大会のその後
「掃除良し!!洗濯良し!!料理も、大味だけど…、まぁ、よーし!!」
「おっす!!ありがとうございます!!」
…一頻り、怖い会話をした後、アリーは、サラサの家事能力を見ていた。実際に掃除させたり、洗濯させたり、ご飯を作らせたり…。それを問題なく、サラサはこなしていく。ヒイラも落ち着いたのか、一緒になってやっていた。最初は、ヒイラに家事なんて出来るのか?と、思ったが、家事もうまいものだった。料理もなんというか…、上品そうな物を作っている。
「うん、ヒイラもやるわね…。このスープ、あっさりしてるのに美味しい…」
「くふふ…、おばちゃんに仕込まれたからね。このぐらいなら、楽勝だよ」
意外と、家庭的だったんだな、ヒイラ…。良いお嫁さんになるな…。
「良いお嫁さんに成れるわね、ヒイラ!!」
ヒイラは、アリーのその言葉に、チラッと俺を見て顔を赤らめる…。可愛い…。
「むっ、アリーさん、私は、私はどうですか!!」
「サラサも、いい線行ってるわね。後は、将来を考えて、子供に配慮した料理が出来れば完璧よ!!」
「子供に配慮した…!!が、頑張ります!!」
アリーのその言葉に、サラサは姿勢を正して答える。どうやら、やる気が出たようだ。エプロンをきつく結び直して、気合を入れている。
「さて、これでサラサのだいたいの実力は、分かったわね。思ったより、高くて安心したわ。後は…」
「後は…?」
「ベイとの相性ね…」
「相性…、ですか…?」
「そう。ヒイラのように、ベイを受け入れられるかよね…」
「えっ!?私?」
「そう。胸を求められれば、胸を。キスを求められれば、キスを。素直に受け入れ、以下にお互いが、いい雰囲気を作れるか。そこが大事よね…。その点ヒイラは、求められればすぐに答えてくれるから、安心だわ」
「…なんだか、とても複雑な気分なんだけど…」
ヒイラは、釈然としない顔をしている。まぁ、仕方ないよな…。反応がいいのは、俺もそうだと思うけど。
「反応…、雰囲気作り…。まだまだお嫁さん道は、長く険しいようですね…」
「これを、息を吸うくらい、楽に出来るようになってこそ、いい夫婦になれるわ!!頑張りましょう!!」
「はい!!」
アリーとサラサは、まるで青春ドラマのように燃えていた。仲いいなぁ…。
「しかし…」
「うん?どうしたの、サラサ?」
「静か過ぎますね…」
「?」
いや、俺的には皆が水着談義してたり、お嫁さん修行してたりで、そんな静かじゃないと思うんだけど…。一体、何が静かなんだ?
「ベイ、お前は、私のお祖父ちゃんに勝った。学校の闘技大会という場ではあったが、それは、世界的に見ても凄いことなんだぞ?ただの学生が、剣の道でその名を知らないものが居ないほどの、うちのお祖父ちゃんに勝ったなんて。普通、もっと周りの反応がでかくても良いはずだ。それこそ、この家に、多くの人が勧誘に来てもおかしくないくらいにな…」
「えっ…、そうなの…」
「ああ、当たり前じゃないか。うちのお祖父ちゃんは、なんだかんだで、国に特別扱いを受けるほどの実力なんだ。それを、倒したとなると、昨日のこととはいえ、すぐにでも反応があるはずなんだが…。その割には、何もないな…」
「ああ、…それね…」
スッと、アリーは立ち上がる。何でそんな騒がれてないか、知っているのか、アリー。
「そんなことには、ならないわよ…。だって、目の前で見た私達ならともかく。そんな話、信じられる?ただの学生が、何十年もかけて修行した、あり得ない強さのガンドロスのおっさんに勝ちましたなんて…」
「…なるほど。私でも、耳を疑う様な話ですね。ですが、事実ですから、遅かれ早かれ反応があるのでは?」
