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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・七部 エジェリン家と、祭りと……
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ベイ式メンタルケア (客引き編

「お、スープか」


 家に入ると、美味しそうな匂いがしていた。たっぷりの野菜と、お肉を具にしたスープをアリー達が用意してくれる。それと、やわらかいパンを一緒に食べた。美味い。いい組み合わせだ。牛乳も、いつもより美味しく感じる。ごくごく飲めるぞ。


「お、おお!!」

「……ミルク、座りなさい」


 ミルクは相変わらずだ。ああー、食べた食べた。朝食べれなかったから、余計美味しく感じた気がする。うん? ロデとロザリオが、アリーに話をすると小さく俺に手を振って出て行ってしまった。……マジでやるのか、あれ。冗談じゃないのかよ。数十分後、2人がにこやかな笑顔で帰ってきた。


「タダで、場所を借りれました!!」

「余ってるスペースを無料で貸してくれるなんて、気前のいい町ですね」

「……多分、町の祭りの資金を、近場の鉱山関係の商業組合からがっぽり貰ってるからだろうな。場所代で、お金を取る必要が無いんだろう」

「なるほど……。それならタダだったのも納得ですね」

「さて、急いで店を作りましょう!!」

「……何処だ、場所は」


 スッと、ミズキが立ち上がる。あ、これはすぐにでも店が建つぞ。俺には分かる。嫌だなぁ。そう思っていると予想通り、20分後には立派な店が建っていた。祭りの間だけの店には見えんな。マジで営業してそうな店構えをしている。


「ミズキさん、素晴らしいです!!」

「ありがとう。あと、殿の服も作ったぞ」

「えっ?俺の服?」

「これです」

「……何と言うか、やたら動きやすそうな服装だな」

「ミルクのイメージで、揉み師が着てそうな服をデザインしてもらいました。ささ、中で着替えてください」

「あ、ああ……」

「私は、客引きしてきますね。さて、いいかもは何処かな~」


 ロデが、嬉しそうに広場に向けて移動していく。この店があるのは、広場からちょっとそれた細い小路の中ほどだ。かなり怪しい位置な気がする。まぁ、ここまで来たらやるしか無いんだろうなぁ。はぁ……。俺は、しぶしぶ着替えることにした。何と言うか、本当に運動でもしそうなラフな格好だ。家で、この姿で寝転んでても全然違和感がないだろう。日本だったらの話だが。


「とりあえず、待つか」


 俺は、1つ置かれたベッドの横の椅子に腰掛けて待つ。お客が来るかもしれないので、姿勢は正したまま座っていることにした。……しかし何だ、落ち着かないな。いつも感じている、腰の辺の重みがない。サリスを装備したままマッサージするわけにも行かないからな。仕方ないっちゃー、仕方ないんだが。あんなことがあった後だからな。武器を、装備していたい気がする。まぁ、呼べばアルティがすぐに来るんだけど。やっぱ、持ってると安心感あるよね。


「お、いい人み~つけた」


 その頃、ロデは広場でお客を探していた。その中で、ロデは一人の女性冒険者を見つける。短い金髪、褐色の肌、整った可愛い顔。鎧を着込んでいるが間違いない。彼女は、そのあふれる豊満な肉体を持て余している!! そうロデは確信した。1も2もなく、ロデはその女性に声をかける。


「あの、すいません。ちょっといいですか?」

「うん、あたし?どっかであったっけ?」

「いえいえ、そういうわけでは御座いません。それはそれとして、貴方、足を痛めてらっしゃいますね?」

「ああ、そうなんだよ。朝の熊狩りで気づいたら気絶しててさー。起きたら足を捻っててね。いやー、参ったよ」

「その痛み、お安く直せますよ」

「え、本当?胡散臭いなぁ……」

「いえいえ、至ってまともな商売ですよ。うちの店で揉みほぐしを受ければ、そんな傷もたちどころに元通りに。更に、日ごろ疲れた身体もリフレッシュすること間違いなしです」

「へー、なんだかうますぎる話だね」

「実は、このお祭りだけの限定開店なんですよ。しかも、今日が開店初日でして。その為の特別ご奉仕価格だと思って頂ければいいかと」

「なるほど。安いのは今だけって訳かぁ……」

「一度その揉みほぐしを受けて頂ければ、その凄さがわかると思います!!きっと、満足なさると思います」

「……で、いくらなの」

「この町でその傷を直すとなると、回復魔法師のお店だと1200といったところでしょうか。ですがうちは、なんと600です」

「おお、半額……」

「ですが、回復に30分ほど時間がかかるかと。それでもよろしければどうです?揉みほぐしを受けてみませんか?」


 女性冒険者は、腕を組んで悩んでいる。後、ひと押しかな? ロデはそう考えていた。


「治らなかったらどうする?」

「お金をお返ししましょう」

「よっぽど、自信があるんだね」

「ええ、腕の良い従業員がいますので。ただし、男性のかたなんです。そこは大丈夫でしょうか?」

「ああ、そこは別にいいよ。痛いの足だけだし。それぐらい気にしないなぁ……」

(勝ったな……)


 ロデは確信した。冒険者にとって、身体の不調は商売の邪魔になる天敵のようなものだ。すぐに治したいに決まっている。それも、出来れば安く。必ず釣れるという確信が、ロデにはあった。ただし、一度入ったら出られなくなるであろう、強烈な仕掛け付きではあるが……。ロデは、心のなかでニヤリと笑った。


「うーん、試しに行ってみようかなぁ……」

「ありがとうございます。それでは、こちらに付いて来て頂けますか」


 その女性冒険者を先導して、ロデは歩いて行く。内心で高笑いを上げながら。


「お客来るな、お客来るな、お客来るな」


 そんなことをつぶやいたところで、ロデは客を連れてくるだろう。何故だか、そんな気がする。そして予想通り、待機していた部屋の扉がノックされた。お客が来た合図だな。仕方ないので、俺は立ち上がる。


「失礼します。ベイ君、お客さんを連れて来ましたよー」

「こんにちは~」

「あ、どうも、初めまして」


 ロデの後についてきたお客さんは、かなり巨乳の冒険者の方だった。何故冒険者って分かるのかって? 筋肉が付いてるのがわかるからだな。多分、普段は重い鎧でも着けているんだろう。今は、かなり動きやすい格好をしている。前の部屋で、脱いだのかもしれないな。


「こちらのお客様、脚を捻ってしまったそうです。そちらの治療をお願いします」

「え?」

「(回復魔法、使えるよねベイ君。さっと治して、後は揉みほぐしてあげて)」

「(いや、俺の回復魔法はちょっと……)」

「(出来ないとちょっと困るから、よろしくね)」

「(ええー)」

「それではお願いします。では、ごゆっくり……」


 女性冒険者と俺を残して、ロデは出て行ってしまう。……気まずい。


「えっと、脚でしたね。それではベッドに腰掛けて、こちらに見せてください」

「あ、はい」


 やれやれ、やるしか無いか。俺は、素人だが素人なりに仕事をしようと、目の前の彼女と向き合うことにした。



 



270回目の更新です。まぁ、話は結構進んでる方ですかね。まだ、2部で予定している話は残ってますけど。……ゆっくりお付き合い下されば嬉しいです。よろしくお願いいたします。

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