はアリーを抱きしめた。





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