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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第一章・一部 召喚魔法使い ベイ・アルフェルト
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夜に思う

「主、今日から私も添い寝というものをさせて頂きたいのですが」

「……」

「じゃあレムは、マスターの右側ね」


 フィー、勝手に話を進めないでくれないか。と言うか、このベッドはそんなに広くないんだよ。大人一人用ぐらいなんだよ。


「駄目でしょうか?」


 若干不安そうにこちらを見るレム。あ~~、そんな顔しないで。それは反則だろう。断れない。


「かなりベッドは狭いぞ」


 僅かながらの理性で俺は、抵抗する。そう、ベッドは狭いのだ。ということは、必然的に皆が密着する形になる。フィーの提案どおりの陣形になるならば、俺は、フィーとレムの柔らかサンドイッチ状態になるだろう。幸いなのは、今日は色々あって疲れているということだ。早めに寝られればいいが。


「大丈夫です。私が、しっかり主を抱きかかえますので」


 言うや、実践するように俺を抱えるレム。頭が、頭に乳があたって……。落ち着け!!落ち着くんだ!!レムも人化したばかりだから、色々分からないのかもしれない。いや、でも、仲間のスキンシップを無下にするのもよくないよな。うん、いけないよ。下心がないわけじゃないけど。フィーとは添い寝してるのに、レムとはしないとかにして悲しませるのは論外だしね。


「(フッ、レムめ。私が美少女化したらやりたいことを、尽くやっていきますね。うらやましいいいいいいいいいいいいいいい!!!!)」


 ミルクは、嫉妬の炎に飲まれていた。


「(ふ~ふ~、おっと、いけません。むやみに感情に飲まれてはいけませんね。次こそは、美少女化しなきゃいけない訳ですから。はっ!!待てよ!!フィー姉さんが左側、レムは右側……。つまり、次に人化したら私のポジションは、ご主人様の股下。なるほど、一番デリケートなポジションを開けておいていただけるなんて。ありがとうございます。その期待に早く答えてみせます!!)」

「うん、皆で一緒にマスターと添い寝するの楽しみ!!」


 多分フィーは、ミルクの言ってるデリケート的な意味は、分かっていないと思う。というか、なんでそういうポジションになるんだよ!! 確かにベッドに収まるとしたら、もうそこら辺しか開いてないけど。何度も言うけど、このベッドは広いわけじゃないんだよ!! しかも、そこをミルクに陣取られたら、何をされるもんだか……。


「(ふふふ、楽しみですね。美少女化を急ぐ理由が、また出来ましたよ)」

「……」


 不安だ、不安で仕方ない。俺の安眠は、守られるんだろうか。ま、まぁ、なにはともあれ寝よう。今日は、疲れているんだ。早く寝たい。……が、案の定というか、いざ寝てみると俺とフィーとレムの距離感は、みっちりむっちりだった。それでベッドの横枠ギリギリだ。温かい。温かいが、少し動いただけでフィーの太ももや、レムの内股付近に手があたってしまう。……非常に、天国と地獄に近い。ちょっと触っただけで、すべすべでなめらかな感触が手に伝わってくる。まずい、非常にまずい。あと俺が少し動くと、うぅん、とか、ふぅう、とか甘く喘ぐのやめて欲しい。ミルクじゃないが、俺のデリケートがデリケートでやばくなってしまう!! だが、やはり疲れていたのか、少ししてなんとか眠りにつくことが出来た。危なかった。



 ベイが寝静まった深夜、風属性中級迷宮に巨大な影が現れた。その強さは、この迷宮の中で圧倒的なほどであり。存在を察知した魔物でさえ、近づかないことを選択するほどのものであった。


