祭り内容
「うん?」
家に入って行くと、マッチョマン達が荷物を持って出て行く。どこかに行くんだろうか。随分と大荷物だが。
「さて、俺達はそろそろ行くとするよ。思わぬ強敵が出てきたみたいだし、頑張らないとな」
「ああ、頑張るんだよ、あんた達」
「任せてよ、母さん!!」
「ベイ君、また手合わせしような」
「……ここらへんの女には気をつけろよ。めっちゃ怖いからな」
「うんうん、そこは覚えておいたほうが良いな。……気をつけろよ」
「あ、はい……」
そう言うと、マッチョマン達は出て行く。何だろう? そんなにここらへんの女性は怖いんだろうか。彼らの反応を見る限り嘘ではなさそうだ。ちょっと覚えとくか。というか、何処に行くんだ?
「たく、うちの子達の女性恐怖症には困ったもんだね。まぁ、ここらへんは気が荒い女性しか居ないから、ああなっちまうのも仕方ないとは思うんだけど……。あんなんで結婚できるか不安になるねぇ」
「はぁ……、そうなんですか」
サンサさんみたいな女性が多いってことだろうか? マッチョな女性がいっぱい……。あまり想像できない光景だな。いや、気が荒いだけでマッチョではないかもしれないが。
「にしても、かなり女性が多いね。それに、只者じゃない雰囲気の子がちらほら……。うちの子たちじゃないけど、私もちょっと動きたくなってくるお客様たちだ……」
「いや、やめとかれたほうが良いかと……」
皆手加減してくれるとは限らないからな。レムやミズキ、ミルクなら問題無いだろうが。シデンやカザネなら、確実に一撃は入れてくるだろう。危ないくじ引き過ぎる。
「うーん、かもしれないねぇ。さて、ここに座ってな。今、お茶を入れてくるから」
「あ、ありがとうございます」
俺は椅子に座らされる。居間かな、ここは? 向かいにはサラサが座っていた。そして、皆も周りの椅子に座って行く。椅子が少ないため、フィーやシデン、ミルクは俺の膝の上や肩に座った。何だろう、凄いホッコリする。ロリっ娘天国だ。(ただし、1人は強烈な爆乳)
「ご主人様もふもふ、もふもふ」
「あはは……」
シデンが俺の頭をもふもふしながら、熱心に匂いを嗅いでいる。大丈夫か、これ?
「むっ、負けてられませんね!!ご主人様、私をもふもふして下さい!!そう、ここに丁度いいもふもふ出来る膨らみが!!膨らみが!!」
「いや、他所の人の家だから、自重しようねミルク」
「マスター、その、私も……、もふもふ」
「フィー……」
フィーが照れながら、俺の胸に顔を埋めてくる。可愛い。俺は、フィーとミルクの背中を抱くようにナデナデした。今はこれで我慢してもらおう。
「お、仲がいいねぇ。はい、お茶。サラサも、これぐらい頑張らないと」
「はい、母さん」
「それはそうと、このタイミングで来たってことは、祭りに出るってことでいいんだよね。サラサ、話はしてあるのかい?」
「いえ、詳しい内容はまだ」
「そうか……。じゃあ、その話からしないとね。この周辺にはね、暑くなってくると大量発生する生物がいるんだ。いつしか、そいつらを狩るための激闘が興奮を呼び、祭りにまでなったっていうのがこの祭りの始まりさ」
「……ある生物ですか」
「ああ、その生物っていうのはねぇ……」
サンサさんが床に目を向ける。俺も目を向けると、そこには大きな毛皮の敷物が置いてあった。……これってもしかして。
「熊ですか?」
「そう、熊だ。繁殖期を終え、食べるものを探しに来る連中が、この周辺にある一定時期に大量に出てくる。そいつらを一網打尽にしてしまおうっていうのが、このお祭りなのさ。もっとも、ただの熊じゃないけどね」
「というと……」
「まぁ、魔物なんだと思うんだけど。普通の熊って、大きな集団で現れたりしないだろう。それで、何か違うと思って昔に調べたらしいんだよ。それで、魔物らしいって判断が出たんだってさ」
「なんか、あやふやですね」
「まぁ、なんて言うのかね。魔力で出来てる部分が少ないというか……。まぁ、ぶっちゃけ食えるんだよ。なんら生物と変わりがないのさ。まぁ、見た目は普通のよりかなりでかいけどね」
「……魔力で強化された熊ってことかしら?」
「さぁ、難しいことは私は分からないね。ともかく、巨大な熊を倒す祭りとだけ覚えておけば大丈夫だろう。ちなみに、一番大きな熊を倒した奴には、豪華賞品が出るからね。期待してると良いよ」
豪華賞品かぁ。熊を狩ってもらえる物ってなんだ? 鮭とかかな?
「去年は、近くの鉱山で取れた宝石を散りばめたネックレスだったね」
「はい。その前は、金で出来た熊の置物でした」
「宝石!!金!!」
「ロデ、よだれ出てる、よだれ」
ロザリオが、ロデのよだれを拭いている。というか、ガチで豪華な商品なわけだな。普通に金銭的に価値のある物って訳だ。
「ここらへんの鉱山は、熊に荒らされることが多くてね。この祭りのおかげで、被害が少なく済んでるって言うんで、こんないい商品が出てくるのさ。ちなみに、去年の商品も、その前の商品もうちの連中が貰ったんだけどね」
「へー、そうなんですか」
「やる時はやる連中なんだよ、うちのわ。今日出て行ったのだって、祭りに備えて訓練をしに行った訳だからね。祭りの日に戻ってくる頃には、バッチリ戦闘態勢に入ってるだろうさ」
「なるほど」
あのマッチョマン達が戦闘態勢に……。凄そうだな。
「そしてもう一つ、重要な役目をうちがしててね。熊がいつこっちに来るか、見に行く斥候の役目もしているのさ。あいつらが帰ってくる頃、空に合図の火花が上がる。その合図から、一日後が祭りの開始になるのさ。今は、それに合わせて街で準備が進んでる頃かね」
「色々な出店や、限定のおみやげなんかも出ている頃合いだ。回るのも楽しいぞ、ベイ」
「ああ、なら、後で皆で行こう」
「そうね。落ち着いて観光するのって、良いと思うわ」
皆が頷いている。本当は、ロデの家で買い物ができればよかったんだけど、出来なかったからな。ここでは、ゆっくりしたいもんだ。
「うちの男臭い連中が出ていたからね、女子のお客様は存分にくつろぐと良い。寝る場所はどうするかなぁ……」
「ああ、お構い無く。寝る場所は、持ってきてますので」
「うん?そうかい。なら、休む時だけうちを好きに使ってくれて構わないよ。……あと、学校でのサラサのことを教えてくれないかねぇ。この子、そういうこと話したがらないんだよ。もう、母さん心配で心配で」
「か、母さん!!」
「くすっ、良いですよ」
お茶を味わいながら、レラが学校での話をしていく。その話を横目に、俺は皆とゆっくりくつろぐことにした。