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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・七部 エジェリン家と、祭りと……
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真の力

「今のはどう見ました、ミズキ?」

「殿なら、防げないこともなかっただろう。魔神創造を使えば、目の前に土の壁を作り攻撃を防げたはずだ。もっとも、無傷で済むかは分からなかったがな」

「まぁ、アルティも反応していたようですし、最悪防げたと思いますけどね。レムは、我慢が出来なかったんでしょう。ご主人様がダメージを受けるのが。ああー、私も転移魔法が使えたらな~。先に殴りに行ったのに」

「にしてもミルク姉さん、大丈夫でしょうかレムさんわ」

「うん?どういうことです、シデン」

「ご主人様ですら手を焼いていらっしゃる相手に、レムさんの力が通用するのかと思いまして……」

「ああ、それなら大丈夫ですよ。うちのナンバー2は、伊達じゃあありません。まぁ、見ていなさい。参考にならないほど、やばいものが見れますよ」

「こん?」

「そんなことより、私達も行かない?主様を守らないと」

「カヤ、我々はいわば伏兵だ。敵の戦力がどれだけ居るかもわからない今の段階では、私たちは隠れて周りに気を配っていたほうが良いだろう。勿論、殿がお呼びになればすぐにでも皆で転移するが……」

「伏兵ねぇ……。そこまでしなくてもいいと思うんだけど。分かった。ちょっと待ちましょう」


 そう話している4人が再び目線を戦場に向けると、レムとクローリが睨み合っていた。レムは、止まったままのクローリにしびれを切らしたのか、僅かに距離を詰める。2人の剣の間合いが重なった瞬間、レムとクローリは、同時にお互いを斬りつけた!!

「……」

「むっ」


 はっきりというが、クローリの斬撃は速い。先程、俺に殴りかかってきた速さと同じくらいのスピードが出ているだろう。だがレムは、特に焦ることもなくその速度に対応してみせた。……いや、むしろ押してる?


「しっ!!」

「ぐっ!!」


 レムは、クローリの剣に威力が乗る前に剣を叩きつけ、軌道をそらしたり。受け流すことで隙を作っている。変幻自在とでも言うべきか、凄い剣技だ。レムの剣技に圧倒されて、クローリはいつの間にか防戦一方となっていた。まずい、とクローリも感じたのだろう。身体から吹き出す魔力を更に上げて、速度を上げる。しかし、それでもレムはまだ揺るがない!! 盾で、剣で、完璧にクローリの斬撃を捌いていく!! う、美しい。全く無駄がない。鎧を着ていなければ、レムに惚れなおしていたことだろう。


「ど、どど、どうなってるんですか、ミルク姉さん?」

「シデン、貴方も聞いたかもしれませんが、レムはちょっと特殊な進化をしてましてね。いわゆる生物型魔物から進化したのではなく、無機物型魔物から進化したんですよ」

「それと、この状況とどういう関係が?」

「本来生物は、己の体を壊すほどの力が出せるはずなんですよ。まぁ、全力を出せればですけどね。生物型魔物は、己で己の肉体を破壊することがないように、無意識のうちにリミッターをかけているんです。肉体が勝手にね」

「はぁ……」

「ところが、無機物型魔物であったレムには、そんな制限は、はなからなかったんですよ。つまり、進化した今のレムも、自分の身体の100%を常に出せるというわけです。それがあの速さ、あの動きを可能にしているんですねぇ。まぁ、レムが超が付く技術記憶マシーンってのもありますけど」

「えっ。でも、100出しているとしたら、それは身体が壊れていってるってことじゃあ……」

「いいとこに気が付きましたね。その通り。今のレムの身体は、一回動く度にとんでもない負荷がかかっているわけです。しかし、レムはその対策を既に打ち出していました。闇の魔力を用いての肉体の再構成。それをレムは、独学で編み出したのです!!」

「ええーー!!」

「つまり、今のレムは動けば動くほど再生と成長を繰り返す最強の達人とかしているわけですね。あの状態のレムに攻撃を当てるのは、私でも難しそうです……」

「そ、そんなに……」


俺の目には、レムの身体の魔力の動きがはっきりと見えている。一回剣を振る度に、速度を上げる度に、その身体は崩壊し、更に強くなって再生していた。あれは、以前最初の一体化の時に戦った敵の再生に近いような……。レム、あの時の相殺した感覚を頼りに、今の今まで使えるように修行してきたというのか……。なんという努力、なんという技術。しかも、その体中に行き渡らせている再生の魔力が、強化の役目も果たしているんだろう。レムの身体を、活性化させているように感じる。クローリは、未だに速度を上げ続けているが、それをレムは完璧に抑えこんでいた。


「はぁあああ!!」

「!!」


 レムの斬撃が、ついにクローリを捉えた。クローリの胸に、真一文字の深い傷跡が付いている。あれをまともに当てれば、レムはクローリを、完全に切り伏せることが出来るだろう。凄い!! 凄いぞ、レム!!


