現状最強
なんだかんだで、アリーの予想通り、その日は何もなく終わった。いや、何もなくとは言えないか…。特に勧誘とかはこなかったが。お昼に皆で、ノービスとカエラと、軽く食事をすることになった。そう、皆でだ。アルティは流石に居なかったが…。初めての、全員での顔合わせである。ミルクが余計なことを言わないか心配だったが、空気を読んでくれたのか、そこはなんとかなった。そして、先に帰っていく2人を見送る。旅行のことも話しといたので、夏休み中の帰りが遅くなっても大丈夫だろう。まぁ、いつでも転移で帰れるから、本当は関係ないんだけども…。出来るだけ、転移使えることは黙っときたいからな、仕方ないよな…。
「ふふっ、お義父さん、お義母さん、共に、ちゃんとした挨拶が出来たぞ。後は、ベイがうちの親に会ってくれれば完璧だな!!」
「ううっ…、印象良かったかな?大丈夫だったかな?」
「大丈夫よ、全員上出来、上出来」
「…」
そういえば食事中の会話で、アリーが、この13人もベイと結婚するんでー。的なことを言っていた。飲んでいた水を、ヒイラが吹き出して大変だったな。ノービス達の方が、顎が外れそうになっていて大変だったが…。まぁ、最後は落ち着いていたし良しとしよう。その話のせいで、ノービス達が家の改築を考えだしたらしいが、どうなるかは分からない…。…今でも確定で、14人+武器1が同居することは確定なわけか…。うちで暮らすなら、確かに改築したほうが良いな…。あの家では、狭すぎる。
「ふむっ…、改築かぁ…。確かに、ベイの今の家では、この人数は無理ね…。うちの実家でも厳しい…。となると、新しく建てるのが理想的かしら…。お金がいるわね…」
アリーも、改築というか、新築の方向で乗り気なようだ。…アリーと皆と、暮らす為の家かぁ…。いいなぁ…。
「ところでベイ、お昼も食べたし、軽く訓練などどうだ?私で良ければ、付き合うぞ?」
「サラサさんも、元気ですねぇ…。昨日、あれだけ戦ったというのに…」
「悪いわね、サラサ。ベイは、お疲れなのよ。何故なら、昨日ヒイラのおっぱ…!!」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
慌てて、ヒイラがアリーの口を塞ぐ。アリーが続きを言おうとするのを、必死に抑えていた。アリーは、何処か楽しそうにしている。
「ふむ、私で良ければ、付きあうが…」
「えっ、宜しいんですか?」
おっ、俺の剣の師匠とも呼べるレムが、サラサと戦うのか…。これは、面白い訓練になりそうだなぁ…。
「ああ、良いとも。これから先、一緒に暮らす仲なんだ。実力を知っておくのも、悪く無いだろう」
「ふむ、なるほど…。では、私も…」
「私も付き合いましょう、新たな友として…」
ミズキとカザネまで…。ミズキは、やめておいた方が良いんじゃないか?サラサが、泣いてしまうかもしれない。ミズキ地獄は、マジでヤバイからな…。
「皆さん…。はい、私の実力、お見せしましょう!!」
サラサは皆の言葉に、意気込んで答えを返した。なんか、いいなぁ、こういうの。皆が仲良くなってくれるのは、俺的には大歓迎だ。……、数時間後、そこには、汗だくで息も絶え絶えなサラサがいたが、まぁ、それも仕方ないことだろう…。レム達は、息1つ乱れてないどころか、全員無傷だもんなぁ…。やっぱ強いなぁ…。
「ベ、…イ、お前は、毎日こんな人達と訓練をしているのか…。…すごいな…」
「まぁ、ね…」
実は、これより更にきついフィー地獄に挑んでいるんだが…。今は、言わないでおこう。サラサが、余計なショックを受けたら困るもんな…。…いやぁ、あれはマジできつい…。今のサラサみたいに、毎回なる。
「強い…」
「でしょう?」
戦いを見ていたヒイラも、皆の、異常な強さが分かったようだ。だが、俺が今抱えて、頭を撫でている女の子がここで最強だとは、思っていないだろう。俺の訓練の様子を見たら、2人共、言葉を失うだろうな…。うん?でも、神魔級強化を覚えたから、もしかしたら楽になるのか?…ちょっと、やってみるか…。
「フィー、俺達もちょっとやろうか?」
「え、は、はい。マスター」
俺は、アルティを呼び出す。
(おはようございます、マイマスター。訓練ですね。存分に、私をお使い下さい)
「頼むぞ」
フィーが、鎧を纏う。それに合わせて、俺も神魔級強化を纏った。
「うわぁ…」
「なんだこれは…」
2人が、フィーを見て言っている。全く動いていないのに、その別次元の実力が感じ取れるのだろう。少し、身体が震えているようだ。…そして、フィーが動く。動作は、ただのパンチだ。だがその拳は、鉄を安々と砕き、山さえ粉砕する!!俺に、超高速の拳が突き刺さろうとしていた!!だが…。
(…!!見えるぞ!!)
俺は、剣で拳をそらす!!今までは、防ぐだけで精一杯だった。だが、今は受け流せるほどの余裕が出ている!!俺は、直ぐさま、反撃の一撃をフィーの腹めがけて放った。剣の柄で、叩くように攻撃する!!だが、後ろに素早く下がったフィーに避けられてしまった。おしい…!!
(でも、行けるんじゃないか!!これなら、今までより、楽に訓練が出来る!!)
魔力消費が大きくなるが、それは魔力を操る練習にもなっているので、良いだろう。息も絶え絶えにならず、汗だくにもならず、魔力を鍛えられる。うん、良いんじゃないか。良いと思う!!
「マスター、流石です。神魔級強化を得たことで、またお強くなられましたね…」
「ああ、でもまだまだだ。もっと強くならないとな…」
「そうですか…。では私も、マスターの為に、より高い壁となりましょう…。神魔級強化!!」
次の瞬間、フィーが神魔級強化を身に纏った…。………。フィーーーーーーーーーーー!!!!!!!お前ええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!…数時間後、いつも通りボロボロになった俺が、そこにはいた…。訓練するなんて、言わなければ良かった…。明日は、訓練せずに絶対ゆっくりするぞ!!そう思う俺だった…。
「…」
「皆さんが、姉さんと呼んでいる訳が、分かった気がするな…」
「フィー、相変わらず凄まじい…」
ぐったりしている俺を見て、3人はそれぞれ驚愕の表情を浮かべている。他の皆も、フィーが神魔級強化を使ったことを驚いているようだった。もう、あいつ1人で良いんじゃないかレベルに強い…。まだ、俺の手のひらの上に乗っていた、昔が懐かしいな…。強くなりすぎたね、フィー…。フィーとシゼルに、回復魔法をかけられながら、俺は、身体の疲れもあって、そのまま眠ってしまった…。