スペリオ家での午後の運動
「あ、いや、おばさん。そんな前みたいな、無理な理想なんて……。私、持ってないし……」
「ふーん、本当かしらねぇ……。そもそも、アリーちゃんが正妻って言ってる時点で、かなり怪しいわよベイ君は。あのアリーちゃんが、興味をひかれる相手ってことでしょう?並以上、いや、天才以上じゃないと、そうはならないはずよね。あの子の場合……」
うーん、アリーのイメージ的に、そう思われても仕方ないんだろうか。だからって、安々と全属性の魔法使えます!! なんて言う訳にもいかない。召喚魔法も、隠しておきたいし……。
「……まぁ、魔法使いに奥の手があるのは、当たり前だから。言いたくないなら、言わなくてもいいけど……。どれか一つくらい、派手な魔法を、見せれるようにしといて欲しいわね。なんたって、この家はスペリオ家。魔法にうるさい家なんだから、何か一つくらい皆の前でアピールしてもらわないと、ちょっと困るわね。しかも、我が家の一番の将来有望な子の夫になるんだから、それぐらい無いと……」
「魔神創造、的な奴ですか……」
「そうそう、アレみたいなやつ……。って、知ってるの?魔神創造」
「はい。ヒイラと戦った時に、見せてもらいました」
「へー。それで、勝ったのよね……。なんだ、やっぱり天才以上じゃない。ヒイラちゃんの魔神創造を受けて負けてないなんて、その年じゃあおかしいわよ、ベイ君」
「……」
まぁ、そうだろうな。いや、サラサならあるいわ……。ともかく、並じゃあ無理だろう。焼かれて死ぬ。
「まぁ、もし、魔神創造を魔法で打ち破ったって言うのなら、その魔法を皆に見せるといいかもね。多分、皆に歓迎してもらえるわよ」
「そうですか」
「ええ、。家でも、トップクラスの魔法だから。それを破ったとなると、皆、目を輝かせて見るはず……。まぁ、期待しておくわ」
どうだろうなぁ。受けるかなぁ。あの時の魔法は、ほぼ魔神創造みたいなものだからなぁ……。微妙な気がする。
「さて、ベイ君が秘密主義ってことが分かったし。そこは、魔法使いの家の子と結婚する上で重要だから、とても良いことではあるんだけど……。結婚するのはヒイラちゃんなんだから、あまりヒイラちゃんに隠し事はしないであげてね。夫婦仲を円満にするためにも、お互いに隠し事があったらいいことにならないし。恥ずかしくても、ちゃんと打ち明けないと駄目だよ、ベイ君」
「はぁ……、はい」
「と言っても、結婚してない私が言っても、説得力がないかな。たはは……」
俺の秘密かぁ……。まぁ大体は、アリーが喋っちゃたからなぁ。ヒイラには、そんなに秘密にしてることがあるわけではないなぁ。後、言ってないのとなると、生まれが日本とか。ヒイラのおっぱいも好きだけど、尻も好きなんだぁ、とかしか無いな。まぁ、これは言わなくてもいいだろう。何事にも、線引は必要だ。
「ふぅ……、お菓子も食べたし、少しは落ち着けたかな。それじゃあ、ちょっと食後の運動と洒落込まない?ベイ君の、実力も見てみたいし」
「ひぃぃいいい!!」
「うん?どうした、ヒイラ?……まぁ、良いですよ。行きましょうか」
そして俺達は、外に移動する。少し落ち着いたとはいえ、さっきまでレラの父親と戦っていたばかりだからなぁ。体の、戦闘によって高まった熱が、まだ引いていない。ちょっと動いて、熱を冷ますには良い機会かな。そう思い、俺は外に出ると軽い準備運動をした。さーて、何をするのかな。
「おーい!!皆、出てらっしゃーい!!」
「「「「はーい!!」」」」
うん? ライアさんのその声で、玄関から4人の子供が走ってくる。皆、魔法使いのような服装と杖を持っていた。一緒に、練習でもするのかな?
「紹介するわ、ベイ君。うちの家の子供達よ」
「「「「よろしくお願いしますー」」」」
「ああ、どうも。ベイ・アルフェルトです。よろしくお願いします」
うーん、男子2人、女子2人か。バランスが良いな。……はて、しかし何だか、さっきのよろしくお願いしますの言い方に、少し違和感を覚えるなぁ。もしかして、俺と何かするのだろうか?そんな感じの言い方に取れた。まるで、先生に教えを請う生徒のような言い方だ。
「今日は、このお兄ちゃんが私の代わりに、魔法の攻撃を受けてくれるから、思いっ切り撃ちゃって良いわよ!!」
「「「「はーい!!」」」」
「……」
「そういうことだから、ベイ君、宜しくね」
ライアさんは、俺にウインクしてきた。えー、受けるだけかよ……。何だか、昔を思い出すなぁ。いや、昔も動きながら受けてたから、それに比べるとだいぶ難易度が低いなこりゃ……。まぁいい、付き合うか。この子達もヒイラの家族だし、それぐらい良いだろう。だいぶ、面倒くさいけど。
「それじゃあ、好きな時に撃ってきていいよ」
そう言って、俺は子供たちと向き合った。ながら作業でも出来るが、真剣に向き合ってあげないと子供達に嫌な印象をあたえるかもしれないからな。俺は、真面目に付き合うことにした。
「はーい、じゃあ、行きます!!」
4人すべての子供が、無詠唱で魔法を撃ってきた。しかも、どの子が撃った魔法も中級程度の威力で、普通の大人なら連続して受けるのも少しきついだろうという量の魔法攻撃をされた。しかも、子供達は遠慮がないので、4人同時攻撃とか余裕でしてくる。まぁ、俺にしてみれば軽いものだが……。
「なんでー?全然魔法が、思ったように出ない!!」
「ははは、それはお兄ちゃんが、魔法を相殺しているからだよ。良く見ないと、分からないから。意識を集中させてね」
「はーい」
ライアさんが、子供達にアドバイスを送る。しかし、ライアさんにお兄ちゃんって言われるの良いなぁ。可愛い妹が出来たみたいで、少し良い。まぁ、歳上なんですけども……。
「うっ、僕もう、限界……」
「私も……」
「お腹痛くなってきた」
「ううっ……」
「おっ、じゃあ、今日はここまでにしましょう。皆は、家に帰ってゆっくり休んでね」
「「「「はーい」」」」
そのライアさんの声で、子供達は家に戻っていく。辛そうだが、俺にお礼を言うのも忘れない。何だ、良い子達じゃないか。遠慮無く、魔法を撃ってくること以外は。
「さーてベイ君、次は、うちの大人達の相手をして貰おうかなぁ」
「はい?」
「「「「「「「よろしくお願いいたします!!」」」」」」」
子供達と入れ替わりに、明らかな大人の男女達が出てくる。しかも7人だ。さっきより多い。更に、どの人も魔法を使いまくったかのような、熟練者のオーラを出している。えっと、マジ……。
「頑張ってね、ベイ君」
「……」
目の前の大人達が、魔法の杖を構えた。ああ、これはさっきと一緒で、遠慮無しで撃ってくるな。そう、俺には察せた。