条件
「うーん、朝か……」
今日は、陽の光で目覚めることが出来た。皆は、まだ寝ているようだ。あれ? カザネがいない?
「おはようございます!!主人!!」
ジャキーン!! とでも言いそうな勢いで、カザネが俺の肩に着地した。カザネの太ももが、優しく俺の頭を包み込む。ああー、いい感触だなぁ。最高!!
「おはよう、カザネ。朝から元気だな」
「今日こそは、主人と過ごすと決めましたからね。今日は、このまま離れませんよ」
「え、マジ?」
「マジです!!」
ということは、今日は一日太もも最高デーか。……ありだな。というか、カザネの足が良すぎるのがなぁ……。なんだろう、この弾力。このフォルム。うーん、良いね。それしか言えない。俺の好みに合わせて進化したんだろうか。そうとしか思えない魅力的な足だ。膝枕とかされたい。多分最高だろう。いや、確実にか……。
「うーん、おはよう、ベイ君」
「おはようございます、ライアさん」
「ベイ、おはよう」
「おはよう、アリー」
続々と皆が起き始める。そのまま布団を片付けて、朝食を食べに行った。その間も、カザネは俺の上から降りようとしない。しかも、カザネが上機嫌で俺の上に乗っているので、誰も降りたほうが良いとはいえなかった。むしろ、俺も嬉しい。重くもないし。
「でね~、ベイ君。昨日言ったことなんだけど、ちょっと皆に話をつけてくるから、ちょっと待っててくれる?」
「はい、ライアさん」
そう答えながら俺は、野菜スティックにタレを付けて、カザネの口に運ぶ。嬉しそうに、カザネは野菜スティックを食べていた。
「んふふ~」
それから、1時間半ほど待たされただろうか。帰ってきたライアさんに呼ばれ、俺達は、中庭に出ることになった。そこには、ヒイラの家の方々が勢揃いしている。お、多いなぁ。こんなに居たのか……。名前覚えるの大変そうだ……。
「さて、教えてもいいと思う人は、右側に、駄目だと思う人は左側によってね」
「「「「はーい!!」」」」
ライアさんがそう言うと、俺に魔法攻撃をして来た子供達が、一斉に右側に移動していく。良い子たちじゃないか。相手したかいがあったな。
「……」
大多数は、別に教えても良いんじゃない? みたいな顔で、右側に移動していく。だが、10人ほど左側に移動した。多数決的には、これで教えてもらえそうだが。果たして、多数決なんだろうか?
「まず、ヒイラとの結婚を認めない」
「!?」
「貴方!!」
「痛い!!暴力はやめてくれ母さん!!暴力は!!」
ヒイラのお父さんか。やめてくれよ、愛し合ってるんだよ。許してよ。そしてお義母さんは、右側から移動してお義父さんに殴りかかってた。あれは、全力の殴りだな。痛そうだし、間違いない。あ、ライアさんも、飛び蹴りを入れた。
「娘が、この人がいいって言ってんのに、あんたがそんなことでどうするの!!娘の幸せを、考えてるの!?」
「痛い!!ライアさん、そりゃあ当たり前ですよ!!だからこそ、こんな朝から他の女性とくっついているような奴では、俺はイカンと思ってですね!!」
「このお馬鹿!!」
「いだい!!」
ライアさんの回し蹴りが炸裂する。痛そう。
「彼女の顔を見てみなさい!!あんなに幸せそうでしょう!!ベイ君は、それだけ信頼出来るという紛れも無い証拠よ!!しかも、ベイ君は嫌がりもせず、只々彼女のために彼女を乗せ続けているのよ!!それのどこが悪いっていうのよ!!むしろ、期待に答えているいい男でしょう!!あんただったら、嫁さん2時間も肩の上に乗せてあげられる?無理でしょう!!」
「……ぐぐぐ、俺の母さんへの愛があれば、2時間位……」
「あなた……、嬉しいけど、見栄を張るのはやめましょうね」
まぁ、普通だと無理だろうな。俺は鍛えてるし、慣れてるから大丈夫なんだが……。あと、この太もも空間最高。
「し、しかし!!うちは、スペリオ家だ!!魔法の実力もみずして、婿にするとか決めるわけにはだなぁ……」
「この前の試練の時に、ベイ君がどれだけ魔法を磨いてきたかは分ったでしょう!!それに、私の風炎魔神を倒したのよ!!並どころか、最高じゃない!!何処に不満があるわけ!!」
「い、いや、それはですねぇ……」
ヒイラのお父さんは、何か考えている。そして、閃いたようにこう言った。
「いかに魔力保有量が多く、ライアさんの風炎魔神を倒せるほどの魔法を持っていたとしても、長時間その実力を維持できないのでは、意味が無いじゃないですか」
「ふ~ん、と言うと……」
「つまりですね、俺は、彼の魔法に対する集中力。つまりコントロールが見たいわけです。それも、長時間のね」
「長時間ねぇ……」
「はい。……そうですねぇ。風魔法を使って、地面につかないように浮いたままでいるというのはどうでしょう?それを見てから、結婚云々は考えるということで……」
「ふーん、……何分くらいさせるの?」
「そうですねぇ……、最低でも2か月は浮いていられるくらいの集中力が欲しい……、たわばぁぁぁあああああああ!!!」
ライアさんの蹴りが、ヒイラのお父さんの腹に突き刺さった。背中からは、お義母さんが蹴りを入れている。これは、痛い。
「自分が出来もしないことを、人に押し付けるな!!」
「ひゃい、すいません……」
「お父さん……」
「ヒイラ、ツッコミに魔法はやめておきなさい。洒落にならないから」
「土魔法だから。手加減して打つから」
「……なら、良いんじゃない?」
「ロックブラスト!!」
「アーーーーー!!!」
……なんだか、可哀想になってきた。しかも、誰もヒイラのお父さんを助けようとしない所がまた……。まぁ、あの3人を止めに入る勇気はないか。特に、ヒイラが攻撃するってよっぽどじゃないかと思うんだけど。たぶん、家族の皆さんもそう思ってるんだろう。もう、お義父さんが全面的に悪い的な雰囲気を、皆さん纏いつつある。
「に、2時間、2時間でいいです……」
「2時間ね。そういう訳だからベイ君、悪いけど一応してもらえる?これが出来たら、もう、こいつに文句言わせないから」
「えっ、ああ、はい」
俺は、ライアさんに言われた通り、風魔法で浮いた。慣れたもんだな。カザネを乗せたままでも余裕だ。
「……バッサバッサ」
俺の肩の上で、カザネが手を羽のように動かして、飛んでいる動作をしている。……シュールだな。
「すげー!!あの姉ちゃん、手を羽の代わりにして浮いてるぜ!!しかも、人一人担いで!!」
「本当だー!!すごーい!!」
「あれは、風魔法よ。あのお姉ちゃんは、腕を動かしているだけ」
「なーんだー」
子供達が、何故かノリよく反応してくれた。嬉しかったのか、カザネはより楽しそうに腕をバタバタさせている。うーん、可愛い。
「それじゃあ次の人に、なぜ駄目か聞いてみよう!!」
ヒイラにやられて倒れた、ヒイラのお父さんをほっといて、ライアさんは話を続けた。