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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第一章・一部 召喚魔法使い ベイ・アルフェルト
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召喚魔法・上級 一体化

「(あああああああぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!なんなんですか!!この姿ああああああああ!!!!)」


 ミルクが叫ぶのも無理は無い。今のミルクは、かなり美少女から遠いところにいる容姿だ。戦士としては一流以上の肉体だろうが、そんなことミルクは望んでいないだろう。


「(ぐっ……!!それもこれも!!!!お前たちのせいだああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!)」


 ミルクは、土魔法で自らの腕に巨大なガントレットを作り目の前の黒騎士達を殴りつけた。若干、八つ当たり混じりのような気もするが、進化前のレムが手こずっていた騎士達を一撃で5体ずつ潰していく。黒騎士たちが剣や魔法で応戦するが。


「(そんなものが効くかあぁぁぁぁぁ!!この虫けらどもがあぁぁぁぁぁ!!!!)」


 全く意に介さずミルクは殴りつけていく。殴るたびに凄まじい轟音がして部屋が凹んで変形した。ミルクは、土魔法の硬化をものすごいレベルで自分にかけているのだろう。それで魔法も、剣すらもミルクに傷一つつけることが出来ていない。もうミルクのほうが、この場所のボスっぽく見えてくるレベルだった。というか、俺もフィーもレムすらも、ミルクを見つめたまま動けていない。口を半開きのまま(レムには口がないが)、あまりの事態に脳が追いついてなくて行動出来ないでいた。身内から魔王生まれましたレベルの衝撃だ。


「(この、雑魚どもがああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!)」


 残った黒甲冑を殴りつけてミルクは止まった。はぁはぁと息を吐く。ものすごい速さと怒りで、逃げまわる騎士を潰して疲れたのだろう。暴れまわって、若干冷静になったようだ。


「いやぁ~~、すごいすごい。我が騎士団を秒殺とは!!おもしろい!!」


 離れたとこに、潰されたはずの黒甲冑が立っていた。やはり転移魔法か?


「(ちっ、しつこい虫けらですねぇ。さっさと死ねばいいものを……)」

「はははははははは!!!!無理だ!!無理だ!!我を殺せるものは、この世にはおらん!!!!」


 喋っている黒甲冑が、真っ二つに切られた。レムが猛スピードで切りかかったのだ。だが黒甲冑は、レムの斬撃を受けたのに気にした様子がない。


「はははっ!!!!だから無駄だと言っているだろう!!!!」


 黒甲冑は、黒い霧のように傷口から姿を変えると、また少し離れたところに集まり元の姿に戻った。


「……なるほど。面白い魔法ですね」


 レムは、黒甲冑が何をしているのか分かったようだ。


「ほう、気づいたか。もっとも、気づいたとこで止める手段はないがな……」

「……」


 レムは、答えない。ただ剣をかざして睨みつけている。


「くっ、くっ、く、そこそこの強さの奴を呼んだつもりだったが、とんでもない化け物どもを呼んでしまったようだ。ふふっ、まぁ、それでもこちらには都合がいい。本当は、我が闇の魔力で一体ずつ取り込むつもりだったが、計画変更だ。殺してから、魔力をもらうとしよう」


 そう黒甲冑が言うと、この部屋一帯から立ち上っていた魔力が消えた。そして魔力が消えたぶん、黒甲冑が力を増したように感じる。


「ふふっ、全力を出すのは久しぶりだ。簡単に壊れんでくれよ!!」


 つまり、ここは迷宮ではなかったのだ。黒甲冑が作り出した擬似迷宮といったところか。迷宮ではなく、むしろ檻かな。それで帰還の宝珠が発動しなかったのかもしれない。目の前の黒甲冑からの威圧感が増した。黒甲冑が、ものすごいスピードでレムに突っ込む。黒甲冑の杖から紫色の光が出て刃の形になった。レムが応戦して斬りつける。凄まじく速い斬り合いが続く。だが、レムが飛び退くと横からミルクの拳が黒甲冑を潰した。


