*話の流れが、更にぶっ飛んでいます
「…はぁ?」
二回目のはぁ?をロデが言う。俺も言いたい気分だが、言葉が出ない…。ロザリオは、何を言っているんだ?まだ思考が、言葉を処理出来ていない。意味不明!!意味不明である!!
「ベイ様…、はぁ…、男らしい…」
ぞくぞくっ…!!うっとりとした目で、ロザリオは俺を見つめ、身体をすり寄せてくる。いや、君、男でしょう!!様て、ヒイラでもあるまいし…。やめて!!マジやめて!!そのくせ、顔はマジで美少女だから困る。声もだけど。
「いやいや、君は、ロデを愛しているんだろう!!?なんでそういうことになるんだ!?意味が分からない!?状況が理解できない!?」
俺の心の叫びが、口から溢れだした。いや、まじで今回は理解できない。さっきまで、ロデを愛しているって言う展開だっただろう!!何故そうなる!!
「ベイ様が、私に教えてくれたからです…。ベイ様の力強さ、そして、それに触れることの喜び…。私は、すっかり落とされてしまいました…。ですから…」
更に、ロザリオは俺に抱きついてくる。そして上目遣いで、こういった。
「私を、あなたの物にして下さい…」
…いや、かなりすごい事言われているのは分かる。ある意味、その筋の人には理想のシチュエーションの1つであることも分かる。だが、俺が感じた感想は、怖いだった。何、この代わり身。人は、愛する人を、こうも簡単に変えられるものなのか?俺には、考えられないことだが、その事実が目の前で起きている。考えれば、考えるほど分からない。思考停止である。
「いや、…俺には、他に妻達がいるから…」
苦し紛れに俺の口から出た言葉は、アリー達がいるからという事実を語る言葉だった。正直、いくら見た目美少女でも、アリーが許すわけ無いだろう。男だし。ミルクとか、暴れだしかねないし。というか、同性婚とか、この世界ではどんな扱いなんだろうか?それすら知らんのだが…。ああ…!!考える事多すぎ…!!!!
「それでも、構いません。女性と対等に見てもらおうとか、思っていませんので…。ですから、少し、少し触れてくれればいいんです。そうして頂ければ、私は…」
「ロザリオ…」
…あっ?なんかやばくない、この展開?おかしい。おかしいよ!!何でこういう方向に、話が進んでるんだよ!!ロザリオが、献身的になっているからか?おかしいだろ!!これじゃあ、受け入れちゃう流れだよ!!こんなのおかしいよ!!
「ちょ、ちょっと待ちなさい!!!」
固まっていたロデが、ようやく動き出した。よ、良かった!!天の助けだ!!ここでロデが、私の事好きなんじゃないの?おかしいでしょう?とか言ってくれれば、話が元に戻る希望が見えてくる。立て直しは難しいかもしれないが、そういう展開でなんとか落ち着けたい。頼む、ロザリオを正気に戻す系の発言を、してくれ!!
「ベイ君は、私と付き合うの!!だから、あんたは帰って!!」
「……………………はぁ?」
はぁ?
いやいやいやいや!!!!おかしい!!!もっとおかしいよ!!!何でそうなるんだよ!!!おかしいだろ!!何で俺が、ロデと付き合う話になってるんだよ!!確かに、美少女だけど。守銭奴だけど!!美少女だけど。ああーーーーー!!!!!!!意味が分からなすぎる!!!!!誰か、説明してくれーーーー!!!!!!
「やはり、ロデもそうでしたか。同じ男性を愛する者同士とは…。やはり私達、相性が良いんですね。一緒に、幸せになりましょう!!」
「いやよ!!!あんた、負けたんでしょう!!敗者!!だから帰りなさい!!日を改めなさいよ!!分かった!!」
「ええー。ベイ様と離れるなんて、寂しいです…。帰りたくない…」
「ぐっ…、ムカつくほど可愛いわね…。でも、あんたがいきなり変なこと言うから、ベイ君も困っているでしょう!!このまま居たら、あんた、嫌われるわよ!!」
「そ、そんなぁ…!!」
ロザリオは、俺から離れる。そして、地面に崩れ落ちた。思わず手を差し伸べそうになる…。そこを、ロデに止められた。
「いい!!いきなり愛する人を乗り換えるなんて、裏があると思うほうが当たり前でしょう!!そんなあんたが、こんなお金持ってるベイ君に、気に入られるはずが無いでしょう!!」
…やたら、お金の部分が大きく聞こえた。ああ、そういうことか…。さっき俺の財布を見たから、ロデは付き合うなんて…。…やはり、守銭奴ということだろうか…。
「ううっ、確かに、ロデがそういうのも、もっともです…。それに私は、さっきまでベイ様と敵対していた立場…。そう思われても仕方ないでしょう…。でもあの時、確かに感じたのです!!振り向いてくれないロデを追いかけているだけでは、得られない愛を!!その愛は、一瞬にして私の身体を焦がし、パンツを…。あっ、何でも無いです…。そうですね…。帰ったほうがいいことに、今気づきました」
「…」
なんか、聞きたくない部分が聞こえたような…。いや、俺は、何も聞こえなかった。良いね。あっ、はい。
「ではベイ様、また来ますね。その時まで、しばしのお別れ…」
ロザリオは、足についた砂を払い、立ち上がる。すると、俺に投げキスをしてきた。かわい…。いや、違う!!男だ!!男だぞ!!!
「それでは、また会いましょう!!絶対!!絶対ですからね!!」
そう言って、ロザリオは胸元からアイテムを取り出すと、魔力を込める。瞬時に身体が魔力に包まれて、転移をした。便利な物、持ってるんだなぁ…。しかし、また来るのかぁ…。何だか疲れた…。これ以上疲れるのは、勘弁していただきたい…。
「さて、行こうか、ベイ君?アリーさん達も、来てるんでしょう?ベイ君が、1人でこんなとこに居る訳が無いし…」
あっ、そういえば。まだ、厄介事を持ち込んだ、張本人がいたんだっけか…。さて、どうするべきか、連れて行くべきか、行かざるべきか…。
「連れて行きましょう、殿」
「わひゃぁああ!!!!」
「ミズキ、居たなら助けてくれよ…」
「すいません、私もついていけなかったもので…。ですが、この子には、例の件もあります。連れて行くほうが、何かと都合がよろしいかと」
「ああ、あれなぁ…」
ニーナを救う状況を作るために、ロデも連れて行かないといけないんだった。そうだった。さっきまでの話が、超次元過ぎて、頭からぶっ飛んでた。ごめん、ニーナ。でも、確かに都合がいい。連れて行こう。そうすれば、俺の嫁達が、なんとかしてくれるはずだ!!
「よし、じゃあ行こうか!!」
「…腕の立つ知り合いがいるのね、ベイ君」
「いえ、知り合いではなく、私も嫁です」
「えっ?」
かなり疲れたが、俺達の夏は、まだ始まったばかりだった…。