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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・七部 エジェリン家と、祭りと……
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ベイ式メンタルケア (疑惑編

「……待ってください、アリーさん」

「なによ、ロデ?」

「果たして、本当にそうなんでしょうか?」

「どういうこと?」

「本当に、ベイ君が抱きしめたり撫でたりするだけで、女性冒険者が落ちるものでしょうか?」

「???」

「あの、私は……、耐えられないと思う」

「ヒイラの言う通りでしょう?あんただって、ベイにさんざん揉まれたくせにそんなこと言える?落ちるに決まってるじゃない」


 そのアリー達の反応に、ロデは目を細めて頷く。だが、迷いを振り切るように大きめのリアクションで腕を横にないで、否定するかのような動きをした。


「先入観ですよ、アリーさん」

「先入観?」

「私達は、ベイ君に対しての好意が既にありました。故にあのように……、か、感じ……、感じてしまったのです!!」

「……あんた、恥ずかしがるなら無理して言わなくても」

「いえ、言わせて下さい!!つまり、好意を寄せているベイ君にされたという強力な相乗効果によって、我々はあんな……、になってしまったんです!!」

「思い出して顔真っ赤よ、ロデ」

「触れないで下さい!!そこには、触れないで下さい!!」


 ロデは、落ち着きを取り戻すかのように深呼吸する。少し顔から赤みが引いたようだ。


「つまり、何が言いたいかというとですね……」

「試したい、とでも……?」

「その通りです」

「……」


 何を言ってはるんですか、ロデさん。思わず口調が変わるぐらい、何言ってるんだこの子と思ってしまった。というか、試してどうするんだ? 最悪、俺が苦労しそうなんだが?


「まぁ、魔法使いとしては、効果を見るというのは重要な事だとは思うけど。それをするメリットが、有るとは思えないのよねぇ。結果が見えてるというか」

「それが先入観なんですよ、アリーさん。本来、そんな簡単に人が心を許すなんてことはあり得ません。しかも、依頼などを受け、人とのやり取りで商売をしている冒険者ならなおのことです」

「だからって試すっていうのはねぇ。なんか違うというか……。そうよね、ベイ?」

「やめておこう」


 俺は、アリーの言葉にそう即答した。最近はかなり女性にモテテはいるが、俺もロデと同じ考えでそんな簡単に人の心が動くわけ無いと思っている。いきなり馴れ馴れしくされて、身構えない女性がいるだろうか? いや、いないだろう。試したところで、拒絶されて俺が心に傷を負っておわりそうだ。やめておこうよ、マジで。


「ほら、ベイもこう言ってるし」

「……あれですね。私としては、未来の夫がとても誠実でとても嬉しい発言ではあったのですが、これはあれですね。ベイ君、自分の凄さを分かってませんね?」

「!?」

「ああ、そういう風にとる?いや、単に私達以外に妻を適当に増やしたいわけじゃないからでしょう?」

「まぁ、それもあると思いますが。どうもベイ君は、自分にそこまでの力はないと思っているというか、そういう節を感じてしまうというか……」

「感じる?ベイで?」

「いや、何ですかアリーさん。やめて下さいよ。また顔が熱くなるじゃないですか……」


 うちの嫁が下ネタを往来で使っているのですが、なんと反応したら良いのでしょうか? 誰か教えてください。


「と、ともかくですね。あれです。私は、他の女性の反応が見たいんですよ。ベイ君に、好意とかそういうのを抱いていない女性の反応が」

「……揉みだけの威力を見たいと?」

「そうです」

「なんで?」

「いや、だって……、おかしいでしょう、あの威力?」

「……そうね」


 アリーどころか、皆頷いている。ニーナだけ1人あわあわしていた。常識人がいてくれて、大変助かる。


「試してみたくありませんか、その純粋な威力」

「いや、俺に言うなよ」

「でも、するのはベイ君だから」

「いや、駄目だろ。普通に揉むとか、怒られるぞ?」

「なるほど、揉んでも怒られなければいいと?」

「えっ?」


 ロデが指をさす。その指先の方向を見ると、とある店が存在していた。ま、マッサージ店?