「ふふっ、……無駄だと言っているのが分からんのかな」

「(とっとと消えやがれですよ、虫けら。ここら一帯ごと吹き飛ばしてあげましょうか?それなら、塵すら残らないでしょう)」


 やはり、ミルクのほうがボスっぽいな。また少し移動したとこに出現した黒甲冑は言う。


「何度やっても無駄だ。君たちは、いずれ魔力がなくなり何も出来なくなる。その時に、君たちはその強さごと私の糧になるのだ。永久にな……」

「(うげええええええ、気色悪い!!ご主人様!!さっさとこいつ潰しましょう!!)」


 ミルクの前では、何を言っても型なしだな……。しかし、実際どうしたものか。このままだと、まずいのは間違いない。ミルクの牛乳があるからまだ魔力はもつが。それまでに倒しきれるんだろうか。


「主、私に考えがございます。よろしいでしょうか」


 いつのまにやら俺の隣にレムがいた。


「……倒せるのか?」

「ええ、しかしそれには主の協力が必要です。至らぬ我が身で申し訳ないのですが、どうぞ、お力をお貸しください」


 レムはひざまづき、俺に頭を下げる。そうまでして言われては、答えない訳にはいかないな。


「分かった。俺は、何をすればいい」

「はい。全員の召喚を、解除していただきたいのです」

「……は?」

「おっしゃることは分かります。ですが、主が危険になるようなことは一切ございません」

「つまり、全員で俺の魔力補助をして黒甲冑を倒すわけか。確かに、今のミルクの硬化魔法なら俺は、傷ひとつつかないか」

「いえ、使わずとも傷つきません。説明するのは難しいのですが、私と主が一体になるのです。召喚を解除していただければ、それが可能です。あ、よろしければ、ミルクが甲冑と遊んでいる間に牛乳をお飲みください。今でも大丈夫だと思うのですが、念のためです」


 一体とは、どういうことだ? 今も召喚魔石が俺の中にあるから、ある意味もう一体と言えるんじゃないか? とりあえず俺は、言われた通りに牛乳を飲んだ。……おいミルク、俺が飲むたびにしっぽを振るな。黒甲冑を相手にしながら器用なやつだ。俺は、牛乳2本を急いで飲み終える。あ~~、美味い。


「よし、話は聞いたな!!フィー!!ミルク!!やるぞ!!」


 俺は、全員の召喚を解除した。すると、俺を中心にレムが魔力を形成していく。


「な、なんだあ!?」


 俺の体は、出現したレムの鎧に包まれていった。ただし、レムそのままの鎧ではなく、所々装飾が違う。腕のガントレットは、ミルクが先ほど使った武器に近く、頭には大きな牛の角がついた。フィーが着ている服の衣と似たようなマントが付き、闇・土・風の魔力の色がついた大剣が出現する。同じ色合いの盾も出現した。鎧元のレムと同じように盾の内側には、レムの剣が付いている。なんというか完全に変身ヒーローだった。むしろ、今は結構でかいのでロボっぽいかもしれない。


「これが、私が主を守るために進化で得た力。一体化です!!私の鎧で主を包むことで、完全防衛を可能とします!!ところで、なんでミルクやフィー姉さんの力の影響まで出ているんでしょうか?巻き込んではいけないから、下がってもらっただけなのですけど」

「え。私達のも解除した理由、それだけですか?ひどくないですか」

「わ~い、なにこれ。すごいすごい!!」


 フィーは無邪気だ。


「私の一体化が凄すぎて、皆で一体化してしまったようですね。正直、思わぬパワーが出ていて私自身焦っています」


 そう、今の俺たちには、さっきまで多少の脅威を感じていた黒甲冑が全く問題にすらならないように見えた。……これはひどい。今の俺達なら上級の上、聖魔級クラスまで相手に出来るんじゃないか?


「この状態では、思っていることが話さなくても伝わります。というわけで、あの黒甲冑はこう倒します」

「……なるほど。俺がやるのはこれか」

「え、なんでも伝わるんですか!!ご主人様愛してる!!ご主人様愛してる!!!」

「マスター!!好きです!!」


 君たち、少し自重してください。今戦闘中なんですから。その気持は嬉しいですが。


「はい、すいません……」

「マスター、ごめんなさい」


 あっ、そうか。この思ったことも伝わるのか。やりづらいな……。


「まさか、ここまでとは……」


 黒甲冑が、若干俺たちの強さに引いている。そりゃそうなるよな。だが、慢心はしない。こういう強力な力は、得てして時間制限付きだったりするのだ。さっさと終わらせよう。


「あっ、魔力が続く限りずっと一体化してられますよ」

「……」


 黒甲冑が勝てる確率が、0になった瞬間だった。



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