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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・五部 夏と商家の娘?と
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顔合わせ

「う~ん、食べた食べた!!さて、主様。お口拭いてあげるね」

「ああ、ありがとう」


 カヤのおかげで、至れり尽くせりだな。口周りの油を拭いてもらって、食べた後もすっきりだ。料理もうまかったし、言うことなしだな。


「えへへ~、主様。…ちゅっ」

「んっ…、ありがとうカヤ」

「どういたしまして!!その、…妻として当然のことだし…。あはは…」


 照れたように、カヤは笑う。俺は、そんな可愛いカヤを抱き寄せた。


「あっ、主様…。えへへ…」


 カヤの、もふもふの赤い髪を撫でる。カヤは、甘えるように、俺に顔をすり寄せてきた。うんうん、この甘えている感じがカヤらしい。最初の時も、夜の時間も、カヤは俺に、身体を擦り付けるのが好きなようだった。それに、こうしているとカヤの体温が伝わってきて、とても暖かい。今は夏なのに、全然不快に感じない暖かさが、俺に染み渡っていった。うーん、良いよなぁ、カヤ…。俺は、カヤを力強く抱きしめた。


「幸せ…」

「よしよし…」

「ううっ…、ベイ様が、ベイ様が…」

「落ち着きなさい、ロザリオ。今は、先輩の行動を見て、どうすればベイ君が喜ぶのか、観察するべきでしょう。慌てても、何も始まらないわよ」

「でも、ロデ…。何だか、何だか、…羨ましくて」

「…あんたも相当ね。でも、見てみなさい。あのカヤさんの幸せそうな顔を。あんただって、いずれあんな顔をするんだから、それを邪魔されたらどうなるかぐらい分かるでしょう?」

「…うん」

「ベイ君と付き合うなら、嫉妬するだけ無駄よ。全員が幸せになる、そんな心構えで行かないと。家族で仲間割れなんて、みっともないわ」

「そ、そうだね…。私、ベイ様のために、強い心を持つよ!!」

「その意気よ。あんたが暴走して、私まで割を食うのはゴメンだからね。おとなしくするのよ」

「うん!!」


 う~ん、何だかんだで、ロデとロザリオは、いいコンビなのではないだろうか?互いが、支え合えるというか…。夫婦としては、無理かもしれないけど、友人としてなら高い位置を作れるというか…。多分、そう言う相性なんだろうなぁ。あの2人は…。


「よし、ベイ君、ちょっと良いかな」

「はい、何でしょう?」


 ゲイルさんが、食堂に戻ってきた。その後ろから、全身黒い装備の男性が、歩いてくる。


「ん?」

「あっ」

「げっ!!パパ!!」

「…レラ、居たか。元気そうだな…」


 英雄の末裔であるアリー、サラサ、レラが、その男性に反応した。と言うか、パパ?レラのお父さん?


「ベイ君。彼は、私の友人でジーン・サルバノと言うんだ。君の対戦相手をしてくれる。かなり強いから、油断しないほうが良いぞ」

「対戦相手、ですか…。ああ、ベイ・アルフェルトと言います。よろしくお願い致します」


 俺は、カヤを背中に抱きつかせて、挨拶をした。…ちょっと不格好だっただろうか。


「うむ、よろしくな…。…なるほど、期待出来そうだ…。それに…」


 ジーンは、部屋の中を見回す。自分を睨んでいる、皆の視線に気づいたのだろう。相手の力量を測るように、1人ずつ目線を流していった。


「この部屋は、化け物揃いか…。いや、ベイ君だったか。彼が強い理由が、これというわけか…。確かに、こんな強さに囲まれていては、強くならざるおえんだろうな…。楽しみだ…」

「ちょ、ちょっと待って!!パパ!!」


 レラが、俺とジーンさんの間に、進み出てくる。そして、ジーンさんの方に、向き直った。


「ほ、本当に、ベイ君と戦うの?」

「ああ、仕事だからな…。何か、問題でもあるのか?」

「その、ベイ君がパパに嫌な印象を持っちゃうのが、嫌かなぁ…。なんて、思っちゃったり、しちゃったり…」

「ほう…」


 ジーンさんは、再度俺を見る。俺の腰付近に、アルティが抱きついてきた。えっ、何。抜くかもしれないってことか?いやいや、ここでアルティを抜くわけにはいかな…。


「シッ…!!」

「…」


 ギィィィィイイイイイイイインン!!!!!!と、ジーンの放ったレイピアが、俺の剣に防がれる。勿論、アルティではない。アリーに貰った剣でだ。だが、もう1つ、その剣を抑えている剣があった。レラの剣だ。


「ほう…、腕を上げたな、レラ。まさか、俺の剣先を逸らすとは…」

「パパ…、巫山戯ないで…。次やったら、私が相手になるよ…」

「むっ、言うようになったな…。だが、それほど強くなったということだろう。ベイ君か…。感謝せねばならんな…。娘に、いい刺激をくれたようだ」

「ちょっ!!…パパ!!」

「フッ、照れるな…。俺も、母さんと結婚した身だ。お前の反応で分かる。ならば、この仕事、一切手は抜けんな…。ベイ・アルフェルト!!俺が、責任を持って、お前の強さを見定める。全力でかかってこい!!娘に相応しいかどうか、俺が直接見てやろう!!」

「えっ…!?」

「パパ!!何を言って…!!!」

「では、また後でな…。レラ、折角の休みだ。ゆっくりするのもいいが、修行を忘れるなよ。じゃあな…」

「ちょ!!パパ!!!」


 そう言うと、ジーンは振り返らず、ドアから出て行った。


「な、俺の言った通りだろ。もし俺が相手になってたら、ロザリオに嫌われてたぜ」

「ああ、そうかもな…。俺でも、娘の前で、あんな返しは出来ない。あいつだから、出来る説き伏せ方だな…」


 マッチョ2人は、そう言いながら、ジーンを追いかけて行った。…にしても、今の攻撃、かなり手を抜かれてたな。しかも、最初から当てる気がなかったようだ。俺が防いだ理由は、カヤが、ジーンの剣を叩き折りそうだったから、静止させる意味で止めたんだけど。まぁ、ジーンが強いのは確かなようだ…。


「ご、ごめんね、ベイ君!!パパが、何か変なこと言っちゃって…」

「いや、気にしなくていいよ。それにしても、レラの父親かぁ…。強そうだな…」

「ああっ…、実力だけはね、間違いなくうちの家で、1番だと思うよ。でも、ベイ君の敵じゃないって!!どーんと、倒しちゃってよ!!私、応援するから!!」

「えっ!!いいのか?」

「うん!!パパには、厳しく修行させられた嫌な思い出もあるし、これぐらいなんともないよ。だから、ベイ君!!頑張って!!」

「…ああ。頑張るよ!!」


  カヤが、頬ずりをしてくる。俺は、そんなカヤの頭を撫でながら、受け流しの熟練者とどう戦うかを、考え始めた。



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