昼寝と食事
「おっと、そろそろお昼ね。ご飯を作りましょうか」
「と言っても、他所の家の庭先なんだけど…。どうするの、アリーちゃん?火を起こすって訳にも、いかないよね…」
「そうねぇ…、台所が借りられるか、交渉してこようかしら。もしくは、庭で作っていいかって…」
「そうだね。それじゃあ、行こう」
「ベイは、ミズキとそこで待っててね。それじゃあ皆、行きましょうか」
「はい、アリーさん」
「ああ…、良いなぁ…。ミズキ」
「ミエル様、時期に順番が来ますって。今は、料理で貢献するっすよ」
「そうそう、ベイさんを喜ばせなくっちゃ。ね、ミエル様」
「ほら、行きますよ」
「ううっ…、行って来ます、ベイさん…」
「ああ、楽しみにしてるよ」
ぞろぞろと、皆がアリーに付いて行く。と言うか、何だかんだで皆、俺と一緒に来てたのか。…嬉しいなぁ。そして、その場に俺と、ミズキだけが残される。ミズキは、皆がいなくなると、俺の腰のあたりに抱きついてきた。嬉しそうに、頬ずりをする。俺は、ミズキの頭を撫でてあげた。
「殿…」
「うん?」
「大好きです…」
「俺もだよ、ミズキ」
ふと顔を上げると、分身したミズキが、布団を敷いていた。丁寧に、素早く敷き終えると、分身は消える。
「殿、こちらへ…」
俺は、ミズキに手を引かれて、布団に寝転がった。俺に覆いかぶさるように、ミズキが近づいてくる。照れているのか、赤くなっているミズキの顔を、眺めること数秒…。俺達は、ゆっくりと長めにキスをした。
「んっ…」
唇を離して、軽く見つめ合い、また唇を重ねる。2度、3度と、繰り返していくたびに、お互いの興奮が高まっていくのを感じた。俺は、ミズキの胸元から、腰に手を滑らせ、ミズキを抱きしめるように引き寄せる。ミズキの胸が、俺の胸とぴったり重なり、完全に密着した状態になった。お互いの、心臓の音が聞こえる。その音に合わせるように、俺とミズキは、唇を重ねあった。
「んっ、ふむっ、…殿」
「ああっ…」
「いつか、ここに、殿との愛の結晶を下さいね…」
そう言いながら、ミズキはお腹を擦る。俺は、ミズキの髪を、優しく手櫛ですいてあげた。
「何人ぐらいが良いかな?」
「殿のお好きなだけ…」
「大家族になっちゃうなぁ…」
「今でも、大家族じゃないですか」
ミズキが、俺の首筋にキスを振らせてくる。甘えるように、身体もすり寄せてきた。
「そうだな。じゃあ、町が出来るくらいでも、目指してみるか」
「私、頑張りますね」
またお互いに、視線を合わせて見つめう。とろけそうな、それでいて幸せそうな表情を浮かべて、ミズキは、俺に再び唇を重ねてきた。そのまま5分ほど、ミルクが呼びに来るまで、俺とミズキは抱き合ったままで居た。
「ミズキ…」
「…こほん、いや、殿と二人っきりだぞ。近くに、布団もあるんだぞ。そりゃあ、私も我慢がだなぁ…」
「いや、それは私もだと思うのですが…。むぅぅ…、良い時間帯をミズキが引いたということですか…」
「そうだな。殿と二人っきりなど、普段なかなかないからな…。それに、フィー姉さんのお許しも出ているとなれば、止まる要素が何処にもないだろう。幸せだった…」
「…まぁ、良いでしょう。今夜がありますからね。ふふふっ…」
「…」
何だか、ミルクが怖いんだが…。今夜、やばいかもしれない…。
「それはそうと、ロデさんのお母さんと、ロザリオさんのお母さんが、ご飯は用意してくださるそうで。この短時間で、もう、用意が出来ていたみたいです。私達も、多少手伝ってきましたが、何と言うか、豪華でした…」
「豪華なのか…」
「はい。ロザリオさんのお母さんが、今日はお祝いだ!!と言って、あの後、張り切って出て行ったそうです。すぐに豪華な食材を、用意されたとか」
「ああ、なるほどなぁ…」
「それがなければ、もう少し殿と…」
ミズキが、少し悔しんでいる。俺は、ミルクを抱っこして、ミズキの肩を抱いて、食堂に移動することにした。
