第二回・水着親睦会4
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ベイは、これから自分に起こることに対して、身構えるので精一杯の状況であったが。女性陣達の脳内では、策の張り合いが続いていた。
(一体どうやって、ベイ君の番号を当てているんだ?何かの、サインがあるんだろうか?それを読み取る?いや、無理だな…。なら、別に自分で当てる方法を作ったほうが良さそうか…)
この王様ゲーム、ベイが思っている以上に、軽いゲームではない。何故なら、相手が断らなければ、相手を当てさえすれば、いかなるプレイも可能だからだ…。つまり、既成事実を作ることも可能となる!!ベイ自体が、断るという可能性もあるだろうが。そんなのは、可能性に過ぎない!!そう、ロデ・マルシアと、ロザリオ・フェインの頭の中は、どうやって皆を出し抜いていちゃつこうかと、必死に頭を回していた。
(くじの形を覚える?いや、どれも同じに見えるな。それに、少ない時間で確かめている余裕もない…)
(魔力でマーキングしておいて、そのくじの数字を覚えるとか…。でも、そんなの数個にしか出来ないし。ベイ様が、丁度そのくじを引いた時に、自分が王様に、当てられるように出来るかどうか怪しい…。それに、ズルがバレた時が怖そうだし…)
2人は、自分で出来る範囲の策略と、リスクを天秤にかけていた。頭の中で方針が決まらぬまま、ゲームは進んでいく。
「さーて、次の王様は?」
「はい!!私です!!」
どうやら、ミエルのようだ。彼女は、恐らく番号が分かっている側の人間だろう。先程の提案が飲まれているのならば、自分で言い出さずとも、いちゃつけるチャンスが有るはず…。そうロデは、甘い願望を抱きながら、何を言い出すのかを待った。
「え、えっと…、13番の人に、7と9の人が、お菓子を食べさせてあげるということにしましょうか」
「はい!!7番っす!!」
「9番は、私だな」
食べさせるのは、シスラとサラサのようだ。そして、当然のように食べさせられるのは、ベイである。やはり、ミエルは知っている側の人間だと、ロデは確信した。そして、自分ではないが、選ばれる人数は増えている…。少しまだ物足りないが、自分に番が回る確率が上がっただけ、良しとしよう…。ロデは、その手番で焦らず、次のゲームの為の、準備を進めた。
「はい、ベイさん。あーんっす!!」
「ほらベイ、こっちには果物もあるぞ。あーんだ!!」
(…)
まさか自分が、男といちゃついている他人の様子を見て、羨ましいと思う日が来るとは思わなかった。ロデは、そう思っていた。今まで、親や、他人のそういう場面を見ても、うざいとは思えど、羨ましいとは思わなかった。だが、今はどうだ…。自分が、子供まで産むと宣言した相手が、他の女性といちゃついている…。その様子を見て、自分もしたいという気持ちが、胸の奥から湧き上がって仕方なかった。
(独占欲とは違うのよね…。只々、羨ましい…。自分もしたい…。まさか、こんな気持になるなんて…)
しかも、この気持が心地よいと思っている自分がいる。恐らく、自分で分かっているのだろう。彼は、自分1人で独占出来るような人間ではないと…。だから、独占という欲が湧いてこない。自分もしたい、という感情になる。
(…やはり、私の理想の夫は、彼だ…。他の男では、こうはならないだろう。それに、彼の回りにいる女性は、個性的ではあるけれど、そこまで不快に思う人もいない…。…まぁ、少し前までは、ロザリオがそうだったけど…。女性になっているアイツを見ると、何だか、これがあるべき姿だなぁって思えて、前より不快に感じない。…不思議ね…)
ロデは、横に座っているロザリオを見る。ロザリオも、羨ましそうに、食べさせられているベイを見つめていた。少し前まであんな不快だったのに、今では、完全なる乙女の顔をしている。可愛い幼なじみという感覚が、ふつふつと湧き上がってきた。
(でも、元からこの顔なのよねぇ…、こいつ…。やっぱり、生まれる性別、間違えてるわ…)
ロデは、染み染みそう思った。
「良し、次行くわよ!!」
アリーの合図で、くじが戻されていく。ロデは、仕込みを終えて、次のくじを引いた。例え、水着といえど、ロデはアイテム使いである。隠すように、数種類のアイテムを持っておく備えなど、いつでも出来ているのだ。そして、このゲームに活用出来そうなアイテムも持っている。それは、ミラータートルという聖魔級魔物の、甲羅の粉末であった。
(ふふっ、この粉末は、魔力を弾き返すという特性を持っています。しかも、粉末を付ければ付けるほど、帰ってくる魔力は大きくなる…。その量を、アイテム調合で鍛えた私の指先技で微妙に変え、付けて回る。流す風の魔力も、本当に微々たるものでいいので、皆さんに気づかれることもないでしょう)
それを、全てのくじにつけて周り、帰ってくる魔力の大きさで数字を当てようと言うのが、ロデの作戦であった。粉末を付けるんだから、指先の感覚でバレるだろうと思うかもしれない。だが、かなり細かく粉末にされているので、付けられた部分は、少しなめらかになるか、ならないかぐらいの違いしかなかった。しかも、粉末自体が透明なので、かなり念入りに見ないと、付いていることにすら気づけ無い。なかなかに、バレにくいといえる作戦であった。そして、この作戦が成功した際には、ロザリオと結託し、当てさせよう。そう思っていた。
(唯、問題なのが、帰ってくる魔力が少なすぎて、上手く判断出来るか心配なところよね…)
本当に、帰ってくる魔力は微弱である。それを、一気に集中して間違えないように把握し無くてはならない。かなり、難易度の高いイカサマでもあった。
(まぁ、でも、目印があるのと、無しとの違いは大きいし。まぁ、上手く行かなくても、OKよね)
そう思いながらロデは、くじに粉末をつけていく。只々、チャンスを狙いながら。
「次の王様は?」
「私ですね」
レムだった。ロデは、特に気にもせず、くじを持っている。今の自分の作戦が実るのは、当分先だろう。そう思っていたからだ。
「では、9番に、7番と2番の人が、足を揉まれるということにしましょう」
(足を揉まれるかぁ…。この水着とか言う服装で、それはエロいなぁ…。誰と誰がやるんだろう?私は、2番かぁ…。…………うん?2番?)
「はい!!7番、私です!!」
隣のロザリオが、声を上げる。そして、当然のように、9番はベイだった。
「2番は、誰?」
アリーが問う。その声に、ロデは、ゆっくりと手を上げた…。
「わ、私が2番です…」
そう言ったロデの顔は、自然と赤くなっていた。
ちょっと、前提が間違っていたので修正しました。22:05