「なに、あの店?」

「あれは、整体師。つまり、腕で揉みほぐすことによって、身体の疲れを取ったり、身体の歪みを直したりする医者みたいなものです」

「へー、魔法に頼らない治療をするってわけね。回復魔法あるんだし、あんまり繁盛してないんじゃないの?商売として、成立してるのかしらね?」

「アリーさん、そこなんですが。回復魔法での治療も、ただという訳ではありません。専門の回復魔法医のいるお店に行けばそれなりのお金を取られますし、受ける回復魔法のランクによっては、ちゃんと治りきらないことも良く有ります」

「なるほど。その治りきらない所を、安く治してくれるってわけ」

「そういうことです。それに、体の歪みを治すなんて微妙な操作は回復魔法では出来ません。あの店はあの店で、独自の売りがあるんですよ。疲れも気持ちよく取ってくれるらしいです。まぁ、整体師の腕が良ければですけどね」

「へー。まぁ、ベイの回復魔法の劣化版みたいなものかしら」


 確かに、気持よく疲れが取れるという点では、俺の回復魔法が上なのかもしれない。多分、気持ちいいのところにかなりの違いがあると思うが、気にしない。気にしたくない。


「あの店と同じことをすれば、女性の同意を得た状態でベイ君が触ることが出来ると思います」

「……いや、無理だな」

「え、何でですか?」

「俺は男だ。その時点で、治療とはいえ触るのを拒否する女性もいるだろう」

「私も、ベイじゃなかったら治療でも嫌ね」

「なるほど」

「それに、俺は整体師の技なんて知らない。文句を言われそうだ」

「ああ、そこは心配ないよ。……気持ちいいし」

「うんうん」

「……」


 そこは確定なのか。皆が自信を持って頷いてくれているのは嬉しいんだが、なんだか逆に心配になってくる。俺の身体、本当にどうしちゃったんだろう? なにかおかしな成分でも分泌してるのかなぁ?


「……まぁ、お客さんは男性の整体師でも良いって人を探すとして……」

「いや、待て。まだ問題がある」

「うん、何?」

「あれは何か、許可がいる職業なんじゃないのか?勝手にやっていい店なのか?」

「ああ、そこは大丈夫だよ。確かに、国に申請がいるって前に本で見たような気がするけど。そこは整体師って名乗らなければいいわけだし。例えば、疲れ揉みほぐし落とし師とか?」

「大丈夫なのか、そんなので?」

「幸いにも、今は祭りの真っ最中。変わった出店、出すくらいなら問題無いでしょう」

「そ、そうなんだろうか……」


 かなりグレーな行為な気がする。俺、素人だし。


「という訳で、お昼ごはんを食べたら試しにやってみましょう!!なーに、場所取りは任せて。商売人の娘として、さっと適当なスペースを合法的に押さえて来るから」

「え、やるの?」

「勿論」

「アリー?」

「……ベイの経営する揉みほぐし店。……いい」

「……」

「ロデ、私も手伝います!!」

「お、ロザリオも分かったのかしら。この話が、かなりお金になるってことに」

「いえ、私がベイ様に揉みほぐされたいだけです!!私の身体を揉みながら変形するベイ様の筋肉……。今から場所を確保しに行きましょう!!」

「いや、あんたがお客になってどうするのよ。流石にお腹減ったし、お昼からにしましょ」

「……分かりました。お金ならあります。必ずスペースを取りましょう」


 なんだかよく分からないことになってきた。ともかく、家に帰って食事にしよう。無駄にやる気が溢れてそうなロデとロザリオを見ながら、俺はやっと着いたサラサ家の玄関の扉を開けた。



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