「(いやぁ~、全てが小さいですね。この新しい身体、でかすぎますよ。全く)」


 それは、ミルクであった。その横にもう一体、魔物が現れる。


「(うん?別に送ってくれるだけでよかったんですよ、レム。帰りは、念話しますし)」

「この迷宮に、すでにお前の相手を出来る奴はいないだろう。私で良ければ、相手になるが?」

「(ああ、それは助かりますね。一人で身体を慣らすよりは、身になりそうです。そういえば、お互い進化したのにあまり動いていませんでしたね。再度、自分の新しい力を確認がてら、手合わせも悪くないかもです)」


 巨体を動かし、身体を確かめるミルク。彼女的には嫌な体だが、この身体に慣れなければ次への進化は無いと彼女は思っている。


「主に言えば、普通に訓練させていただけるのではないか?こんな深夜にやらずとも」

「(いやぁ、やっぱり早く次の進化がしたいですし、出来ることからと思いましてね。出来る女は、自分を磨くもんですよ。まぁ、私の持論ですがね。それに、私の個人的なお願いで、ご主人様の行動を制限する気はありませんし。というか、したくないですし。あ、でも、やはり私もして欲しいことはあるので、いう時は言いますけど。今回は、私が強くなればいいだけですからね。ご主人様のお手を借りずとも、やれることはやっておきたいんですよ)」

「そうか……」


 レムも、身体を動かす。軽く動かすと、鎧を出現させた。全身が鎧に包まれ、禍々しいほどの力が周囲に漂った。迷宮の魔物たちは、その力に気づき出来るだけレムより離れようと迷宮の隅まで移動を始める。


「(ああ、やっぱり私と比べても段違いの強さなんじゃないですかね?あのいけ好かない黒甲冑を、楽々と超えてますよ。あの時一体化した私達並みに、一人でなってるんじゃないですか?)」


 レムは、鎧を着た身体の動作を確かめるように動く。そして新たな大剣と、盾を出現させた。どちらも黒く、スッキリとしたデザインだが、それぞれが強大な魔力を放っており、普通じゃないのがよく分かった。


「ふむ、私もここまでとは思わなかった。伊達に死ぬような思いをして得た身体ではないらしい。順当にいくと、今の私は聖魔級の魔物というやつだろうか。この力より、まだ上の魔物がいるというんだから世界は広いものだ」


 レムが軽く剣を振って確かめる。それだけで、周囲の木々が切れた。


「(……申し訳ないんですけど、剣無しでいいですか?何か危ない気がしますんで)」

「うん?ああ、分かった。確かにこれは、切れすぎるようだ。ミルクの硬化なら防げるだろうが、試すのはやめておこう」


 レムは剣を消す。盾を構えて、拳を握った。


「今日は、新しい盾の感覚になれるとしようか」

「(ああ、なんでちょっとした訓練のつもりだったのにこんなハードな展開に!!いいでしょう!! 痩せても枯れてもこのミルク!!パワーと耐久力には、自信があります!!レム!!楽に受けれると、思わないでくださいよ!!)」


 それが開始の合図になった。朝近く日が登るまでの間、迷宮には轟音が響き続けた。



 ベイが寝ている間、2人がいなくなったのに気づいたものが1人いる。


(ミルク、大丈夫かな?レムが付き添っているみたいだし、大丈夫だよね?)


 フィーは、1人ベイの隣に残っていた。2人が来てからは、より賑やかで楽しくなった。アリーは、今は少しいなくなっているけど、皆で主人を支えていけたらいいなぁ、とフィーは思っている。これからも仲間が増えるだろうと思うとそれだけでフィーは、嬉しくなった。だが今のフィーには、気がかりがある。


(進化、か……)


 一度は、自分も経験したことだが。ミルクもレムも、どんどん自分を追い抜く力をつけている。主人のためにも、自分が力をつけることは重要な事だ。フィーは、それが分かっていた。だが、力をつければつけるほど、主人に可愛がってもらえなくなるのではないか? という不安も抱えていた。だがミルクは、進化は自分の考え方次第で進化を決められるのではないかと言っていた。これからなるべき自分…。自分が、なりたい自分。それを考えながらフィーは、ベイを抱きしめ直し、風を読みながら再び眠りに入るのだった。 


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