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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・五部 夏と商家の娘?と
224/632

???

**************


 そこには、とある迷宮が存在していた。その迷宮は、遠目にしか確認出来ず、生物が近づけば死ぬことで知られている。その一番下、最下層に位置する、山が大きく存在しているように見える空間。そこに、そいつはいた。


「…ああ、まだか…」


 寝起きたような声を出しながら、そいつはそう呟いた。その空間は、一面が宇宙のような不思議な空間だった。淡く光がさし、周りを見ることも出来るが、本当に何もない。地面もない。そいつは、その不思議な空間に浮いていた。あまりにも巨大な、岩の身体を揺り動かして。


「しかし、何もないのは退屈じゃのう…。まぁ、何もなくはないか…。上のバカどもが、毎日うるさいからのう…。魔力反応だけはうるさいもんじゃ…。じゃが、そんなもん、もう聞きたくないんじゃが…。はぁ…、ぶっ殺したい…。あのバカども…」


 そう言いながら、そいつは、また巨体を身動ぎさせる。どうやら、少しずつ大きくなっているようだ。


「しかし、この空間も広いのう…。もう、銀河系が指でつまめるほどの大きさになったはずなんじゃが…、まだ端につかんのか?…うーん、動いても中心に戻される謎空間じゃからのう。こんな難儀な方法じゃないと、端にたどり着かんのが面倒じゃな…。まぁ、それももうすぐか…。わしの魔力感知が、そう告げておる…。と言っても、もう暫く掛かりそうじゃが…」


 そいつの魔力感知には、近づいてきている檻の壁の魔力が確認出来ていた。それと同時に、上で騒いでいる奴らの魔力反応も、感じている。遠距離操作で、直接壁に攻撃魔法を当てているモノ、好き勝手暴れまわっているモノ。何もせず、力を蓄えているモノ。その動きは様々であった。だが、そいつにとっては、その全てが不快でしかなかった。もう、慣れてしまったが、それだけは変わらない。


「…しかし、変なことしとる奴が、一体おるようじゃな…。外に、魔力を送っとるんかの?それで、人間でも操っとるんじゃろうか?人間に手伝わせて、外に出るきかのう?やれやれ、面倒なことをするもんじゃ…。檻の壁に阻まれるせいで、だいぶ力を使わんと、外に魔力など送れんのに…。しかも、かなり極小じゃぞ…。まぁ、わしも、面倒なことをしておるがの…」


 だが、その面倒な作業も、もう少しで終わりだ。もう、壁は見えている。後は時間の問題だろう。そして、上の奴らを出し抜いて、自分が抜け出す。そう考えると、自然と笑みがこみ上げてきた。そいつは、誰も居ない空間で、1人にやける。


「所詮、檻よ。作られたものであるのなら、壊し方がある。それが通りじゃ。さぁて、もう少し寝るとするかの…。後ちょっとで、久しぶりの地上じゃ。やる気を蓄えておかんとな…。ふぁああああ…」


 檻、檻としてはるか昔に作られた、その魔法。人類の切り札によって、多くの化け物たちを、その中に閉じ込めることに成功した。だが、何時迄もその檻が完全で在り続けていられる保証はない。…化け物との遭遇。それは、残り少ない時間とともに、迫りつつあった…。


**************


「うーん、しかし、あんなにベイ君が強いとはなぁ…。こりゃあ、将来が楽しみだなぁ」


 ゲイルさんがそう言いながら、練習場を出て、受け付けで最後の手続きを済ませている。俺達も、練習場を出て、ロデの家に帰ろうとしていた。


「父さん、分かったでしょう?私が、ベイ君を押すわけが…」

「確かに、かなり有望そうな若者だ…。ロデ、頑張りなさい…」

「はい」


 …うーん、俺が聞かないほうが、良い会話のようだ。俺も、皆に続いてギルドの外に出よう。そう思い、俺もギルドの外に歩いて行った。


「うん?」


 すると、何故か皆が、ギルドの前で固まって動かないでいる。何だと思い、皆の目の前にいる人物を見た。


「はぁーい、アリーちゃん、ヒイラちゃん、元気ー!!」

「あわわわわわわわわ!!!!」

「おばさん…」

「もう、アリーちゃん。久しぶりなのに、おばさんはないでしょう。お姉さんって呼んで!!」

「…」


 どこからどう見ても、ロリ娘っだった。赤い魔術師服に、可愛いひらひらのスカートを履いている。だが、アリー達の態度を見る限り、俺達より年上らしい…。まじかよ…。


「じゃあ、久しぶりで色々話したいこともあるけれど、休み中に色々と修行を付けておきたいの。だから…、ヒイラちゃん、連れて行くね!!」

「あわわわわわ!!!」

「ちょ、ちょっと待って下さい、おばさん!!今、ヒイラにいなくなられるのは、困るんですけど!!」

「問答無用!!」


 突然、ロリ娘の姿が消えた。…まさか、転移魔法か。俺以外にも、転移魔法を操れる人間が存在していたのか。まじかよ…。そしてロリ娘は、ヒイラの背後に現れる。


「ひぃぃぃいいいいいいいい!!!!!」

「もう、ヒイラちゃん。さっきから、変な声しか出してないよ。それじゃあ、帰ろうね」

「いやぁ!!ベイ君、助け…!!!」


 ヒイラは、ロリ娘に肩を掴まれる。すると、即座に転移してその場から消えた。


「…」

「大変よ!!ヒイラが、拐われたわ!!!」


 戦闘も一段落して、ゲイルさんの商会で買い物でもしようかと思ったが、どうもそうは行かないらしい…。新しい面倒事の予感に、俺はため息を付いた…。



 

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