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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・六部 攻撃魔法のスペリオ家
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スペリオ家の人々

「本当に、豪邸だな……」

「そう?普通でしょう」

「おばさん……、それはないと思うんだけど……」

「いやいや、アリーちゃんの家と、同じくらいでしょう?これぐらい、有名な魔法使いの間では普通よ、普通」

「普通とは、いったい……」


 普通の概念が、壊れそうなほどの豪邸だった。ヒイラも言ったように、普通では無いんだろう。ここが、ヒイラの実家なんだよなぁ……。何か、圧倒されてきた……。庶民生まれだからな、仕方ないのかもしれん……。渡り廊下から、外の外見を、少し見ることが出来た。……ちょっとした、お城みたいな見た目してるな、この家……。ロデの家とは、また違った感じの豪華さのある家だ。


「まぁ、と言っても、住んでる人間が多いからね。この位大きくないと、不足する訳。だから、豪邸に見えるのかもね。一族の代々の家だし、魔法に関する設備も、一通り揃ってるのよ。そのスペースも、拡張したりして来たからね。まぁ、そこいらの家よりは、大きいかな……」


 そこいらどころでは、無い大きさな気がするんですが……。そのまま少し歩いて、ライアさんは、とある部屋の前でピタッと止まる。聞き耳をたてて、ゆっくりその部屋の扉を開けた。


「えっとー、ここで良いかな?……おしおし、誰も居ないわね。それじゃあ、少しここで待っててくれる。お茶を入れてくるわ。……あれ?1人、いないわね」

「ミズキなら、アリー達を迎えに行きました」

「そう、……転移魔法を使える、あんな奴がいるなんて、世の中広いわね。油断し過ぎも、いけないということかしら。いい教訓ね……。まぁ、ゆっくりしていてね」

「おばさん、私も手伝います!!」

「あら~、ヒイラちゃん、ありがとう。それじゃあ、行きましょうか」


 ライアさんと、ヒイラが部屋を出て、俺とレムだけが部屋に残される。……さて、これからどうしたもんだか。皆は、呼んだほうが良いよな? でも、今向こうがどうなってるか、分からないからなぁ……。念話して、聞いてからのほうが良いか。そう思い、俺は、フィーに念話を送ることにした。


「(あー、あー。フィー、聞こえるか?)」

「(マスター!!はい、聞こえます!!大丈夫ですか?)」

「(ああ、大丈夫だ。今は、レムとゆっくりしているよ。そっちの状況は、どうだ?)」

「(はい。今は、ロデさんとロザリオさんが、私達に同行したいという話を、両親としている最中です。その話が終わって、お2人の荷物の詰め込みが終わり次第、そちらに転移する予定です。……早く逢いたいです、マスター)」

「(ああ、俺もだよ。じゃあ、状況が進んだら皆とこっちに来てくれ、フィー。それまで、そっちのことは任せたよ。頼りにしてる)」

「(はい!!お任せ下さい!!)」

「(それじゃあ、また)」

 

 俺は、そう言うと、フィーとの念話を終えた。そして、部屋の扉の方を、ちらりと見る。


「……目障りですね。叩き伏せましょうか、主?」

「いやいや、彼らの家だろう、ここは。あれぐらい、良いんじゃないかな?特に、害があるわけではないし」


 そう、レムに促して、俺は風魔法で聞き耳を立てる。すると、扉の隙間から、こちらを覗いている者達の、会話を聞くことが出来た。


「あれが、ヒイラちゃんのボーイフレンド?」

「強そう」

「女性を、連れているじゃないか?ヒイラちゃんの、彼氏じゃなかったのか?」

「あの、ヒイラちゃんの彼氏だもの。他の女性にモテテても、不思議では無いわ。そういうことじゃないかしら?」

「うわぁ、複数人での結婚なんて、よっぽど出来てる人たちでもない限り、大騒動になるわよ……。ヒイラちゃんが、心配になってきた」


 ……はぁ。どうやら、ヒイラの一族の方々が、俺を品定めしているらしい。まぁ、いずれ顔を合わせるかもしれないから、これぐらいなら良いんだが……。せめて、堂々と出てきて言って欲しいものだ。覗かれているという感じが、ちょっと嫌だし……。おちおち、レムともいちゃつけない……。それどころか、レムが警戒心をむき出しにして、凛とした戦士の顔つきになっている。もうちょっと、リラックスしてもいいんだよ、レム。何も、敵地というわけではないんだから……。


「……こらー!!あんた達、何をやってるのー!!」

「うわぁー!!ライアさんだ!!逃げろー!!」

「いい大人が、覗きなんてするなー!!みっともない!!」

「ヒイラちゃんの彼氏なんて、気になるじゃないですかー!!」

「ごめんなさーい!!」


 ……どうやら、ライアさんと、ヒイラが帰ってきたらしい。しかし、慌ただしい家だな。ちょっと面白い。暫くすると音がやみ、ライアさんと、ヒイラが入ってきた。美味しそうなお菓子と、お茶を持って。


「お待たせー。ハーブティー、入れてきたわよ。このお菓子に、とても良く合うんだから。さぁさぁ、食べて、食べて」


 そう言うと、ライアさんは、我先にとお菓子を口に含む。幸せそうな顔を、しているなぁ。余程、美味しいんだろうか?俺も、お言葉に甘えて、一つ頂いてみることにする。……うん、見た目通り、クッキーだな。だが、とても良い香りがする。何かを、一緒に入れているんだろうか?確かに、これは美味い。


「レムも、食べてみなよ」

「はい。では、……いい香りですね」

「でしょうー!!このハーブティーを飲むと、更に香りが引き立つの。うーん、安らぐ……」


 くてっと肩の力を抜いて、ライアさんは、気の抜けた表情をしていた。だが、一瞬でまた、顔に気合を入れて、元に戻す。


「さて、さて、それじゃあ、聞かせてもらいましょうかね。ヒイラちゃんとの、馴れ初めってやつを……」

「あわわ……」


 ヒイラが顔を赤くして、ライアさんを見つめている。そうだなぁ、何から話そうか……。闘技大会からかな?俺は、取り敢えず、言っちゃいけないことを言わないように、要点だけを押さえて、ライアさんに話した。


「なるほどねぇ……。やっぱり、アリーちゃんのせいだった訳だ。まぁ、ヒイラちゃんも嫌じゃなさそうだし、そこはそれでいいかなぁ~」

「ほっ……」


 安堵したように、ヒイラが息を漏らす。だが、ライアさんは、いきなり立ち上がった!!


「でも、どうにもおかしい……。ヒイラちゃんの理想の相手は、およそ人では、体現不可能な魔法の使い手だったはず。……あんた、何者?」

「……」


 椅子の上に立って、精一杯俺を見下ろしているライアさんを見ながら、俺はどう答えたものかと、考えていた。



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