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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・七部 エジェリン家と、祭りと……
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イメージ

「よしベイ、この勢いのまま特訓だ!!付き合ってくれ!!」


 そういうサラサの腹から、ぐ~~~っと大きめな腹の音が鳴り響いた。


「朝ごはん、食べてからにしないか?」

「……あ、ああ、そうだな。その、すまん」

「いや、俺も腹減ってたし、調度いいよ」


 そう言うと俺は皆を連れて、再度転移してサラサの家に戻った。


「うん?」

「おお、ベイ君、おはよう」

「母さん、おかわり!!」

「俺も」

「俺も!!」

「はいはい」

「おはようございます」


 台所にいくと、テーブルいっぱいに料理が並べられていた。それを、サラサの家族の方々が止まる間も惜しいという勢いで食べている。サンサさんが、その後ろで更に料理を作っていた。なんだろう、このスペースに入って行きづらい。俺、こんなに早く食えないぞ。ノリについて行けそうにない。


「ああ、ベイ君もご飯を食べに来たのか。待っててくれ、すぐに食べきってしまうから!!あむ、もぐもぐ」

「いえ、お構いなく」


 むしろ、もっと噛んで飲み込んだほうが良いと思う。あと味わって、味わって。


「おかわり!!」

「おかわり!!」

「はいはい」

「いつもこうなのか?」

「ああ、そうなんだ」

「もしかして、サラサも?」

「で、出来なくは、ない、かな……」


 サラサが目線をそらすように泳がせる。やはり、エジェリン家は豪快な人が多いんだなぁ。俺は、改めてそう思った。


「か、母さん。私達は、外で食べるよ。テーブル出すね」

「お、いいよ。いつもの場所にあるから、持っていきな」

「うん」


 サラサが、部屋のどこからかテーブルを持ってきた。それを、中庭に設置する。少し大きめのテーブルだが、詰めても10人座れるかといったところだろうか。そこに、俺が魔法で椅子を作って腰掛ける。


「料理は、ここでするとしますか」

「ああ、ミルク、かまどを作ってくれ」

「あいあいさー」


 ミルクが土魔法で、瞬時に調理場を作成した。そこに、テキパキと皆が牛車から鍋や、食材を取り出して調理していく。あれだな、完璧な連携だ。もう慣れたものって感じだな。知らぬ間に、目の前に食器は並べてあるし、飲み物まで言ってないのに置いてある。素晴らしすぎるな。


「よく見ると、テーブルまですでにピカピカになっている」

「朝飯前です、殿」


 やはり、ニンジャは凄い。


「ささ、ご主人様。ミルクですよ」

「あ、ああ、そうだな。牛乳だ」

「どうぞどうぞ」


 ミルクは相変わらずだ。まぁ、美味からいいんだけど。


「ベイ」

「うん?」

「私は、どうしたらもっと強くなれると思う?」

「……剣術でか。それとも、手段を選ばずにか?」

「もし、私が今より強くなれないのだとしたら、魔法を覚えることも吝かではない」

「そうか……」


 はっきりというが、サラサは強い。人類では、かなり強いほうだ。しかも、この若さで気を操り、大気すら切り裂く斬撃を放ってみせた。……それ以上となると、なかなかに難しい。俺自身は、特殊な方法で強くなっているから、余計にアドバイスしづらい。まず、魔物と召喚契約を結びます。……それは、なにかおかしいアドバイスな気がする。


「前あった剣士は、魔法の強化と、気での強化を併用して使って、有り得ないほど強くなっていた」

「ほう、そんな剣士が」

「だが、俺の個人的な感想だと、それはサラサに合っていない気がする」

「何故だ?」

「サラサは、直感で戦うタイプだ。魔法を操るということは、思考や動きも魔法を操ることに少なからず引っ張られることになる。そうなると、今のサラサの強みを1つ失うことになるかもしれない。長期で考えれば、今より強くなれるかもしれないが……」

