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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・七部 エジェリン家と、祭りと……
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出店巡り

「ここに大きい宝石がありますよね。これをこうして、こうですよ!!」

「随分シンプルにするんだな」

「まぁ、あまり装飾があっても重いですからね。それに、アリーさんには着飾らないけども押しの強いデザインのほうがしっくり来ると思うんです」


 もう既にデザインが完成したようだ。速い。速すぎる。


「この後はどうします、アリーさん?」

「そうね。サラサ、何か見て回るべきものはあるかしら?」

「そうですね。初日の目玉といえば、狩り倒した熊肉の野菜煮込みでしょうか。力がつくと冒険者にも評判なんです」

「あの大きな鍋の列ね」

「はい」


 俺も目をやると、巨大な鍋の中に、いくつも食材が放り込まれているのを見ることが出来た。それを、すくっては売り、すくっては売りしている。味、染みこんでるのかなぁ?


「じゃあ、皆で食べてみましょうか」

「私が、買ってきましょう」


 ミズキが、スッと分身する。そして、アリーにお金を渡されて買いに行った。やっぱ便利だなぁ、分身。


「あの~」

「?」

「ベイ君だよね。揉みほぐし屋の」

「ああ、そうですよレビンさん。さっきは声援、ありがとう御座います」

「いやいや、ベイ君が格好いいからついね……。やっぱり、只者じゃなかったんだ。鍛えてるなぁとは思ってたけど」

「あはは、そんなことはないですよ。自分も、まだまだです」

「またまた~、謙遜しちゃってー」


 レビンが、俺のお腹をちょんちょんつついてくる。くすぐったい。


「ところで、明日お店は何時からやるの?私、もう一回行こうと想っててさ。……まぁ、ベイ君さえ良ければ、今からでもいいことしてもらっても良いんだけど……」

「……」


 アリー達は、かなり冷静にこっちを見てるな。妻たちの前で、こういう誘われ方をされるのは肝が冷える。まぁ、店の時も、あまり変わらない状況であったはずだけれども。


「えっと、何時からなんだロデ?」

「朝は11時から、12時まで。昼は1時から、4時まで。夜は6時から7時までですね」


 めっちゃ、きざまれたスケジュールだな。レビンは、その話を聞くと一緒に来ていた仲間たちとじゃんけんを始めた。どうやら、来る順番を争っているらしい。


「予約は、その日に早く来た人順になりますので、お気をつけて」

「ふーん。じゃあ、私が一番乗りすれば良いんだ」

「5時起きだね」

「じゃあ私、4時半起き!!」

「なら私は、今から並んでおこうかなぁ」


 レビンが、仲間の方たちと早起きの時間を競い合っている。流石に、夜は危ないんだから、今から並んでおくのはよした方がいいと思う。祭りの日とはいえ。


「あそこの酒場は、祭りの間は24時間営業してるんだよね。なら、あそこで飲み明かすっていうのは?」

「ええー。くったくたに酔った姿で、ベイ君に引かれたくない……」

「じゃあ、やっぱ早起きしか無いね」

「買って来ました」


 そうこうしているうちに、ミズキがスープを買って来た。とりあえず受け取って味見をしてみる。……ううん、美味い。滅茶苦茶肉の脂が出ているのに、スープ事態はあっさりだ。風味的には豚汁に近いかもしれない。悪くないな。


「あ、私達も熊汁食べてないじゃん」

「あれは食べないとね」

「買いに行こう!!」

「じゃあベイ君、また明日ね!!」


 そう言って、レビン達は熊汁の販売列に向かっていく。さて、この後はどうするかな。そう考えながら、俺は皆に向き直って熊汁をすすった。


「見た感じ、食べ物のお店が多いみたいだな」

「ああ。氷菓子や、夏野菜炒めの店なんかが人気だぞ。特にあの店の野菜炒めは、歯ごたえがとても良い」

「……となると、食べ歩きをするのが、このお祭りを楽しむ上策ということか」

「いや、毎回出店が同じではないからな。変わった出店を探して、練り歩くのが一番いいと思うぞ」

「なるほど。なら、これを食べたら、皆で歩いて回ろうか」

「そうね」

「賛成です」


 俺達は熊汁を飲み終わった後、祭りの出店を見て回った。商品付きの的あてゲームの店が、サエラの餌食になったり。ブロックを高く積み上げるゲームの店が、ミズキの餌食になったり。出てくる小型魔物を、柔らかいハンマーで叩くゲームの店がカヤの餌食になったりした。そして俺達は、わずか一日で密かに店荒しと呼ばれるようになっていた。

 

「おい、あっちの路地裏に最高の出店があるらしいぞ」

「どんなやつだ?」

「なんでも、30分で体の疲れが完璧に取れるらしい。しかも、回復魔法の治療代より安いらしいぜ」

「ああ、それか。俺も、気になって行ってみたんだよ。でも、今日はもう閉まってるみたいだぜ。しかも、女性客限定と書いてあった。しかも、美人のみ」

「げっ、めっちゃ狭い客層だな。そんなんで、商売が成り立つのかよ」

「だよな。俺もそう思う」


 ……うちの店じゃん。そこまで噂になってんのか。明日は、やばそうだな。


「うひひ、広まってる広まってる。もうちょっと、値段上げてもいいかもね。……いや、まだまだリピーター増やしてからのほうが良いかな?どう思う、ロザリオ?」

「そんなことより、私がマッサージを受けたいんですが、ロデ」

「ああ、そうね。じゃあ、そろそろそうしましょうか。アリーさん、店に一旦荷物を置きに行きませんか?そろそろ大荷物になってきましたし」

「うん?まぁ、そうね。じゃあ、一旦戻りましょうか」


 ロデの提案で、俺達は店に戻ってきた。そして、戦利品の屋台料理を食べ始める。


「うっま!!何この野菜炒め!!うっま!!」

「本当ね。しゃきしゃきとした歯ごたえ。着飾らない野菜の旨さに、邪魔すること無く漂うこの風味……。悔しいけれど、美味いわね」

「何でこれで、こんなに美味いんだ?意味が分からない。歯ごたえは分かる。なんだ、この風味は?」

「……油ね、これは」

「油か!!」

「ええ。これはおそらく、噂に聞いたトビゴマと言われる油でしょうね。このシャキシャキ感と風味。間違いないと思うわ」

「そんな、すごい油が!!」


 なんだか凄い感動した。野菜炒めって、ここまで美味しくなるものなんだなぁ。


「ああ、ちょっといいですか?」

「うん?どうした、ロデ?」

「えっと、我々もそろそろベイ君の揉みを体験したいなぁーと思いまして」

「ああ、そういうことか」

「ええ、なので、あちらで待機していただいてもいいでしょうか?」

「分かった。着替えて待ってるよ」


 俺は、野菜炒めを完食して持ち場に移動する。さて、やるとしますか。


「ほらほら、アリーさんも」

「ちょっと待って、もうちょっとで食べ終わるから。……よし、それじゃあ行きましょうか!!」


 憶測ではあるのだが、今日一日で俺は成長したと思う。こう揉めばいいという感覚が、お客さんを通して分かった気がするのだ。……皆には、遠慮しなくていいよね。俺は、学んだことを思う存分試そうと、腕をわきわきさせながら待機していることにした。



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