2度目の出会い
「きゅぅ~うううっ……」
「……朝からどうしたんですか、ベイ君?」
「いや、色々あってな……」
今俺は、目を回した水着姿のニーナをお姫様抱っこしている。ニーナは、全身びしょ濡れだ。まぁ、最初にしては、よく頑張った方だと言えるだろう。取り敢えず、後はミズキに、ニーナの着替えを任せることにした。運んだはいいが、俺が着替えさせる訳にも行かないしな。その間外に出て、朝飯の準備でも手伝うとしよう。そう思い俺は、牛車の外に出た。
「おはよう、ベイ」
「おはよう、アリー」
レノン、サラ、レラも居るが、特に気にすることも無く、皆が順に俺に朝のキスをしてくれる。ミズキも、パパっとニーナの着替えを終わらせてキスをしに来た。
「うーん、……良いなぁ。幸せいっぱいって感じだ」
「憧れるね……」
「ベイ君、大胆だなぁ。サラサちゃんも、ヒイラさんもするのかぁ……。うーん……」
やはり、見られているな。まぁ、仕方ないか……。ところで、他の皆は見られているからか、爽やかに朝のキスを済ませてくれたんだけど。ヒイラだけ、物足りなさそうにもじもじしているのがあざといと思うんですが、そこんとこどうでしょうか? 可愛いと思いませんか?
「ベイ様~!!」
「……」
……ああ、遂にこの時が来てしまったか。俺は、声の方向を振り向く。すると、そこには……。
「ベ・イ・様~!!」
姿だけは、紛れも無く美少女のロザリオ・フェインが浜辺を走って来ていた。……何? あの格好? 白い帽子に、白いワンピースですよ。もうね、フィー並の清楚系美少女ですよ!! 男!! 男だって言ってんだろうが!!
「来ちゃいました……」
「ああ、早かったな……。ロザリオ」
「本当は、もっと早く来たかったんです……。でも、ご迷惑になると思って、今来ました……」
「……どう見ても、女の子よね」
「そうですね、アリーさん。世の中、不思議な事があるもんです……」
……やはり容姿だけなら、アリーが見ても、ミルクが見ても合格らしい。強いな、ロザリオ。だから、何で男なんだと!! 意味が分からないんだと!!
「安心して下さい、マスター。私がいますから……、ね」
「……」
アルティが、俺の背中によじ登りながら答える。そうだな。アルティがいれば、この状況がまともになる。美少女が、ちゃんとした美少女になるぞ!! 良かった!! ……で、良いんだろうか?
「ベイ、取り敢えず、朝食にしましょう。えっと、そっちの子も食べる?」
「いいんですか?では、お言葉に甘えさせて頂きます」
ロザリオは、アリーの言葉に満面の笑顔で丁寧にお辞儀して答えた。美少女か!! 美少女すぎるわ!!
「……ロデより、美少女ね」
「アリーさん、それは流石に。私の心に、かなりのダメージが残るのですが……」
「……」
「アリーさん!!嘘だと言って下さい!!嘘でも良いんで!!アリーさん!!」
「……」
アリーが、ロデと目を合わせようとしない。どうやら、本気でそう思ったようだ。ロザリオ強い……。ともかく俺達は、ロザリオを加えて朝食を食べることにした。
「わぁ~、凄いですねぇ……」
アリー達の作った朝食を見て、ロザリオは感心している。今日の朝食は、パンに、ハムエッグ、シーザーサラダ? 的なやつに、冷たいスープだ。勿論、飲み物として、オレンジジュースと、ぶどうジュース、いつものミルク印の牛乳瓶が置かれている。……毎回、牛乳瓶だけ俺の席の近くに置いてあるのは、恐らくミルクのせいだろう。まぁ、美味しいから良いんだけど。
「それじゃあ、頂きます」
俺の声を合図に、皆が頂きますを言って食べ始めた。うーん、このパンと、ハムエッグの相性が絶妙で大変素晴らしい。それを、牛乳で一気に胃の中に流し込む。くぅ~ううっ、至福だ……。
「……」
相変わらずミルクは、俺が牛乳を飲むとこだけ自分の食事をやめてガン見している。もう、慣れました。
「あの……、ベイ様。少し今日は、お願いしたいことがあるんですけど……」
「お願いしたいこと?」
「はい」
ロザリオは、食事の軽い会話の切り出しのように、そう言ってきた。なんだろう? 昨日の今日で、お願いとは。想像がつかないなぁ……。
「私の両親に、会って頂きたいんですけど……」
「ブゥウウウウウウウウウウウウウウウッ!!!!!!!」
ロデが、盛大に飲んでいたオレンジジュースを吹き出した!! 危うく、目の前に座っていたレノンに掛かりそうになるが、ミズキが鍋の蓋で素早くガードしている。流石ミズキ。アクシデントにも、華麗な対処だな。
「ゲホッ、ゲホッ!!」
「ああ、それとですね。ロデの両親も、ベイさんに会いたがっていました。ですので、今日これから、マルシア商会・本店に来て頂けると嬉しいのですけど。駄目、でしょうか……」
「……うーん」
いきなり両親に会ってくれとか、大丈夫か? 俺、男だぞ……。ロザリオも、男だぞ。普通、納得せんだろ。ああー、ありありと見える。俺が、変な難癖をつけられて、怒られる姿が。俺は、チラッとアリーを見た。やっぱり困ると、1番頼れる人を見てしまうよね。その俺の視線を感じ取ると、アリーは目をつむって、大きく考える。その後、こう切り出した……。
「良いんじゃない?こっちから、提案したいこともあるし……」
「提案、ですか……。私の、両親に?」
「そうね。ロデの両親では無く、あなたの両親にね」
「えっと……、何だか分かりませんが、お手柔らかにお願い致します」
「……」
お手柔らかにというか、性別が変わってしまうんですが。そこんとこ、大丈夫なんでしょうか。まぁ後で、一緒の時に話せばいいか。今話すと、二度手間になるし……。
「うちの両親が、ベイ君に会いたい?ロザリオ、あんた、変なこと言ってないでしょうね?」
「うん、変なことは言ってないよ。ロデが、他に結婚したい人がいるって、教えてあげただけだから…」
「そう。面倒なことに、……いや、むしろこれは良いのか?トントン拍子に、話が進む可能性も……」
ロデは、熟考しているのか、食べる手を止めて顎に手を当てて考えている。
「うーん、そうだな。じゃあ今日は、マルシア商会・本店に行ってみるか」
「そうしましょう。ご飯を、食べたらね」
ロデとロザリオの両親かぁ……。どんな人なんだろう。俺は、一抹の不安を感じながら、朝食を食べ進めるのだった。