「ふーーーん!!!!」
「ふーーーん!!!!」
「…」
豪華な飯を前に、マッスルポーズを披露して、争うおっさん2人あり…。暑苦しい…。食欲が削がれそう。
「あなた達、そのぐらいにしといたら。もう、皆揃ったわよ」
「ああ、すみません」
「おお、すまない…」
ロザリオのお母さんの声で、2人が椅子に座る。やっと場が落ち着いた。俺とミルクとミズキも、空いている場所に座る。俺は、改めてテーブルを眺めた。おおっ、あれはロブスターか?軽い山になるくらい、ロブスターのような物が積み上げられている。あれは、フライドチキン…、にしてはデカイな。まるで、斧だ。あっちは、マンゴーかな?この世界では、初めて見るな。いや、本物かは分からないけど。他にも色々と、美味そうなものが皿いっぱいに盛ってある。うーん、たしかに豪華だな…。
「それでは皆さん、頂きましょうか。ロデと、ベイ君の今後の関係の発展を願いまして!!」
「ロザリオちゃんと、ベイ君の今後の関係発展も願って!!」
「「乾杯!!」」
「「「「「「「「「「「乾杯」」」」」」」」」」」
…何だか、微妙な気持ちになる乾杯の音頭だな…。まぁ、いいか。取り敢えず、飯を食おう。俺は、目の前にあったポテトサラダを、自分の皿に取り分けた。
「主様!!」
「おっと、カヤ」
カヤが、自然に俺の膝の上に座ってくる。ついでに、山盛りの肉料理を、皿に乗せて運んできた。
「あーん!!」
「あ、あーん…」
カヤがフライドチキンを、手に持ってあーんしてくる。俺は、その大きさにビビりながらも、ゆっくりと噛み付いた。…うーん、身もデカイからか、食べた時の肉汁の多さが凄い。ジューシーだ。やばいな、美味い。
「美味しい、主様?」
「ああ、美味しいよ」
「それじゃあ、あたしも。…うーん、美味しい!!」
カヤは、俺が食べたフライドチキンを、そのまま食べた。うーん、豪快な食べっぷりだなぁ。カヤらしい。
「主様、次はどれが良い?あたしが、取ってあげる」
「ああ、それじゃあ、そこのやつを…」
「あのエビね。ちょっと待ってて」
カヤは、俺から降りると、ロブスターを皿に盛って持ってきた。物凄い華麗な手捌きで、ロブスターの殻を剥いていく。殻を剥かれて、大きな身が姿を現した。うーん、これまた美味そうな…。
「あっ、そのエビは、こっちのソースを付けて食べてね」
「あっ、は~い」
カヤは、言われたソースも皿に盛ってきた。そして、プリプリの身にソースを付けて、俺に近づけてくる。
「はい、あーん」
「あーん」
「どう、主様?」
「うん、美味しい」
食感、口当たり、ソースとの相性の良さ。どれをとっても最高だった。エビの甘みが口いっぱいに広がり、なめらかなソースが、更に味を引き立てる。最高だな…。そして、カヤに食べさせてもらえているのが、また嬉しい。
「ふふっ、どんどん食べてね。今日は、あたしがお手伝いしてあげるから」
「ああ、ありがとう、カヤ」
俺は、カヤを抱き寄せた。そして、カヤにもエビを食べさせてあげる。カヤは、嬉しそうに、笑顔を浮かべた。可愛いな。俺は、カヤとイチャつきながら、食事を進めた。
「ゲイル様、お客様がいらっしゃっています」
「ああ、もう来たか。応接室に通しておいてくれ。アラン、あと10分したら行くぞ」
「げっ、マジかよ!!まだ、そんなに食ってねぇよ!!」
そう言いながら、アランさんの前には、すでに空になった皿が、何皿も積み上げられていた。…食べ過ぎだろう。
「それだけ食べれば、十分だろう。皆さんは、ゆっくり食べてくださいね。私達はちょっと、友人に会ってきますから」
そう言うと数分後、ゲイルさんとアランさんは、食堂を出て行った。友人ねぇ…。あの2人の友だちなんだから、マッスルなんだろうか?俺は、そんなことを考えながら、カヤとデザートをゆっくり食べた。