表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・六部 攻撃魔法のスペリオ家
242/632

反対理由

「長老は、なんで駄目だと思うのかな?」

「うむ……」


 ライアさんが次に話しかけた人は、反対している人の中で、一番年を取っているおじいさんだった。只者ではない雰囲気が、びんびんする。


「ライアの説明で、この子にあの魔法が必要なことも分かった。使って役に立ったのか教えてもらえるのなら、わしらとしても都合がいい。是非とも、あげたいところなんじゃが……」

「なんじゃが?」

「……誰が取りに行くんじゃ、あれ?」

「誰って、そりゃあ、私と長老と大黒柱軍団でしょうよ」

「だと思ったわい。と言うか、ワシはお前に家長を明け渡したから引退したようなもんじゃ。あんな場所に行ってみろ。余生も何もなく、死ぬぞ。簡単に死ぬぞ?」

「またまた~、暴風と呼ばれた魔術師が何を言って……」

「いやいやいや、年取ると体力とかやばいんじゃよ!!それに、魔力だけではどうにもならんこともあろうて。あんな場所じゃしな……」

「えー……」


 ライアさんは、腕を組んで考えている。暫くして、もう一度長老に向き直った。


「長老は、呪文覚えてないんですか?」

「ワシ、あれを前出した時は、神魔級魔法とか使えん実力じゃったからなぁ……。使えもせんわい……」

「ええー、まじ。長老、使えなかったの?あれ、前に取りに行ったのって、一体いつよ」

「さて、70か、60じゃったか……。まぁ、そんぐらい前じゃ」

「ああー、それじゃあ、神魔級魔法とか使えないわね。流石の長老でも」

「面目ない……。覚えとりゃあ良かったんじゃが、なにぶん昔過ぎることじゃからのう……」

「それだけ時間があけばねぇ……。良し、私と大黒柱軍団で行きましょう!!」

「いやだー!!」

「死にたくないー!!」


 左側に移動したすべての男性陣が、ライアさんの言葉に反対の意を示した。もしかして、反対している理由って、そう言う……。


「お前らは、それでも一端の魔法使いか!!神魔級魔法も使えるくせして!!」

「ライアさんみたいに、あんなポコポコ使えません!!」

「行ったら死ぬ気がします!!」

「妻と子供を置いて、逝きたくない!!」

「……ガチで切実な言い方ね」

「はい!!」


 ……そんな危ない所に、魔法は置いてあるんだろうか? 一体何処だ?


「あの~、場所さえ教えてもらえれば、自分で取りに行きますけど……」

「君、死ぬ気か!!」

「ヒイラちゃんが、悲しむだろう!!」

「やめときなさい!!」

「……」


 いや、マジで必死な引き止め方だな。ちょっと、俺も怖くなってきた。だが、場所も聞かずに行かないと決めるというのも、おかしい気がする。ともかく、聞き直してみよう。


「一体、何処にあるんですか?皆さんがそんな怯えるような場所とは、一体……」

「……はぁ~、神魔級迷宮よ。ベイ君」

「神魔級迷宮ですか……」

「そう。ちょっと、特別な場所にある迷宮でね。うちの家の人以外は、多分あることも知らない迷宮だと思う。そこに、先祖代々の魔法を書き記した書が、置いてあるわけ。取りに行くの面倒だよねぇ……」


 いやいや、面倒どころの話じゃないと思うんですけど。そりゃあ、誰も行きたがらないわ。普通に死ぬし。というか、なんでそんなとこに隠したのだろうか。いや、かなり厳重な自然の警備に守られてはいるけども。取りに行くのが、命がけ過ぎる。


