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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・七部 エジェリン家と、祭りと……
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商品授与式

「よし、それじゃあ行くか」

「「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」」


 玄関に移動すると、皆が揃って待っていた。ぞろぞろと、店前の路地を抜けて広場に移動する。すると、初日に見た巨大な台の上に大きな熊が括りつけられ、立ったように張り付けられていた。うーん、死んでいるとはいえ、あの大きさは迫力あるなぁ。流石に、俺の倒した熊は張り付けられていない。大きすぎるもんな、あれ。


「えー、今集計が終わったようですね。時間もいい頃合いです。それでは、今年の熊大討伐祭、優勝者を発表いたしまーす!!」

「「「「「「わーーーーーー!!!!!!!!」」」」」」


 指笛を鳴らしたりしながら、広場に集まった冒険者達が囃し立てている。盛り上がってるなぁ。どうやら、始まる前からかなりの人がいたようだ。何か催しでもやってたんだろうか?


「その前に、こちらをご覧頂きましょう!!今回の優勝商品は、こちら!!近くの鉱石鉱山で取れた宝石を、これでもかと惜しげも無く使った豪華ネックレスでーす!!去年は青でしたが、今年は赤がモチーフになっています。これをプレゼントすれば、女性のハートを掴むこと請け合い。勿論、売れば途方もない額のお金になります!!さぁ、このネックレスを手にするのは誰なんでしょうか!!」

「おおー、すげぇ」

「重そうだ……」

「1000、いや、億はあるか?」

「値段の想像がつかねぇ」


 ネックレスかぁ。確かに、凄い綺羅びやかだ。だが、これでもかと装飾がされているせいで、本当に人が身につけるために作ったのか? という疑問さえ感じるデザインをしている。中央には、赤い宝石が大きく輝いていた。赤かぁ。アリー色だな。


「さてさて、では第三位から参りましょう!!」

「……そういえばこれ、集計とかどうやってるんだ?」

「自分のものだという証を立てておくんだ。ベイは、やらなかったのか?」

「……やった覚えがない」

「お気になさらず、主人。私が、代わりにやっておきました」

「え?」


 カザネが、俺の倒した熊を指差す。見ると、デカデカとベイ・アルフェルトと傷跡が付けられていた。一目瞭然すぎて、逆に恥ずかしい!!


「それでは、第三位!!栄えある第三位入賞者は、ミズキ選手でーす!!」

「おお、ミズキか」

「ミズキ選手、居られましたら壇上まで来て頂けますか!!」

「うむ」

「うわぁぁああ!!い、いつの間に!!」


 音も無く、ミズキが壇上に移動した。無駄に、ニンジャ格好いい。


「入賞おめでとうございます。今のお気持ちを、どなたに伝えたいですか?」

「ふむ、愛する殿にこの勝利を捧げたい」

「おおー、こんな強くて一途な彼女を持てるとは、そうとうラッキーな殿方なんでしょうね。羨ましい。では、こちらが入賞商品の金のシンケです。お持ち帰り下さい」

「うむ」


 ……なんだあれ。いや、シンケと言うか、シャケだなあれは。黄金のシャケだ。ミズキが、魚捕まえたみたいになっている。結構でかいな。1リットルペットボトルみたいな大きさしてる。……あれ、どうするんだろう。売るしか無くない?


「それでは、続いて第二位の発表です!!」

「貰ってきました、殿」

「お、おう。……どうしよう、これ」

「後で考えましょう。ベイのを貰った後でね」


 アリーがそう言うなら、そうするか。……あれ、さっきまで隣りにいたカザネがいない。何処に行ったんだ?


「第二位の入賞者は!!……カザネ選手でーす!!」

「とう!!」

「どわぁぁあああ!!」


 強風をたなびかせ、カザネが壇上に着地する。風を振りまきながら、決めポーズを取って着地した。……いや、格好いいよ。格好いいんだけど、身内としては恥ずかしい!! この上なく痛々しい!!


