頑張れニーナさん(地獄編)
「お馬鹿!」
「あ痛!!」
アリーは、コツンとロデの頭を叩く。そんなに痛くは、無かっただろうが。ロデは、痛がるリアクションを、軽めにとった。
「あのねぇ…、私の話、聞いてなかったの…?ベイを、愛する気が有るかどうかが、重要なの。その場で、抱かれればいいってもんじゃないのよ…」
「えっ?…じゃあ、どうすれば…。私的には、十分その覚悟が、有るつもりなんですが…」
「こればっかりは、その場その場で、すぐに分かるもんじゃ無いからね…。ベイに、長く接して、その上で評価しないと、確実とはいえないから…」
「そう、ですよね…。舌先だけなら、何とでも言えます…。真に愛してるかなんて、時間をかけて寄り添わなければ、分かりませんよね…」
「そういうこと…。その点に関して、今、ここにいる皆は、合格と言えるわね」
…ニーナが、えっ!?私も?みたいな顔をしている。他の皆は、嬉しそうに照れているなぁ…。レラも嬉しそうだが、そういうことだと思って、いいんだろうか…。
「やはり…、帰るしかありませんか…」
「…ああ!!もう!!!調子狂うわね!!…まったく、そんな寂しそうな顔、するもんじゃないわよ!!同情しちゃうでしょう!!」
「…」
「はぁ…、もう、分かったわよ…。泊まればいいでしょう、泊まれば」
「!!いいんですか…!!」
「その代わり、貸し1つだからね。いつか、返して貰うわよ…」
「は、はい!!」
「はぁ…、何だか疲れたわ…。ベイ、寝ましょう…。私を、癒やして…」
「ああ…」
俺は、アリーに寄り添うように、横に寝る。その周りに、皆がいつもの様に集まってきた。
「ちぇっ、せっかく準備したのに…。明日にお預けですか…。いえ、旅行はまだ、始まったばかり…。そう、急ぐ必要も有りませんよね…。ね、ご主人様」
「?何だか分からないが、まだ一日目だ。楽しみを、残しといてもいいんじゃないか?」
「ですよねー。…ですってよ、皆さん。楽しみですねぇ…」
?ミルクの言葉に、何だか皆、顔が赤くなってないか?まぁ、いいか…。アリーが、寝息を立て始めている。可愛い。俺も寝よう…。明日も、疲れる一日になりそうだし…。うん?
「では、私は、ここで…」
アルティは、俺の頭上、シデンの横辺りに寝ることにしたのか…。確かに、そこだと取りやすいかもしれないなぁ…。ふぁぁぁあああ…。アリーに釣られたのか、一気に眠気が襲ってきた。もう、寝よう…。
「おやすみ、皆…」
おやすみを言ってくれる皆の声を聞きながら、俺は、眠りに落ちていった…。
*
「うーん…、ベイ様は、私のご主人様だから…」
…お休みを皆さんが言われてから、数時間が経ったのだと思います。今、ヒイラさんが何か寝言を言ったように、皆さん、ぐっすりお休みになっているようでした。でも私、ニーナ・シュテルンは、目が冴えて眠れそうも有りません…。かなり海での遊びで、疲れたと思ったんですけど…。それでも、私の意識は、冴えに冴えて、眠ろうとしませんでした。
(…今日は、魔法の練習しなかったなぁ…。来る途中に、ちょっとやったくらいかな…)
ベイ君は、結局今日は、訓練をしてくれませんでした。でも、多分、私達が遊び疲れたせいだと思います。それで、今日の訓練は、無しだと判断されたのでしょう…。それにあの後、色々あったようですし…。仕方ないのかなと思います…。
(…ベイ君は、凄いなぁ…)
私は、彼が寝ている辺りに視線を向けました。多くの女性に囲まれて、顔しか見えませんが、気持ちよさそうに寝ています。それだけ、女性に囲まれて寝るのに、慣れているのでしょう。しかも、彼を囲んでいる女性たちは、誰もが只者では有りません…。
(水面を走ったり、牛車を飛ばせたり、5日かかる距離を、数分で走破したり…)
とても、同じ人間とは、思えない方達ばかりでした。何故彼女たちは、あんなにも凄いのでしょうか…?ベイ君と、いるからでしょうか…。それとも、力のある人が、ベイ君のもとに集うのでしょうか?