「なるほどな」


 そう考えると、俺の中で出る結論は一つになる。


「気のコントロールを、もっと練習してみるのはどうだ?ガンドロスは、見たこともない気を出していた。あれを、取得するというのはどうだろう」

「あれか……。限界突破とお祖父ちゃんはよんでいるやつだ。なんでも、己の実力の更に先をイメージして身体から湧き上がらせるそうなんだが、いまいち私にはやり方が分からん。殺意を高めることで、身体を極限まで強化する私の今の気とは何処か違うようだ」

「限界突破?」

「ああ。己のイメージする己の更に先へ、身体から湧き上がらせるんだ。理想に近く、思った通りより早く動くために、動かす力を体の底から」

「それだけ聞くと、かなり凄いと思える技術だな」

「ああ。本当にそうなら、どこまででも強くなれることになる。本当に、限界が無くなるのならだが」


 想像力が大事ということなのだろうか?だとしたら……。


「さっきの俺達を、イメージしてみたらどうだ?」

「ベイ達を?」

「ああ。大体の気での総量が分かった気がするんだろ。なら、それが自分をそこまで押し上げると思ってやってみればいい」

「……正直、どうなるか分からんからな。少し怖い」

「やばそうだったら、止めればいい。なんでも挑戦してみないとな」

「……そうだな」


 そうこうしている間に、食事が出来上がったのか運ばれてきた。アリー達も起きてきて座る。新たに、土魔法でテーブルを作り、拡張して、皆で食事を摂ることにした。


「……ふぅ」


 食事も終わり。まだ、アリー達は庭でジュースを飲んでこっちを眺めている。少し離れた所に、俺とサラサは居た。皆は、食器を片付けている。


「行くぞ」

「ああ」


 サラサが目を瞑る。そして、気合を入れると一気に開いた。


「うおおおおおおおおおおおおおおーー!!!!」

「うわぁ!!」


 気で、周りの空気がうごめく。その風圧に、ニーナは驚いたようだ。サラサの気は、まだまだでかくなって行く。


「はぁあああああ!!!!」


 うーん、確かに気の大きさは凄い。だが、何故か凄みというか強さを感じない。何故だ?

 

「……サラサ、放出するんじゃなくて、身体に馴染むイメージでやったらどうだ。これが、君の身体を強化するんだ。まるで身体に流れる血のように、気を扱ってみてくれ」

「こ、こうか?」


 吹き出していた気が、サラサを中心に渦を巻き、収束していく。そして、薄い光の膜となってサラサの周りを包んだ。


「うーん、そんなに強くなっている気がしないな」

「剣を、振ってみたらどうだ?」

「そうだな」


 サラサは、軽く剣を振るう。だが、何処かイメージと違うようだ。


「遅い」

「駄目かぁ」

「……いや、もう一つ試してみたいことがある」

「うん?」


 気を解除し、サラサは再度集中した。


「ふぅ……、ふっ」


 サラサの身体から、冷や汗が流れた。次の瞬間、先ほどとは違った密度の濃い気が、サラサの身体から溢れだした。


「おお、凄いな」

「これを、纏う……」


 気はサラサに纏わり付き、サラサを強化していく。サラサが剣をその状態で振ると、先程とは目に見えて早くなっていた。


「……これなら、今までのよりは良いかもしれない」

「いったい、何をイメージしたんだ?」

「恐怖だ」

「恐怖?」

「ああ。勝たねば死ぬと、そう思うほどの実力差から感じる恐怖。それを押しのけるために、力を出した。それが、今までで結果的に一番いい力の出し方になったらしい」

「なるほどなぁ」


 サラサは、今までより強くなったようだ。だが、その顔は苦々しい。


「ベイ達は、こんなものではなかった。もっと、もっとでかかった」

「まぁ、焦ることはないさ。今はそれを、身体にならそう。そしたら、次が見えてくるかもしれない」

「そうだな。……少し、これで修行してみるか」


 そう言うと、サラサは勢い良く駆け出し山を降りていく。遠くの山で、木々が跳ね飛んだ。


「やるなぁ……」

「そうですね。ささ、ご主人様、牛乳ですよ」

「ああ」


 俺達は、テーブルに座りながら、暴れまわるサラサをゆったり眺めていた。


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