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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・七部 エジェリン家と、祭りと……
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腕相撲とお母さん

「さて……」


 一通り休んだら、お昼の部の仕事だ。この前来たお客さんが、お昼の部には来てくれていた。ありがたい。……この前より皆さん積極的だったので、あと一日、上手くお客さんをあしらえるのか心配になってきた。でも、なんとかするしか無いよな。


「はぁ、終わった……」

「お疲れ様~」


 午後の部まで少し時間がある。ちょっと、外の祭りの様子でも見てみるか。そう思い、俺は皆と広場に向かってみた。


「うおおおおおぉおおおお!!!!」

「……」


 ガタイの良いマッチョマンが、空を飛んで行く。そして、広場に敷き詰められていたマットらしきものに激突した。……投げられたのか? そうとしか思えない動きだった。


「はっ!!弱すぎるね!!」


 広場のステージ中央。朝、聞いたような声が聞こえてきた。この声は確か、Sランク冒険者のナークさんだ。


「す、凄すぎる!!片腕で、軽々と相手選手を投げ飛ばしました!!」

「あ~、他に強い奴はいないのかい」

「……何あれ?」

「腕相撲だろう。壊れたテーブルが、あそこに有るじゃないか」

「いや、飛んできたよね。飛ばす必要なくない?」

「例年、パワーアピールでああいうことをする選手がいるんだ。そのせいで、このクッションも周りに用意されている」

「これ意外と薄くないか?あの人大丈夫かな?」

「大丈夫だ。今、医療班に運ばれていったから」

 

 ……大丈夫じゃなさそうなんだが。まぁ、死にはしないか。


「今はお昼の部だな。定期的に開催されているから、ベイも後で出てみるか?」

「俺が?」


 俺がステージを見ると、ナークさんが気づいたのか俺にウインクしてきた。しかも、余裕で次の対戦相手を、テーブルを叩き割るのと同時に地面に叩きつけている。美人だけど怖い。


「や、やめておこうかなぁ」

「そうか。優勝できると思うんだが?」

「魔法は、なしだよな」

「まぁ、そうだな」

「そっかぁ……」


 強化魔法無しで、あれほどパワーが出せるだろうか。正直、怪しいなぁ。強化魔法を使うことが多すぎて、自分の素の実力が分からない。困ったものだ。


「……レム、ちょっとこっちに来てくれ」

「はい、主」

「よっと」


 俺は、レムを片腕ですくうように持ち上げた。軽いな。いや、レムが予想より軽いとかそういうのかもしれない。俺は、少し照れているレムを下ろした。


「む、主人、そういうことでしたら私が!!」

「あたしも!!」


 言うやいなや、俺の片腕に器用にカヤとカザネが座る。……軽い。流石に、二人分がこんなに軽く感じるなら、かなりパワーが有るんだろう。しかし、ナークさんほどあるのだろうか?


「大丈夫ですって、マスター」

「そうかな、アルティ」

「はい。私には分かります。今のマスターは、鉄を軽々と曲げ、魔物すら素手で殺せるパワーが有ります。何も恐れる必要はないでしょう」

「……そんなにか?」

「そんなにです。残念ですが、ミルク姉さんほどではないのですが……」


 うーん、ミルク以下、超人並といったところか。Sランクと戦えはするだろうといった感じか。俺は、そう考えながらカザネと、カヤを下ろした。


「まぁ、気が向いたらやってみるか」

「私の勝ち~!!」


 そうこうしている間に、ナークさんが20人目の挑戦者を叩き伏せたらしい。そこで、優勝が確定したようだ。20人も倒さないと駄目なのか? 厳しい戦いだな。


「お、あれはリサじゃないか。おーい、リサ!!」

「あ、サラサ……」


 サラサが呼ぶと、リサが近づいてきた。だいぶ元気が無い。何かあったんだろうか?


「どうした、元気が無いぞリサ?」

「ああ~、そのね。3人抜きまではいけたんだけど、負けちゃって……」

「おお、凄いじゃないか。3人も倒すなんて」

「あはは、スタミナ不足を痛感したわ。次は、鍛え方変えなくちゃね」


 そう言いながら、リサはステージに目を向ける。ステージの上では、ナークさんが金で出来ていると思わしき、小さな腕の像を貰っていた。高く売れそうだ。


「ああ~、私も欲しいなぁ。あの像」

「……売るのか?」

「とんでもない。飾っとくのよ、家に」

「そうか……」


 純粋にリサは、あの像が欲しいらしい。俺には、分からない感覚だな。


「20人切りの証。腕っ節の証明よね。ああ~、強くなりたい」

「なるほど。勝った証として欲しいわけか」

「当たり前よ。それ以外なら売るわ」


 ということは、他人があげても意味があるもんじゃないということか。困難な道だろうが、頑張れよリサ。


「あれ?腕相撲の商品って、何かの武器じゃなかったっけ?」

「ああ、アリーさん。それは最終日の、優勝者同士で争う最終戦の商品のことですよ。あの像が、最終戦の参加資格にもなっているんです」

「へ~」

「ということは、どっかのタイミングで勝ち残ってないと腕相撲の大会には出られないのか」

「まぁ、そうだな。と言っても、今日の夜、明日の朝、明日の昼とまだ三回もチャンスが有る。ベイなら十分だろう」

「そうかな」


 優勝者が決まり、ステージの上では今までの参加者の勝利数と名前がランキング形式で表示されている。かなりの人数参加しているのか、1勝も出来ていない人達の名前は省略されていた。可哀想に。


「う~ん、今で既に124位かぁ。今年も100位入ならずね……」

「む、あの名前は……」

「サンサ・エジェリン。母さんだな」


 サンサさん、しっかり参加して優勝していたのか。ランキングの一番上に書かれている辺り、ラスボスって感じがするなぁ。


「母さんは、前年度の優勝者だからな。それであの位置なんだろう」

「目立つわね」

「あの連勝記録の横に、別の数字が赤で書かれているでしょう。あれがテーブルを叩き割った数ですね。その横の青の数字が、相手を投げた数です」

「……あんたの母さん、全部20で付いてるじゃない」

「まぁ、余裕だったんでしょうね……」


 サンサ・エジェリン。その実力は、まだ分からないが。明らかに、強敵であることは確かなようだ。




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