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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・八部 超英雄
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丸め込み

 アリーと、一瞬目が合う。ああ、そういう流れなのね。俺は、一瞬にして全てを理解した。


「まぁまぁ、アリーも随分大胆ね」

「私も、そろそろ身を固める時期かと思いまして!!」

「……いやいや、待って!!おかしいだろ、話が速すぎない!!お父さん、ついて行けないよ!!」


 まぁ、正常なツッコミだな。その場の流れで結婚みたいな感じだからな、彼の見た情報だけだと。


「いえ、お父様。私もいずれ結婚する身。それならば、速いに越したことはないじゃありませんか?」

「いやいや、いくらなんでも速すぎるでしょ!!それに、アリーまだ若いよ!!結婚なんて、考える年じゃないよ!!」

「俺、あんな焦ってるアドミルさん、初めてみたわ……」


 そりゃあ、焦るだろうな。娘が、よく分からん流れで結婚しそうになっているんだ。俺でも止めに入る。


「ご心配なく。人を見る目はありますから」

「いや、そうじゃなくてだね。結婚するにしても、段階を踏むべきじゃないか?そんなすぐになんて……」

「あら、お父様も言ってらしたじゃないですか?お母様を見た時に、運命を感じたって。……私も、ベイさんを見た時、運命を感じたんです」

「いや、確かに言ったけども。お父さんたちは、それから交際してからゴールインしたからね。そんな、すぐじゃないからね」

「私、天才ですから」

「いやアリー、そこ、天才関係ないと思うよ。むしろ、そこでの天才発言は少しおかしいとお父さん思うなぁ~」

「いえ、私には想像できるのです。これからベイと送る、素敵な毎日が。しかも容易に。それこそ、初級魔法を扱うかのごとく!!」

「ああ~、でも、現実ってそううまくいかないじゃない?ここで決めるのは、速すぎないかなぁ?」

「良いじゃないですか、貴方」

「えっ?」


 予想通り、援護射撃が飛んできた。後は、この流れに乗って丸め込んでしまえばいい。なんと、うまい手だろう。これなら、戦わずしてアリーと結婚できる。素晴らしい作戦だ。しかも、今回結婚を申し込んできたのはアリー。俺からではない。よって、俺に対してどうこうと責任を向けることが出来なくなっている。しかも、親としてアリーを攻めたくはないのだろう。それ故に、もう丸め込まれそうな直前まで来ている。勝ったな。父親には、労せずして勝った。


「き、君もそうだ。いきなり、会ったばかりの女性と結婚なんて嫌だろう?」

「いえ、アリーさんはこんな俺と結婚してくださってもいいと言ってくださいました。これ以上に、男として嬉しいことはありません。彼女の期待に答えたい。そう思っています」

「ええ~、君もかい!!おかしいだろ、話が速すぎるだろ。なぁ、ノービス君?」

「式はいつにします?2人が、もうちょっと成長してからにしますか?いやぁ、めでたいなぁ~」

「君も!!」


 勝った!!完全に勝ったな。結婚した。結婚したぞ!!


「……いや、駄目だ。親として、そんな簡単に娘の結婚を認められない」


 チッ、まだ抗うのか。


「それに、ベイ君がいくら凄いと言っても、所詮学生の大会での話だ。そんな子に、アリーの相手が務まるとは……」

「ガンドロスに、勝っていたとしても……」

「え?」

「ベイは、あのガンドロスに勝っています、お父様。それでも、ご不満ですか?」

「学生が、あのガンドロスさんに?」

「ええ。となれば、最早文句はないはず。実力、才能、全てにおいて現時点でのお父様を超えていると言っても過言ではありません。むしろ、私が彼に劣っているとも言えます。そんな方と結婚できるのです。これ以上、余計な口を挟まないで頂けますか?」

「ぬ、しかしだなぁ……」


 ……アリーさん、怖え。完全にとどめを刺しにいったよ。これ以上言ってくるんじゃないオーラが、ビリビリと出ている。


「騒がしいな。どうした……」

「あ、お義父さん」

「……」


 明らかに、風格の違う老人が近づいてきた。そのローブは白く。豪華に飾り立てられている。この中で一番偉い魔法使いがいるとしたら、間違いなくこの人だろうという格好をしていた。それに、老人だというのに、姿勢にブレがない。明らかに、強者だと分かるオーラを身にまとっている。これが、ガーノ・バルトシュルツ。現バルトシュルツ家当主か。そして、3体の神魔級魔物を従える魔法使い……。


「アリーが、急に結婚すると言いだしまして」

「駄目だ」

「……何故です、お祖父様?」

「アリーはまだ若い。そんなすぐに、身を固めることもなかろう。それに、アリーは我が家でも期待の魔法使いだ。釣り合う相手がいるとも思えん」

「ベイは違います。あのガンドロスに、勝ったのですから」

「ほぉ~、あいつに勝ったのか?あいつの事だ、勝負に手抜きなどしていまい。とすると、あいつも老いには勝てなかったか。学生に負けるとは、落ちたものだな」

「……本当に、そう思うんですか?」

「どちらにしろ、あいつなど我が家の敵ではない。アリーに釣り合うというのなら、私くらい倒せるやつでなくてはな」


 今すぐ、こいつぶっ倒したい。何にも恨みはないけれど、早くぶっ倒したい。パーティ会場なので、暴力は控えるが。


「あのガンドロスも、ある種の力を突き詰めた人物です。そのガンドロスに、うちが少しも劣らないと?」

「あいつは所詮人だ。それ以上のものもある。そういう事だ」

「特定の人にしか扱えない、限定的なものでもですか?」

「ああ、そうだ。いずれ、アリーのものになる。そんなお前に、ガンドロスに勝った程度では釣り合うとはいえんよ」

「私が、そんなものいらないと言ったら?」


 その言葉に、ガーノが驚いた顔をする。


「どういうことだ?」

「言葉通りの意味です、お祖父様。私は、受け継がれるだけの力には興味がない、そういうことです」

「何故だ?」

「自分の力では、ないからです。簡単に言えばご先祖の、それも英雄の残した力というだけ。私が、手に入れた力ではありませんから」

「それでも、力は力だ。お前が扱わないでどうする?他に、扱えるものなどいないぞ」

「お兄様にでもあげて下さい。私には、そんなものは不要です……」

「……あいつでは無理だ。魔力はあるが、いささか精神が弱い」

「それも、いずれお兄様ならなんとかするでしょう。それでいいじゃないですか。私にだけ、拘る必要はないんです、お祖父様」

「……」


 ガーノは、考えるように髭を触る。そして、俺を見た。


「……どちらにしろ、私は自分の目で見たものしか信じない。ならば試そう。彼に、お前がうちの秘術を受け継ぐ拒否をするだけの価値があるのかを」


 さて、なら俺も証明するとするか。アリーは、俺の嫁なんだってな。



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