夫婦喧嘩
「よーし、用意は良いかぁー!!せーの、撃てー!!!!!!」
「「「「「「「応っ!!!!」」」」」」」
ライアさんの合図で、俺に向かって大人達が魔法を放ち始める。属性も様々だし、その威力も、同時発射数も、どれ一つとして同じ放ち方をしていない色とりどりの威力の魔法攻撃が、俺に向かって飛んで来た!! ああー、マジで手加減という言葉を、どこかに置き忘れてきたかの様な攻撃だな。降り注ぐ魔法の雨あられを見ながら、俺はそう感じた。……いけない、さっさと対抗策を出さないと。
「よっと……!!」
腕を持ち上げる動作をして、そのイメージで下から土を生やし、岩の壁を築く。分厚い岩の壁が、魔法の雨を受け止めた。でも、まぁ……。
「これ、そんなに持たないな……」
既にヒビが入り始めている岩の壁を見ながら、俺はそう思った。俺は、壊れそうな岩の壁の左右に、また同じような壁を展開して、そのどちらかに移動し、隠れる。これで、少し相手の狙いを逸らすことが出来るだろう。楽になるはずだ。
「おっ、考えたねぇ、ベイ君。こっちから見えないから、何処にいるのか分からないという訳だ。でもねぇ、何も素直に壁を崩していかなくても、攻撃は出来るんだよ?」
「くらえー!!娘はやらんぞファイヤー!!!」
!!!!! お義父さん!!! 今の、ヒイラのお父さんですか!!! それと同時に、壁を飛び越えて大きな火の玉が降り注ぐ。俺は、同数の水の弾丸を当てて、その攻撃を防いだ。
「娘をよろしくお願いしますサンダー!!!」
!!!!! お義母さん!!! 今度は、お母さんですか!!! 地を這うように、電撃が俺に向かって伸びてくる。俺は、土魔法で小さな台を作って、その上に飛び乗り、攻撃を凌いだ。
「母さん!!ヒイラが、嫁に行っても良いのかウォーター!!」
「貴方こそ、ヒイラちゃんがお嫁にいけるチャンスを、無駄にする気ですかウォーター!!」
……どうやら、夫婦喧嘩が始まったようだ。向こうで2人は、水魔法を撃ち合っている。まぁ、これで2人分の攻撃を受けないで済むな。楽になった。
「こらこら二人共ー!!はぁ、しょうが無いなぁ……。まぁ良いや。残りの皆は、真面目に頑張ってねー」
「「「「「応っ!!」」」」」
と言っても、まだまだこの攻撃は続きそうだな。はぁ、やれやれ……。結局、俺は三十分間程、飛んだり跳ねたり、魔法で相殺したり防いだりして、その攻撃を防ぎきった。
「くっ……、はぁ……、はぁ……」
「全部、防がれた……」
「私達の攻撃を、一回も受けないなんて……。将来有望ね……」
「負けたぜ、ヒイラちゃんのボーイフレンド。ユーの勝ちだ」
「こっちはヘトヘトだっていうのに、涼しそうな顔してやがる。化物かよ……」
良し、どうやら終わったようだ。まぁ、軽い運動にはなったかな。魔法の練習も出来たし、こういう訓練もたまには良いかな。ちらっと見ると、少し離れた所で、まだヒイラの父さんと母さんらしき人物が、水魔法を撃ちあっていた。でも、両方ヘトヘトだなぁ。あっちも、そろそろ終わりそうだ。……あっ、両方倒れた。ナイスファイト、お義父さん、お義母さん。
「パチパチパチ~、いやぁ、凄いねぇベイ君。ここに来て最初の試練を、こうも易易と乗り切るなんて、今までに見たことのない強さだよ。大抵は、男性でも女性でも、鍛え直してきます!!って言って、帰って行くんだけどねぇ」
「……」
何と言うか、激しい一族なんだな、スペリオ家は。結婚一つで、ここまでの事をやらされるのか。愛が試されるな。……ああ、そういう方式の試練か。なら、よく出来てるかもしれん。
「さぁさぁ、少し動いて汗もかいたでしょう。もうすぐ日も暮れてくるし、先にお風呂入ちゃえば?ほらほら、ヒイラちゃんも、未来の旦那さんをご案内して。うちのお風呂はでっかいから、ゆっくり出来るよ。きっと、ベイ君も気に入るはずさ」
「ああ、はい!!べ、ベイ君、行こう……。レムさんも」
「分かった。だがヒイラ、そうかしこまらなくていい。同じ男性を、愛する者同士じゃないか。レムでいい」
「……はい!!」
そして俺とレムは、ヒイラの案内でお風呂場に向かった。
「へー、広いなぁ」
「そうですね、主」
銭湯並みの広さの、湯船がそこにはあった。まるで温泉だな。そう言えば、住んでいる人数がかなり多いんだっけか?それで、この広さなのかもな。納得だ。……にしても。
「どうかしましたか、主?」
「レムとお風呂というのは、初めての体験だな」
レムは、借りた手ぬぐいで大事な場所を隠して、俺の隣に立っていた。もう少し動けば、大事な場所が見えそうな絶妙なバランスで、その場に立っている。しかも、湯船の熱に当てられているのか、顔が少し赤いのも、凄く可愛くて大変よろしい。
「そうですね。お背中お流ししますよ、旦那様」
レムは、嬉しそうな表情で、俺にそう言って答えた。凄い破壊力のある言葉である。新妻レムが、ここに爆誕したと言っても過言ではない。それぐらい、今のレムは色気のある表情をしていた。
「!!!!お、おう。よろしく頼む」
レムから発せられた予期せぬ言葉に、俺は思わず動揺してしまう。レムも、言うようになったなぁ。初めの頃が懐かしい……。いいお嫁さんになるなぁ。そう思わずにはいられなかった。
「あの、私も入ります!!」
「おっ、ヒイラ。大丈夫なのか?」
「はい!!レムが入っているのに、私が入らないなんて、言ってられませんから……」
最初は、ヒイラは恥ずかしいから後から入るという話で、俺が先に入ることにしたのだが。当然のように、レムは俺と一緒に服を脱ぎ始めた。焦って慌てるヒイラだったが、そのままごく自然に俺とレムは、湯船に向かっていく。それを、結局追いかけることにしたんだろう。一度出て行ったみたいだが、着替えを持ってきたのかな?ともかく、ヒイラも一緒に入ることにしたようだ。しかし……、やはりヒイラの胸はでかいなぁ。腕と手ぬぐいで抑えられているけれども、そのせいで零れ落ちそうなたわみ方をしている。うん、いやらしい。いや、素晴らしい!!そう思えるボディだ。
「おっ、やってるねぇ。嫁さん二人共、旦那さんに尽くす気満々って感じだ。良いねぇ」
「お、おばさん!!」
「ライアさん!!」
「えへへ~、ヒイラちゃん、成長したねぇ。特にこの辺とか、同じ家族とは思えないほどの違いだよ」
「あわわ!!」
ライアさんが、ヒイラのおっぱいをツンツンしている。……羨ましい。俺もしたい。だが、流石にヒイラのおばさんの前で、そんなことをするわけにもいかないだろう。と言うか、何で入ってきたんだライアさん?また、何か仕掛けてくるんだろうか?俺は、少し警戒しながらも、かけ湯をしてレムと湯船につかった。ああ~、癒される~。