「……その魔力。その感じ。貴方、人間じゃないでしょう?」

「だったら何だ?」

「何故魔物が、人間に味方するのですか?しかも、貴方ほどの実力のある者が……」

「大切な人を守るのに、理由がいるのか?」

「人間が、大切……」

「……ふふっ、君はつくづく面白いな、ベイ・アルフェルト。まさか、魔物が君を助けに来るとわな。これは私も、予想していなかったよ。まぁ、そんな奴と戦ったこともあったが、あれらは目の前の彼女のような反応は示さなかったからな。……面白い」


 そう言いながら、クローリが胸の傷をひと撫でする。すると、すぐに傷が消えた。こいつも、やっぱり使えるのか。かつて倒した敵の、不死身に近い超再生能力を。


「驚いたかな?この力は、ベイルに教えてもらった。なかなか便利だろう」

「魔王さま、最早遊んでいられる段階では……」

「ああ、そうだな。私達は、彼等を舐めすぎていたようだ。これをすると、熊達も気絶してしまうからあまりしたくなかったのだが、仕方あるまい」


 瞬間、魔王の鎧にヒビが入っていく。ただでさえ禍々しかった肩に大きな棘が出現し、更に大きな形へと変化した。


「これは、ミゴールの狂化という能力だ」


 次に、クローリの背中に翼が生えていく。ドス黒い、光沢のある鋭利な翼が、空中にはためいた。


「これは、フォート」


 続けて、腕、足、胴体が巨大に、刺々しく変化した。


「スビア、ザルシュ、デイク」


 そして最後に、まるで槍のようなしっぽが生えた。


「アビマ」


 それらに合わせるように、残った部分の鎧が変形し、その鎧を完成させる。


「そしてこれが私の力、統一だ。闇の魔法を、お互いに増長しあうように、噛み合わせることが出来る。凄いだろう」


 更に禍々しくなったクローリが、俺とレムの目の前に立っていた。……このプレッシャー、間違いない。こいつ、神魔級迷宮のボスよりも、確実に強いぞ!! 何よりその姿、1人一体化とも言える禍々しさだ。ヤバイ感じが、ビンビン伝わってくる。


「おや、君たちは気絶しないのか。……やはり、最初からこっちでなくては駄目な相手だったようだな」

「だが、もう打つ手はあるまい。大人しく投降しろ、ベイ・アルフェルト。それとも、そこの彼女ごと無に帰るか?」

「おいおいバズラ、殺す気はない。そんな挑発はやめろ」

「はい、申し訳ございません……」

「だが、こちらとしても手荒にしないで済むのは嬉しい。どうだろう、そうしてくれないか?」


 ああ~、完全に舐められているな。まぁ、それはそうだろう。今や、俺達とクローリとの戦力差は、あり得ないほど広がっているのが明らかだ。普通なら、これで負けが確定しているだろう。普通の相手ならな。


「むっ」

「隙だらけですね。余裕を浮かべすぎです」


 クローリの体に、細い水の糸が巻き付いている。その糸は、クローリの動きを僅かではあるが、封じ込めていた。


「さぁ、行きましょうか、魔王君!!決戦の舞台へ!!」

「なっ!!」


 その隙を見逃さず、ミルクがおもいっきりクローリを殴る!! それに続いて、フィーがクローリを蹴り飛ばした!!


「はぁぁぁああああああ!!」

「くっ!!」


 クローリが飛ばされた先の空間、そこにミズキが魔力を送り込む。ミズキが指で呪印を結ぶと、クローリは何処かへ転移した。


「行きましょう、殿」

「ああ」


 俺達も、クローリを追って転移する。雪吹きすさぶ雪山。その只中に、俺達は転移した。




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