(アリーさん、ヒイラさん、サラサさん、レラ研究長…。この4人も、凄いよね…)
それに、さっきやってきたロデという人も、只者ではない気がします。…皆さん、美人ですし。そんな中に、自分という、普通で、力の無いものが居てもいいのかと、少し不安になりました…。
(私にも、ベイ君を、その…、愛する資格がある…、かぁ…)
先程、アリーさんの言っていた言葉が、私の中によぎります。愛する?ベイ君を?私が?っと、あの時は思いました…。ベイ君には、お世話になっている立場ですし、そんな関係には成り得ないと思っていました。だから、ベイ君と、その…、そういう関係になろうなんて、考えたこともあリませんでした。でも…。
(言われると、意識してしまいますよね…)
もう一度、彼の顔を、私は見ます。見続けていると、胸の中に、何かが湧き上がってくるようでした…。そのまま私は、もう一度目を閉じます…。この気分のまま、寝てしまいたい…。そう思いました。でも意識は、冴えに冴えて行くばかりでした…。
*
「…」
朝か…。何か、夢を見ていた気がするなぁ…。褐色の幼女が…。あれ、アルティだっけ?駄目だ。思い出せない。とにかく、そんな夢を見たような…。取り敢えず、起きることにしよう。俺は、寝ている皆を起こさないように、浜辺に出て行った。
「よいしょ、よいしょ」
うん?外に出てみると、ニーナが運動をしていた。早起きだなぁ…。そういえば、魔法使いにも体力は必要だよって、前に助言してたっけ。それで、朝早くから準備運動をしているんだろうか?うーん、ニーナの向上心は凄いなぁ…。
「あっ…、おはようございます、ベイ君!!」
「ああっ、おはよう。ニーナ」
ニーナは、笑顔で俺を迎えてくれた。本当に、いい子だなと思う。うん、絶対助けよう…。俺は、そう思った。
「ベイ君!!何だか私、朝から、すごいやる気が出ているんです!!なんでもいいから、訓練をしてくれませんか?昨日は、あまりしませんでしたし…。よろしくお願いします!!」
「ああ、本当に、凄いやる気があるみたいだね…。じゃあ…」
「私の出番ですね…」
瞬間、俺の背中に胸を押し付けるように、ミズキが出現した。や、柔らかい…。あれか、旅行で、ミズキも大胆になっているのか?
「ひゃぁぁああああ!!」
「おっ、ミズキ。起きてたのか」
「寝ながらにして周りの状況を把握するなど、私には造作も有りませんので…、殿」
相変わらず、凄いことをサラリとするなぁ、ミズキは…。ミズキは、名残惜しそうに俺をギュッと抱きしめると、ニーナの前に出て行った。
「ではニーナさん、魔法を使う上で、大事なことは何か、分かりますか?」
「え、えっと…、威力の調節と、コントロールでしょうか…?」
「そうですね。特に、コントロールは大事です。当てられなければ、どんな魔法も意味が有りません…。つまり…」
ミズキは、その場で20人に分身する。
「どんな状況でも、魔法を当てられるほどのコントロール力。つまり、動体視力と、身体の身体力が必要となってくるわけです。それらを養うには、実戦形式が1番ですね。勿論、実戦ですから、相手の攻撃を避けることも必要になってきます…」
「えっ、あの、その…」
「あっ、昨日の水着は、もう乾いていますので、良ければ着替えて来てはいかがですか?これから、水濡れになりますし…」
「あの、その…」
「さぁ、準備が出来たら、始めましょうか…」
夏休み2日目。この日からニーナの修行・ミズキ地獄編(初級)が、始まった。
新年初投稿です!!あけましておめでとうございます!!今年も、よろしくお願い致します!!なお、次は、200回特別記念回です!!ちょっと特殊な回ですので、後でみよう!!と思われる方もいるかもしれません。ですが200回です!!その投稿の時には、今までの感想や、評価など、送ってくだされば嬉しいです。作者の励みになります!!では、よろしくお願いいたします。