我慢出来ない
数分後、目を回していたニーナも起きて朝食を食べ、皆で後片付けをする。その後、出していたテーブルをしまって、出発の準備をした。
「しかし、こんな大きな牛車で乗り付けていいのかな?」
「大丈夫ですよ!本店住居のお庭も、町の道も大きいですし。問題ないと思います」
「まぁ、そうね。うちの庭なのに、何であんたが答えるのよ……」
「ええ~、家族ぐるみの付き合いじゃない、ロデ」
「まぁ、昔から交流はあるけど。なんか、嫌な言い方ね……」
へー、そうなのか。まぁ、幼なじみって言ってたしな。そんなもんか。
「ところで、牛車?ということは、牛が引くんですか?で、その牛は何処に……」
「何処って……」
俺は、ミルクを見る。2人も、俺の視線を追って、ミルクを見た。
「いや、そういう牛では無く。牛車を引く方の、牛なんですけど」
「いや、本当に。おっぱいの話じゃなくて」
「え、ミルクさんが引かれるんですか?」
「まぁ、魔法で、だけどな……」
「ああー、なるほど」
……やはり、あの胸に目が行くか。まぁ、しょうがないよな。
「家の位置は、ミルクによく話しといてくれ。走行中は、声をかけづらいからな」
「分かりました」
町の中なら、ゆっくり歩くだろうが、それ以外は爆走状態だろうからな。外の風圧で、会話どころではないだろう。まぁ、念話を使ってもいいが。あまり使えるっていうのは、言いたくないからなぁ。俺の話を聞いて、2人はミルクの所に行く。さて、俺はどうするか……。
「ねぇねぇ、ベイ君!!」
「うん、どうした、レノン?」
「ちょっと来て」
「こっちこっち!!」
「えっ、えっ?」
俺は、両腕をレノンとサラに掴まれて、近くの岩陰に連れて行かれる。何だ? 何かあったんだろうか?
「ここなら、良いかな?」
「大丈夫だと思うよ」
「で、どうしたんだ、2人共?何か、変な物でもあったのか?」
何だろう、2人が怪しく笑っているように見える。いや、俺の気のせいかもしれないが。
「うん、あのね。ちょっと、虫に刺されちゃって」
「そう。でね、ベイ君に、回復して欲しいなぁ~って、思って」
「はぁ……、虫刺され」
まぁ、夏だしな。そんなことがあっても不思議ではない。俺は刺されてないし、虫は何だかんだで皆が近づけば殺しまくっているはずだが、刺される可能性はゼロでは無いだろう。かゆいままっていうのも辛いだろうし、治せるなら治してあげたほうが良いか。
「良いよ。で、何処を刺されたの?」
「良かった。じゃあ、待っててね。今見せるから……」
「よいしょっと」
「!!」
2人は、いきなり服を脱ぎ始める。えっ!! 良いんですか!! と思った俺だったが、すぐに見ててもいいことに気づいた。2人共、水着を着ている。確かにこれなら、脱いでも大丈夫だな。それに、素肌を見せやすい。俺に良し、治療に良しだ。
「それでねベイ君、ここなんだけど」
「ここ、ですか……」
そう言ってレノンが指差したのは、明らかにおっぱいだった。……いや、無心になれ。これは治療だ。
「私も、ここが」
「……」
2人共、胸だと。いや、そんな偶然も、有るかもしれない。エッチな虫だな……。会ったら、成敗せねば。
「そ、そうですか……。じゃあ、回復魔法をかけますね……」
「うん、お願い」
そう言ってレノンは、俺の片腕を取る。そして、俺の腕を、刺されたと言った自分の胸に導いた。
「んっ……」
むにゅっと、手のひらに柔らかい感触が走る。心臓の鼓動が、手のひらを通して俺に伝わって来た。おっ、おっ、おぱ!!!!
「私も、んっ……」
そんな感じで呆けている間に、サラにも胸を押し付けられる。いや、いつもと違って、これは完全に揉む体勢に入っているな。やばい、まじでやばい。ちょっとでも動かせば、2人の胸が揉めてしまうだろう。いや、ここまで手のひらをくっつける必要が、むしろ無いんですが!! 大丈夫なんでしょうか!! 宜しいのでしょうか!!
「ほら、ベイ君、分かる?刺されて、膨らんじゃってるとこ……」
艶っぽい声で、レノンが囁く。いや、これって、まさか……。これ、刺されてな……。
「ベイ君が、回復魔法以外で治療したいって言うなら、そっちでも良いよ。例えば、口とか……」
「く、口……」
俺の頭の中で、判断材料が全て揃った。これは、治療ではない。大人の、お医者さんごっこだ。つまり俺は、誘惑されている。その事実に、俺は気づいてしまった。
「み、皆がそろそろ出発しますから、探しに来ますよ……」
「ふふっ、大丈夫。結構、詳細に町中の説明してたから、もうちょっとかかるって……」
「うんうん、ゆっくり治療しよう?」
2人が俺を岩に押し付けて、そのまま首筋を舐めてきた。……やばい、マジでヤバイ。俺、食われる。そう思った。ひと夏の経験しちゃう!! そう思った。耳の両隣から、2人の甘い声が聞こえる。2人も、かなり盛り上がっているらしい。艶めかしく俺の片足を太ももではさみ、俺の動きを奪った。駄目だ、もう逃げられない……。
「くすっ……」
2人は、軽く微笑むと、俺のズボンに手をかけた……。
「ご主人様、そろそろ行きますよ~」
「マスター、行きましょう」
俺の方に、フィーとミルクが揃って向かってくる。2人は、慌てて飛び退いた。
「うん?ほうほう、これは……」
「お2人共、抜け駆けですか?」
「あっ、その、これは……」
「ちょ、ちょっと、治療をお願いしてて。あはは……」
2人は、慌てて弁解するが。こんな所で、2人して水着になっている時点で、既に怪しい。それにフィー達は、魔力で周りの状況が把握出来る。先程までくっついていたのが、モロ分かりだっただろう。弁解の余地は、既になかった。
「……マスターと、そういうことをしたいというのは分かりますが。お2人がそうであるように、皆、マスターとそうしたいと思っているんです。そんな中で、こういう行為に出れば、不満を買いかねません。ですから、今は我慢して下さい。また夜に……。ということで、よろしいでしょうか?」
「あっ、は、はい……」
「分かりました、フィーちゃん」
「いえ、お2人のお気持ちは、痛いほど分かりますので。もう少し、我慢して下さい。本当は、昨日……。いえ、今日は、確実にしましょう。ねっ、ミルク?」
「ふっ、フィー姉さん。私も、やる気に満ちていますよ!!勿論です!!」
「じゃあ今は、目的地目指して出発することにしましょう。アリーさん達が、待っています。行きましょう、レノンさん、サラさん、マスター」
「ああ……」
俺は、フィーに腕を引かれて、牛車に戻っていく。その途中、振り返ったフィーに、優しくキスをされた。フィーは俺を見て、優しく微笑んでくれる。ああ、天使だな……。俺は、そう思った。そしてそのまま、フィーと手を繋いで牛車に戻った。