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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・七部 エジェリン家と、祭りと……
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お祭り会場見学

「……これまた巨大な」

「鍋ですかね?」


 何食分作るんだよって感じの鍋が、すぐ近くには設置されていた。このために作ったであろう、巨大な設置装置の上に鍋が置かれている。200……、いや、500食はいっぺんに作れそうな大きさだ。


「討伐した熊の肉は、ここで美味しく調理されるの。そのまま焼いたり、鍋で汁物にしたり。毎年大人気なのよね」

「へー」

「ご主人様、あの屋台が焼くようのやつじゃないですかね?」

「なるほど、それっぽい鉄板があるな。あれで料理するってわけか」

「楽しそう」


 カヤは火の扱いが得意だからか、焼き物系の料理を作る時はとても楽しいらしい。あの大きな鉄板で、次々と巨大熊の肉を焼いていく光景を想像したら、楽しそうに感じたようだ。ヘラで、肉を華麗にひっくり返す動作をしながら、カヤは微笑んでいる。


「あれがうちの屋台。祭りの時は、凄い人気なの。もう長蛇の列が、あそこまーで」

「いやリサ、それは言いすぎだろう」


 リサは、会場全部を埋め尽くして、村の入口ぐらいまでを指差した。流石にそれだと、誰も入ってこれなくなるよな。


「……」

「アリー、何か考えごとかな?」

「ちょっと気になるのよね。魔力で強化された熊ってフレーズが……。何でそんなことになってるんだろうと思ってね。しかも、こんなにでかくなるわけでしょう?……自然に、こんなことがあり得るのかと思って」

「なるほど、確かに……」

「ベイは知ってる?魔水強化現象っていうのがあるんだけど……」

「知ってるよ。魔力が、水などの体内に吸収しやすい物質などに混ざる形で発生して、動物などが一時的に強くなってしまう現象だったよね」

「そう。その可能性なら考えられるんだけど。それは確か、一時的なものだったはずだから、こうはならないと思うのよねぇ。……いや、でも常飲とかされるとこうなるのかしら?うーん、分からないわね」


 アリーは、こうかしらどうかしらと頭を悩ませている。どうもこの現象に、腑に落ちない点があるらしい。俺なんかは、へー、そういうもんなんだ。で、済ませてしまうが、アリーは気になることがあると、こんなふうに考えぬいてしまう。これが、アリーが天才たるゆえんだろう。


「なんだかめんどくさそうな人ね、サラサ」

「リサ、アリーさんは、超がつく天才なんだ。そんなふうに言ってはいけないよ」

「私は、祭りが楽しめれば、それでいいと思うんだけどなぁー」


 そう言いながら、リサは近くの土産物屋の商品を見ている。まぁ、長く続いている祭りみたいだし、村の人から見たら不思議でも何でも無いんだろう。こういうものなんだと、頭が覚えてしまっているはずだ。……しかし、確かに熊を巨大化させている原因は気にはなるな。かなり前から続いているはずだから、人為的なものではないはずだし。となるとアリーが言った通り、魔水強化現象が一番有力な説だろうか。


「あ、この置物かわいい!!」

「お、リサちゃんお目が高いねぇ!!自信作なんだよ」


 ……木彫りの熊か。やっぱり、熊が中心のお祭りなだけあって、熊にちなんだグッズが多いみたいだな。木彫から、鉄製。……あれは金か?いや、値段的には、金メッキせいってとこかな。


「見事に熊ばかりだな」

「牛はないんですかねぇ」

「猿も」

「カラスも」

「キツネも」


 皆、それぞれの種族に近い動物を言っているが、あったら嬉しいんだろうか。でも、暴れ熊を狩猟するお祭りだからな。ある意味、無いほうが良いのかもしれない。


「おっ、サラサちゃん帰ってきてたのか。ちょっと手伝ってくれないかね?こいつが重くてよ」

「良いですよ」


 何やら屋台のおじさんが、サラサに巨大な岩を持ち上げてもらって移動させていた。何だあれは?


