準備見学
「フィーは、可愛いなぁ」
「マスター……」
今日はフィーが甘えモードなので、さっきからフィーの太ももをさすりさすりしている。程よい弾力と、つやつやのお肌が最高だ。ミルクは、お腹らへんに手を置いて抱きしめている。胸のお肉と、お腹のお肉に挟まれて、暖か柔らかい。
「んっ……、んっ……」
シデンはさっきから、俺の頭にキスの雨を降らせている。……これ以上悪化しないと良いのだが。
「なるほど、サラサもちゃんと学生してるみたいだね」
「当たり前です、母さん」
レラからの話を聞いて、サンサさんは嬉しそうにサラサを見つめていた。子供の成長を喜ぶ、親の目をしているように見える。良いなぁ、こういうお母さん。うちのカエラもいいお母さんなんだけど、リアクション力が高過ぎるのが難点かな。
「さて、いい話も聞かせてもらったし、おやつ出しちゃおっかなぁ。はい、ガリセンだよ」
「ガリセン?」
「知らないのかい?ガリガリ食べるからガリセン。センの部分は、一日にセン枚近く作るからそういう意味らしいね。まぁ、食べなよ」
「いただきまーす」
……俺、これ知ってるぞ。せんべいだ。日本の伝統的なお菓子だ。……しかも、出されたお茶もある。味わおう。俺はそう思った。
バリボリ、バリボリ。
うん。せんべいだ。美味い。美味い……。
「……どうしたの、ベイ?」
「いや、懐かしい味なきがしてね……」
「へ~、食べたことあるのね」
「うん……」
海苔とか巻いてあっても良いんだけどなぁ。……でも、なんかあれだな。いわゆる、醤油味ではないな、これは。米せんべいって感じだ。塩味がいい感じにアクセントになっている。美味い、美味い。
「あはは、気に入ったみたいだね」
「ベイ……。母さん、これってどうやって作ってるんだ?」
「お、恋する乙女みたいな発言だね、サラサ。良いだろう、後で教えてあげよう」
「お願いします」
「あはは、うちの子が料理の教えを請うなんて、初めてだ!!」
嬉しそうだなぁ、サンサさん。バリボリ、バリボリ。
「マスター」
「ご主人様、私にも下さい!!」
「こん、私にも!!」
「はいはい」
俺は、せんべいを取って3人に渡す。皆で音を響かせながら、せんべいを食べた。悪くないなぁ、こういうのも……。ふぅ、お茶が美味しい。
「サンサさーん、居るかい?」
「うん?居るよー!!」
何やら玄関先から声が聞こえる。サンサさんがその声に答えると、足音がこっちに近づいてきた。暫くすると、足音の主は俺達の前にやってきて止まる。その人は、顔から察するに、気の強そうな少女だった。アリーより、気が強そうに見える。やばいな……。頭には布を巻いて、髪は三つ編みのおさげか。軽く見た感じ、ちょっと鍛えてる感じかもしれない。まぁ、マッチョってほどではないけど、普通の女の子よりは力がありそうだ。
「あれ、女性ばっかだね。いつもの筋肉たちはどうしたの?あと、サラサいるじゃん。帰ってきたの?」
「ああ、リサ。今日帰ってきたんだ」
「ふーん、まぁ、お帰り。あっ、それでなんだけどサンサさん。ちょっと設営に人手が足りないんだけど、手伝ってもらえるかなぁ。あとで、うちの屋台でおごるからさぁ」
「うーん、まぁ、良いよ。今日は機嫌がいいんだ。ぱっぱとやっちゃおうかね」
「やりー!!さぁさぁ、行こう行こう!!……良かったら、サラサも来てくれないかなぁ。ほんと、準備が遅れててさぁ」
「仕方ないな……」
「やったー!!」
「それじゃあベイ。ちょっと行ってくるよ」
「……ベイ、私達も行ってみない?祭りの準備なんて、そうそう見れるものでもないし」
そう、アリーが提案してくる。俺としては全然構わないが……。
「ああ、駄目駄目。あんた達、明らかに力なんてないでしょう。力のない子は、来るだけで邪魔だからね。来ちゃ駄目だよ」
そう、リサと呼ばれた少女は言う。
「いや、リサ。この人達は……」
「ほう、このミルクが居るのにもかかわらず、力がないと言いますか。どうやら、分からせる必要があるようですね」
ミルクが、俺から降りて立ち上がる。間違いなく、この中で一番のパワーファイターだ。だが、その見た目では、その力を見極めるのは難しい。というか、無理。
「へー、あなた、力に自信があるのね。その小さな身体で?」
「ふっ……」
「へっ?」
リサのやすい挑発に、ミルクは乗るようにしてリサを押す。しかも指先で。勿論、リサは少し吹き飛んだ。それを、サラサがキャッチする。
「えっ?」
「流石ミルクさん」
「これで分かったでしょう。むしろ、貴方のほうが足手まといと言う感じなんですよ。私達レベルになるとね」
「嘘、あり得ない」
「世の中は広いんだ、リサ。さぁ、行こう。アリーさん達も、ベイも」
「そうね。行きましょうか」
「ああ」
まだ、驚いて固まっているリサをサラサが担いで、俺達は町へと降りていく。町の中央付近に行くと、巨大な木造の建築物を作っている途中だった。その付近で、サラサは止まる。
「おーい、リサー!!」
「父さーん、サンサさん呼んできたよー!!あと、おまけの人達も!!」
「おまけ……」
ミルクは不服そうだが、実際着いて来ただけだしな。それで違いないだろう。しかし……。
「この建築物は何だ?何かの物見台か?」
「まぁ、そんなもんだよベイ。これで、倒した熊の大きさを測っていくんだ。祭りのメインイベントに、欠かせない大事な建築物だよ」
「なるほど。しかし……」
「デカイだろう。私も、そう思う。だが、あれぐらいの熊が、普通に出る祭りなんだ。あれぐらいないとな……」
「……、マジかよ」
あれぐらいデカイとか、どんな熊だ。普通の熊があの大きさになるとして……。……片腕で、人間まるごと潰せそうだな。化物過ぎる。
「サンサさーん、ここまでその木材を運んでくれー!!」
「分かったー!!」
「何だ、そんなことですか……。ミズキ」
「ああ」
ミルクの合図で、たちどころに木材が宙に浮かぶ。後は自動的に、指定された位置に木材が積み重なっていった。まぁ、ミズキが水の糸でやったことなんだけど。はためには、そう見えるだろう。
「!?」
「おおー、凄いねぇ。あんたら、魔法使いだったのかい」
「いや、ニンジャです」
「に、ニンジャ?」
また1つ、ニンジャミズキ伝説を残してしまったようだ。有名になるな。
「なんだか分からんが、ありがとー!!」
「さぁさぁ、ご主人様。仕事も終わったようですし、少し見て回りましょうか」
「ああ、そうだな」
「え、嘘。もう終わった。はやっ」
「リサ。この人達は、そういう人達なんだ。侮らない方がいい」
驚くリサを尻目に、俺達は、別の気になる建物へと移動していった。
作者誕生日による、月曜特別更新