「ベイが、ガンドロスに勝った時のこと、覚えてる?あれ、場外判定でしょう。多分、運が良かったとか、ガンドロスがうっかりとか、そんな感じでしか捉えられて無さそうよね。それに私達みたいに、ガンドロスのおっさんの性格を知っている人なら、手加減なんてするわけ無いって分かるけど。学生相手に、手加減無しでやるとか、世間は思わないでしょうね。多分、かなり手を抜いていて、うっかりとかで広まってそう…」
「なるほど…」
「…まぁ、あと…」
「?」
アリーは、言いにくそうに目線を泳がせ、頬を掻いている。
「あの場に、あいつが居たからね…。多分、無駄に噂操作とかしてるんでしょう。あいつ、こういうことは、無駄にきっちりやるやつだから…」
「あいつとは…?」
「王国騎士同士は、私闘禁止といえば分かるかしら…」
「…シア・ゲインハルトですか…」
「そう。滅茶苦茶楽しそうに、ベイの戦い見てたの見ちゃったから…。多分、あいつが根回ししてんでしょう。王国に不利益にならないように、他が勧誘に来ない程度に薄く、また王国が勧誘にいかない程度に薄く、内容を変えて噂を流しているはず…。…ベイと戦うために…」
「あの人なら、あり得ますね…」
「…たくっ、何でどの家も、ああ言うやつっているのかしら…。戦いが好きで、たまらないっていうの?まぁ、今回はそのおかげで、楽出来てるんだと思うけど…。多分…」
*
「という訳で、息子さんが闘技大会で勝ったっていうのは、まぐれって感じで1つお願いします」
「いや、そうは言われましても…」
シア・ゲインハルトは、朝早く、ノービス達の泊まっている宿を訪ねていた。
「何も、全試合がまぐれ、と言って欲しい訳ではないんです。最後のガンドロス戦だけ、まぐれ勝ちとおっしゃってくれればいいんで…」
「はぁ、そうですか…」
「そ・れ・に、このままだと、王国の強制招集とかで呼ばれる可能性もあります!!あの、ガンドロスに勝ったんですからね。そうなると…、もうアリーちゃんに合う機会も、めっきり減ってしまうかと…」
「…それは、息子にとって、良くないことですな…」
「でしょうとも、でしょうとも。ということで、口裏合わせ、よろしくお願いしまーす!!」
いうことだけ言うと、シアは席を立ち、宿を後にした。さっきの一言で、あの夫婦は、口裏を合わせてくれるだろう。そういう確信が、シアにはあった。
「後は、他国の諜報部員より先に、噂を流して…。でも、出てくるとこは、出てくるだろうなぁ…。そこら辺は、見張らせてー…。ああ~、やること多いなぁ…。でも…」
シアは、小さく舌なめずりをする。
「ガンドロスのおじさんに勝つなんて、ベイ君、最高すぎでしょう…。やっぱ戦ってみたいなぁ…。でも、ガンドロスのおじさんに勝つんだし…、全力でも敵うか怪しいかも…。まぁ、いい勝負出来ないって気もしないけどね…」
シアは、そう言いながら道を進んでいく。すると突然、道に生えていた木が、粉々になった!!他の通行人は、突然のことに驚き、足を止める。だが誰も、何でこうなったか分かっていない…。シア以外は…。
「ぞくぞくするなぁ…。でも、10月までは我慢、我慢…。その後は…。押しかけてみちゃおうかなぁ…」
シアは、剣の柄を握っている手を、ゆっくりと強く、握りしめた。
180回めの更新になります。最近は、ブクマが増えたり減ったりと、一進一退を繰り返している感じですね。もっと、スパーッっと、ブクマしてもらえる楽しい作品にしたいのですが、なかなかそう上手くはいかないようです。ですが、頑張って面白くしていきたいと思います。よろしくお願いします!!あと、感想ください!!作者が喜びます!!ではでは、次からも召喚魔法で異世界踏破、よろしくお願いします。