「いやー、流石、エジェリンさんの家の子だ。おじさんでもキツイのに、軽々運ぶね。ありがとう」

「いえいえ」

「サラサ。これは、何屋さんなんだ?」

「ああ、ベイ。ここは、重量上げ屋さんだ。この岩を、持ち上げることが出来たら景品がもらえる仕組みになっている。ここにおいてある岩で、大きなものを持ち上げるほど良い景品がもらえるぞ。ただし、失敗したら何ももらえないがな」

「へー」


 こういう祭だし。腕に自信のある人が多く来そうだもんな。力を見せる出店は、見世物にもなるし面白いかもしれないな。マッチョマン達が、こぞって参加する未来が見える。


「サラサちゃん、その子は誰かな?彼氏?」

「いえ、旦那です」

「旦那!!……あのサラサちゃんに、旦那がねぇ……。何と言うか、サラサちゃんの旦那にしてはスマートな印象だなぁ。いや、サラサちゃんの旦那だし、只者じゃないんだろう?謎の威圧感を感じるし」

「威圧感……」

「ええ、流石おじさんですね。よく分かってらっしゃる。多くの筋肉自慢達の奮闘を見てきただけはありますね」

「勿論だよ。何と言うか、見た目より重そうな雰囲気のする子だよね。詰まってるというか、鍛え上げられているというか。なんて言うの、実戦向き筋肉っていうのかなぁ?冒険者に近い感じの雰囲気がある子だよねぇ」

「そうです!!ベイ様の筋肉は、その見た目からは想像もできないほどにずっしりとしていて、しなやかで鮮麗されています!!しかも、身体の何処を見ても変な偏りもなく、バランスも素晴らしいです!!ベイ様がその筋肉を動かしている魅力たるや、他の鍛えている方たちとはまた違った素晴らしい美しさがあります!!最高です!!」

「お、おお……。そっちの子も、なかなか筋肉にはうるさいみたいだねぇ。確かに、今まで見てきた人達とは、また違った印象を受けるなぁ」

「でしょう!!特に、この腕を振るっている時の筋肉の動きが、私は好きで……!!」

「……」


 ロザリオが、早口になっている。そんなに俺の筋肉見てたの? ってくらい詳細に説明を、重量上げ屋のおやじさんにしていた。褒められているんだろうが、何か嬉しくない。不思議だ。


「……この細腕がねぇ。……うわぁ、固い!!!!」

「そうだろう。今までに感じたことのない感触だろう、リサ?」

「うん……。うわぁ、なにこれ?触ってるだけなのに、何か重い。筋肉の凹凸から、中の繊維、血の流れまで分かる気がする……。なにこれ。凄い」

「……」


 何で俺の筋肉のことで盛り上がっているんだ? 恥ずかしい。そして、アリーも悩むのを中断して俺の腕をスリスリ触っている。いつも触ってるのに。何か、違う驚きを見つけたような顔をしていた。そんな凄いのか、俺の筋肉は?


「うーん、そんな凄い筋肉を持ってる人は見たことがないなぁ。君なら行けるかもしれないね。今年の優勝……」

「巨大熊の討伐なら、ベイが一位で確定よ。間違いないわ!!」

「いや、それもあるんだけど。もう一つ、この祭りには目玉があってね」

「もう一つの、目玉?」

「そう、それは……」


 おじさんは、腕まくりをして腕を構える。その動作は、よく見るあれだった。


「腕相撲さ」

「腕相撲?」


 おじさんは、屋台に貼ってある1つのチラシを指差す。何々、腕相撲大会? 大会で優勝すれば、モテモテになれるかも? ……なんだか胡散臭いチラシだな。俺がそう思っていると、リサが何か気合を入れたような顔で、そのチラシを見ていた。





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