一体化VS魔王
「さぁ、やろうか!!」
「見せてみたまえ、その力を!!」
クローリと俺が、同時に剣を振りかぶる。虹色の魔力と、闇の魔力がぶつかり合った!! その瞬間、クローリの剣がアルティをすり抜ける。だが、剣は再構成されず、途中で折れたかのようになっていた。
「これは!!」
「相殺さ!!」
闇の魔力をぶつけ、再構成を妨害した。これで、もうこの技は意味が無い。むしろ、クローリは自分で隙を作ったに等しい。すぐさま、俺はアルティで薙ぎ払った!!
「くっ!!」
クローリが、拳でアルティを受ける。その拳に、切り裂かれた傷が残っていた。
「この状態の魔王様に、普通に傷跡を!!」
「やるな……」
クローリは、傷跡を治そうと試みる。だが、その傷口はふさがらない。
「これも相殺してくるか……」
「ああ、お前は回復もできない」
アルティが変化する!! 俺の手に、棒となってアルティが出現した。
「モードチェンジ・カヤ」
「しっ!!」
「ぐぬっ!!」
炎を纏ったアルティを、クローリ目掛けて連続で突き出す!!クローリが防ごうと試みるが、俺達の方が手数が多い。少しずつ俺達の攻撃は、クローリの鎧を削いでいった!!
「はぁぁああああああああ!!!!」
「!!」
クローリが、周りの魔力の密度を上げる!! すると、俺達の攻撃を押し返してきた。また、パワーが上がっている。いったい、何処までこいつは強くなれるんだ?
「いくぞ、バズラ!!」
「はい!!」
「うおおおおおぉぉぉおおおおおお!!!!」
クローリの腕から、剣が消える。それと同時に、クローリの腕が巨大になっていった。まるで、ミルクのガントレットのようだ。更に、肩の角も大きくなり、目が怪しく光っている。これは、フィーと、レムが戦った相手の力だろうか?
「うおおおおおお!!!!」
クローリが突進してくる!! アルティで受け流すように攻撃を防いだが、この攻撃はかなり重いようだ。でも、こっちにだってパワータイプの武装がある。
「モードチェンジ・ミルク!!」
アルティが、巨大なガントレットへと変化した。今度は受け流さず、真正面からクローリと拳を打ちつけ合う。大気がわななき、軋んだような音を上げた。だが、一撃だけでは終わらない。何度も、何度も拳を打ち付け合う!! その間、最高の一撃を叩き込むべく、俺は魔力を練っていた。そして、ガントレットに火の魔力と風の魔力で、スピードを上乗せする!!
「はぁぁああああああああ!!!!」
「ぐっ!!」
俺達の拳が、クローリの拳にヒビを入れた。追撃しようと、もう一方の腕を突き出すが、クローリは距離を開けるように素早く飛び退く。そして腕を戻し、新たな部位に魔力を集め始めた!!
「今度は足か……」
「ふっ!!」
クローリが、空中を蹴って飛ぶ!! 先程までより、数倍早くなっているようだ。こちらも、武器を変えるか。
「モードチェンジ・カザネ!!」
アルティが、俺達の足を包み込む。鋭く爪の尖った、強力な脚の武装が装備された。俺達も、すぐさま空中を蹴って飛ぶ。超高速で、俺達とクローリはぶつかり合った!! 腕で牽制しながら、お互いに蹴りを放つ!! 蹴りの一発一発が、空気を切り裂いていった。
「さて、カザネ。こんな時、お前ならどうする?」
「こうします!!」
風魔法で更に速度を上げ、俺達は加速した。風の魔力を纏い、ブレるように一瞬で俺達はクローリの前から姿を消す。そして、クローリの後ろから高速で接近し、最高の蹴りの一撃を放った!!
「ちっ!!」
クローリが、パワーを上げて迎え撃ってくる!! だが、俺達の方が威力が高い!! クローリの足は形を残したものの、ヒビが入った状態となった。
「ぐはぁ!!」
「魔王様!!」
腕と足に、クローリはヒビが入った状態となっている。だが、その動きはまるで衰えていない。そう思っているうちに、今度は尻尾が変化した。巨大になり、5本に別れ、鋭い槍のように先端が尖っている。
「モードチェンジ・ミズキ!!」
俺達の首の周りにリングが出現し、8色の触手の剣が出現した。クローリの尻尾と俺達の触手がぶつかり合う!! 単純に、こちらのほうが数が多いのに加えて。今度の触手は、レムとミズキが操っている。すぐに、クローリは劣勢に追い込まれた。
「これも駄目か!!」
「人間め!!」
「終わりだな」
「……残念だが、まだだ」
クローリが、触手の攻撃の中を無理やり突き進んでくる。そして、魔力をかなり高めていることが分かった。何かする気だな。その前に決着をつけようと、ミズキとレムは、触手に魔力を込めて最後の一撃を放つ!! だが、その次の瞬間、クローリから莫大な闇の魔力が放出された!!
「うおおおおおぁぁぁぁおおおお!!!!」
「まずい!!」
俺は、ライオルさんの前に転移して魔力の壁を作り防御する。すると、膨大な闇が迷宮を包み込んでいった。
「なんて、パワーだ!!」
「すまねぇな、ベイ君……」
今にも、魔力の壁が打ち砕かれそうな力が周りにあふれていた。だが、俺達はその攻撃をどうにか耐え切る。闇の魔力が元に戻って行くと、周辺の地面は抉れ、大きく球体状に穴が出来ていた。……地面が、消滅してしまっている。嫌な攻撃だな。
「これも耐えきるか……」
「殺したと思ったのに……」
空中に、クローリが浮いている。見ると、身体のヒビが治っていた。さっきの間に治されたのか。ちっ、厄介な。
「どう思うバズラ。殺せなくはないだろうが、危ない賭けな気がするな」
「私も、そう思います」
「そうか、であれば、ここは引くとしよう」
「……逃げるというのか?」
「ああ、その通りだ。私たちには、まだやるべきことがあるのでね。君と戦うのは実に楽しいが、今日は決着をつけずに引かせてもらうとするよ」
「出来ると思っているのか?」
「勿論」
クローリの身体から魔力を感じる。これは、転移魔法か!! 俺は、すぐさまその魔力を相殺する。だが、クローリの身体の転移は止まらなかった。
「!!」
「君は、魔力を相殺することが出来るようだが、私とバズラの二重の魔法発動を見切って相殺できるわけじゃないようだな」
「転移魔法を二重に唱えただと……」
「ああ、じゃあ、また会おう。ライオル、そして魔物に好かれる不思議な青年ベイ・アルフェルト君。次は、決着をつけよう」
「くそ、逃がすか!!」
俺は、クローリ目掛けて水の糸を延ばす!! だが、クローリの体は消え、その場からいなくなってしまった。