「まぁ、あそこに行けないような奴には、不要な魔法ってことでしょう。そんだけ魔力消費も、威力も高いと……」

「なるほど。そうですか……」

「にしても、あんなとこに置かなくてもねぇ……。今回で、持って帰ってこようかしら。その方が便利だし」

「そうですね。それが良いと思います」

「……もしかしてベイ君、行く気?」

「ええ、はい」

「……うーん、ヒイラちゃんの婿は優秀だなぁ。それに比べて、うちの大黒柱軍団は……」

「そんなこと言われても……」

「命は惜しい……」


 あなた達は、ある意味では正しい。それに、必要なのは俺だしな。俺のために行って、死なれたら気分が良くない。俺が行くべきだろう。修行にもなるし。


「良し、それじゃあ、私とベイ君で行こう!!」

「いえ、私達も行きます」

「おっ、カザネちゃんだっけ?かなりやばいよ?それでも良いの?」

「主人と共にあるのが、私達ですから。それに、丁度いい修行になるでしょう」

「おい、神魔級迷宮で修行とか言い出したぞ、あの子」

「常識はずれ過ぎるな……」


 スペリオ家の皆さんはかなり怯えているが、うちの嫁達は堂々としたものだった。前は怖がっていたシデンですら、やる気をみなぎらせている。さて、どうなるかな……。


「まぁ、そうね。確かに、良い修行になりそうだわ」

「え、アリー、何を言って……」

「私は正妻。そういうことよ、ベイ」


 ……いやいやいや、何言ってるのアリー!!!神魔級迷宮だよ!!何があるか分からないよ!!しかも、アリーは普通の、いや、超天才魔法使いだよ!!……あれ、字面的にはいける気がするなぁ。でも、無理だよ!!残るのが妥当だよ!!


「わ、私も……!!」

「あらー、ヒイラちゃんも隅に置けないわねぇ。でも、やめといたほうが良いんじゃないかなぁ。行っただけで、戦意削がれちゃうかもしれないし……」

「ふむ、私も行くべきだろうか。レラさん……」

「いや、やめといたほうが良いよサラサちゃん。お父さんの話だと、近接戦闘主体の戦い方をするなら、神魔級は最悪と言っていいほどの鬼門になるって言ってたからね。侮って行かないほうが良いと思うなぁ。それに、フィーちゃん達に守ってもらう負担を掛けたくないし」

「まぁ、そうですね……。残念ですが」


 うーん、俺は頭を抱えて唸っていた。アリーを連れて行く? 神魔級迷宮に? あり得ない選択肢がいきなり出てきて、脳がパニック状態を引き起こしている。こういう時は、冷静な人に聞くのが一番だろう。


「どう思う、ミズキ?」

「そうですね。アリーさんなら、入るぐらいなら問題ないと思いますよ。かなり身体が強張り、動きが鈍くなるでしょうが、私達がいるので、そこは心配ありません。問題は、ヒイラさんですね。正直、入れるか微妙じゃないでしょうか。迷宮前で、体調を崩す場合もあります。あまり、お薦めは出来ませんね」

「そ、そうか……」


 あそこに入れるってだけでも凄いんだが、流石に通常通りでいるのはアリーでも無理か。で、ヒイラはよした方がいいと。


「それじゃあ……」

「……」


 ヒイラが、俺のローブの裾を掴んでいる。行く気しかなさそう……。何故だ、何故そんなに今回は乗り気なんだ? 二人共危ないのに。


「スペリオ家の最強呪文魔法書とか、ヒイラ専用のパワーアップ魔道具すぎるわよね……。私も、ここらで無茶して、弾みつけとかないと追いつかれそうだし……」

「呪文を覚えて教えるのは、専属契約の魔法使いである私の役目だもん。だからベイ君、私も連れてって!!」

「……分かったよ。でも、ボスとは戦わないからね」

「分かったわ」

「うん!!」


 こうして俺達は、スペリオ家が管理している謎の神魔級迷宮に挑むことになった。さて、何属性神魔級迷宮なんだろうか。


「よし、それじゃあ準備しようか!!水属性神魔級迷宮に挑む準備を!!」

「…………み、水属性神魔級迷宮!!!!!」


 息が出来ない……。2人を連れて行くのはやめよう。俺は、そう思った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