「えっと、カザネ選手ですかね?」

「ああ」

「なんという凄まじい風魔法!!これが、彼女が第二位という座についた理由でしょう。素晴らしい!!」

「愛する主人のおかげだ……」

「なんと、カザネ選手にも愛する殿方が!!恋する乙女は強いということでしょうか!!くぅぅ、羨ましいですね!!熱々でなによりです!!そして、こちらが商品になります。どうぞ!!」


 カザネは、渡されたものを頭上に掲げる。それは兜だった。やたらめったら綺羅びやかな兜だ。装飾と、散りばめられた宝石で、かぶりたくなくなる。と言うか、重そう。……カザネが、おもむろに兜をかぶった。


「……重い」

「やはりそうか……」

「それではお待ちかね!!第一位の発表と行きましょう!!」


 カザネが、重そうにゆっくり歩きながらこっちに戻ってくる。多分、カザネにしてみればなんて事ない重さだろうから、あれは演技だろう。


「主人、どうぞ」

「お、おう」

「これも、しまっときましょう」


 魔法のバッグに、悪趣味な兜がしまわれる。あの中には、金のシャケと黄金の兜が入っているわけだ。……カオスだな。


「それでは第一位!!……といっても、皆さん既に誰が一位かご存知でしょう!!第一位入賞者、その名はベイ・アルフェルト!!!!」

「マスター、いってらっしゃい」

「ああ、行ってくるよ」


 フィーに促され、俺は壇上へと上がる。俺の姿を見ると、観客は若いだの、どうやってあんなの倒したんだ? だのと、ひそひそ話を始めた。なんだか、祝われてる気がしないなぁ。


「きゃー!!ベイ君!!」

「?」

「素敵ー!!」

「おめでとうございます!!」


 ……何故だか分からんが、黄色い声援が飛んできた。あれは、レビンさんじゃないか。一緒に座って声をかけてくれてるのは、他のお客さん達だな。レビンさんの紹介だったのか。あっちには、ミセさんが居るなぁ。


「うおお!!私達も負けてられません!!妻の意地を見せなければ!!」

「そうだな」

「殿ー!!愛してますー!!」

「主人!!最高ですー!!」


 皆が、突然俺を持ち上げ始めた。と言うか、カザネとミズキが一緒くたに応援したせいで、二股か? とか、いや、おかしいぞ。21股に聞こえるとか言われ始めてるから、少しは自重して欲しい。


「いやぁ、あんな巨大熊を倒すなんて、凄まじい強さですね。あんな熊が襲ってきていたら、町は今頃どうなっていたことか……。討伐に参加してくださった皆さんもそうですが、貴方はその中でも一番の英雄と呼べるでしょう!!さぁ、この1位の商品をどうぞ!!」

「ありがとうございます」


 俺は、ネックレスを受け取った。……重い。これ、かけてたら肩に食い込むんじゃないか? 酷い重量だ。


「皆さん気になっていると思いますから、本人にお聞きしましょう。あの巨大な熊を、どのようにして倒されたのですか?」

「あれですか。……自分は、少し魔法を学んでおりまして。その中でも、結構強力な方の魔法(ほぼ物理)を使いました。それが、倒せた理由ですかね」

「なるほど、魔法ですか!!見たところ体も鍛えていらっしゃるようですが、そこに更に魔法という武器も持っているとは。素晴らしいですね。魔法剣士であったからこそ、あの大群の中を駆け抜けれたわけですか。納得です!!」

「魔法剣士か……」

「あの、国の兵士とかが良くやってる奴か?」

「そりゃあ、強いわな。若いのに立派なもんだ」


 ……俺は一応、召喚魔法使いなんだけどな。まぁ、それでいいか。


「ベイ選手、有難うございました!!そして、討伐に参加してくださった皆さんもありがとうございます!!これで、今年も平和に年を越せるでしょう!!それでは最後に、この中で一番頑張ったベイ選手を拍手で讃えたいと思います。それでは皆さん、拍手!!」


 パチパチパチと、会場のあちこちから同時に拍手が起きる。その音を聞きながら、俺は壇上を降りて行った。やっと祝われている気がする。


「おめでとう、ベイ!!」

「ああ、ありがとうアリー。……ミズキ、後でこれを加工してくれないか。アリーに合うように」

「承知」

「ベイ」

「デザインは私に任せて下さい、ご主人様!!」

「ああ、頼んだぞミルク」


 この2人に任せれば、ましなネックレスになるだろ。俺は、鞄にネックレスをしまいながらそう思った。




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