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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・七部 エジェリン家と、祭りと……
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謎の生物

 先頭集団が熊達の群れと激突する。大きな木程の背丈の熊一匹が先頭に立ち、その周りを5匹ほどの熊が並走していた。その熊達は、人間を見つけるといきなり凶暴になり、すぐさま攻撃態勢をとり始める。だが、先頭を走っていた冒険者達は、これをあっさりと倒した。


「へっ、今年の熊は去年よりも凶暴みたいだが、やはり所詮は熊。普段迷宮で立ちまわっている俺達の敵じゃねぇな」

「すげぇ、あの大熊を一撃で!!」

「あいつら、Sランク冒険者の早駆けってチームじゃないか?先に行かせたらやばそうだな。おい、あいつらにこっち方面は任せて、俺達は横側から攻めるぞ。周りに構わず迂回して、先にいる大物を狙う」

「了解!!」


 それぞれの冒険者が、それぞれの作戦で動き始めた。先頭集団に張り付き、道を開けてもらおうとするもの。迂回して、大物を狙いに行くもの。後ろで、ただひたすら魔法を当てるものなど、その動きは様々だった。最初は、押しているように見えた。事実、熊を冒険者達は何体も倒している。だが、すぐに冒険者達は気づいた。


「……切っても切っても、熊が減ってる気がしねえな」

「そりゃあ、上から見てあれだけの数だったもんね。これ、結構長丁場になるかも」


  普通なら、これだけ倒せば周りから敵がいなくなっているものだ。だが、先頭集団は常に熊に囲まれている状態で戦うことを余儀なくされている。最初こそ、勢い良く熊の集団を真ん中を切り開くように駆け抜けていた冒険者達であったが、その動きは熊の群れの中を少し進んだところで止まっていた。


「あまり踏み込むと、後ろと連携出来なくなるな……」

「補給も、回復も期待できなくなるわね」

「じっくり攻めるしかねぇか……」


 そういいながら、戦士は巨大な熊の攻撃を避ける。近くにあった木が、熊の攻撃で軽々ともげた。戦士は、きっとこう思ったことだろう。今は軽々避けられているからいいが、戦いが長引き一発でも貰えばただでは済まないと……。


「迷宮の魔物みたいに早くはねぇが、それに近い攻撃力はありやがる。しかも、数が多い。……今年は、厄介だな」

「ぐわあああああああーーーーーーー!!!!」


 後ろで悲鳴が上がった。戦士たちは少し後退して、熊に襲いかかられている冒険者を助けだす。その冒険者は、熊達に囲まれて押さえつけられていた。腕が変色し、内出血しているように見える。これではもう、まともに戦うのは無理だろう。


「すまねぇ、助かったぜ……。死を覚悟したよ」

「いいってことよ。これじゃあ、もうまともには動けないだろうな。おい、誰か運んでやってくれ」

「俺が行こう」


 戦士の仲間と思しき男性が、怪我人を背負う。だが、後ろに交代しようとする男性の前に、また新たな熊達が立ちふさがった。どうやら、怪我人を背負っての無傷での後退は難しそうだ。


「っち、おい、誰か一緒に……!!」

「あははははははは!!!!!!!!」


 突如として、後ろにいた熊の集団が何かに弾き飛ばされるかのように空中で回転して息絶える。戦士たちの周りで、次第にその熊を轢き殺した何かは数を増し、お構いなしに熊達を吹き飛ばしていった。戦士が、前の方に目を向ける。どうやら、大きな熊であろうと構わず轢き殺しているらしい。それは、辛うじて1頭だけ目で捉えることが出来た。


「牛……」

「あはははは!!邪魔者は轢き殺せー!!ハリーアップ!!」


 土色の牛達が、熊達を轢き殺している。それは、長く冒険者生活を送ってきた冒険者達から見ても異様な光景であった。


「あはは、どうですかご主人様!!最高でしょう!!」

「まぁ、乗り心地は悪くないんだが。その、熊を轢いていくのがなぁ……」

「え、何か問題が?」

「その、グチャっとか、ボキッとか生々しい音がしまくるのがだなぁ……。いや、それも仕方ないか。まぁ、いいや。さっさと行こう」

「分かりました!!更に飛ばしますよ!!」


 ミルクのその声で、俺とミルクの乗っている牛は更に加速する。絶妙なコントロールで木を避け、熊を轢き殺し、牛は突撃していった。もう、一番でかい熊は、俺の目の前に見える所まで来ている。


「……あっちの血しぶきが飛び散ってる所が、ミズキが糸で頑張っているところか。やばいな」

「あっちは光ってますし、シデンでしょうね。ミエル達は、魔法を使うのを制限していますから」

「そして、あの熊が無駄に空中に浮き上がって落ちていっているのがカザネのいるところか。皆、エグいなぁ……」

「まぁ、カヤやレム、フィー姉さんのほうがスマートに戦ってるでしょうね。皆、一撃づつで仕留めているでしょうし、武器を振るいい練習になってるんじゃないですか?」

「かもな」


 そろそろ、俺も戦い始めるか。俺は、牛の上で中腰のかがんだ姿勢を取る。ジャンプする準備は万全だ。


「そろそろ、俺もあいつに攻撃するよ。後は適当に轢き殺しておいてくれ、ミルク」

「はい、了解です!!」

「じゃあ、また後で」


 俺は、強化魔法を体にかけると一気に空中に飛んだ。そのまま、一直線に一番巨大な熊に向かって突っ込んでいく。一撃で倒す!! この時の俺はそう思い、普通に剣を構えた。勢いに任せて、熊の筋繊維を切り裂くためにアルティを振り抜く!! いくら多少強化されているとしても、大きいとしても所詮熊は熊だ。これで終わるはずだった。本当に、ただの熊ならば。


「な……!!」


 なんだ、おかしい!! 毛が逆立ったとでも言えばいいのだろうか。その熊の毛が一瞬にして固くなり、俺の斬撃を防いだ。それだけならまだいい。熊の体毛が、突然黒く変色していく。どす黒く、その体の毛はまるで装甲のように固くなり、熊の目を赤く光らせた。これだけで分かる。こいつ、普通のでかい熊じゃない。


「やはり、少し強くなろうとも所詮は熊ですか。数を集めて多少は戦果を期待できると思ったのですが、期待しすぎでしたかね」

「しゃ、喋った……!!」


 熊が喋った。しかもかなり流暢だ。声的には、オスかな?


「ですが、この力強い体にある程度の頭脳があれば人間を殺すなど簡単なはずなんですよ。ええ、ですから今からお見せしましょう。この私が、この最高傑作を操ることで」

「?」


 なんだあいつ、何かと話しているのか? ということは、近くに何かが……。


「さて、まずは貴方からですよ。人間」

「……」


 熊が、俺を真っ直ぐ睨みつけてくる。そして、舌なめずりしてニヤリと笑った。




260回目の更新になります。ランキングの変更なり、ブクマや閲覧数の低下なり色々あった期間でした。ですが、現時点では総合3000点を叩き出しています。ありがとうございます。皆さんのおかげです。


これからも頑張って更新していきますのでよろしくお願い致します。

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