計画を立てよう
夏に海に行くことは決定したが、さて、どう誘ったもんだか…。サラサや、レラは気軽に誘えるんだけど、ニーナがどんな反応するか若干不安ではある。まぁ、気負っても仕方ないし、休み明けたら気楽に誘ってみるか。
「いや、もっと際どく攻めるというのは…」
「いやいや、あまりにも布地が少ないと、色気も薄いと思うぞ。似合うならそれでいいが…」
…まだ、ミルクとミズキの、水着の話は続いているのか。しかし、入念だな。デザインラフが、ここ数分でちょっとした山になっている…。それを、今は皆が回し見している状態だ。うーん、今日は、このままゆっくり過ごすかな。訓練は、明日から再開でいいか…。俺、昨日頑張ったし、今日ぐらい良いだろう。たまには、こんな休みも必要だ…。俺は、水着と真剣に向き合う皆を見ながら、しばし、ぼーっとしていた。
「ほら、ヒイラ。これとか、あなたに良いんじゃない?」
「…うぇえええええ!!!私も行くの!!」
「当たり前じゃない!!帰さないわよ!!」
「…うぅぅ、おばちゃんに連絡しとかないと…」
ヒイラは、夏は帰る予定だったのかな?でも、来てくれるようだ。何だか嬉しいな、ありがとうヒイラ。
「おばさんって、あのおばさん?」
「うん…。闘技大会で負けたから、多分、修行させられると思う…」
「見た目に反して、容赦無い所は、変わってないのね…」
「攻撃魔法に、厳しい人だからね…」
「まぁ、でも。専属契約相手に付いて行くんだから、そこは、OKしてくれるでしょう。ちゃんとそこら辺、説明しときなさいよ。神魔級回復魔法研究もあるから、出来るだけ長期で居てもらうからね」
「…ええっ!!旅行の間だけじゃないの!!!」
「当たり前よ。人命が掛かってるのよ!!そこら辺は、考慮しなさいよ!!」
「わ、分かった!!そうだよね、人の命掛かってるもんね!!…ただ、おばちゃんが納得するかどうか…」
「…そうね。なら、私達がヒイラの実家に行くっていうのはどう?」
「う、うちに!!!」
ヒイラは、ちらっと俺を見る。その顔は、ちょっと赤くなっていた。
「両親に、ベイのことも話しとかないとね…。結婚しますって…」
「あわわわわわわわわわ!!!!!!!!!」
ヒイラの顔が、ガンガン赤くなっていく。大丈夫だろうか…。
「あっ、正妻は、私だってことは書いといてよ。ここ、大事だから」
「あわわわわわ!!!!!!!」
…ヒイラは、ちゃんと聞いているんだろうか?さっきから時折、いやいやをするように、首を左右に振っている。
「もう、そんなに報告出来ることが嬉しいの?浮かれるのもいいけど、ちゃんと手紙に書いといてよ?」
「あわわわわわ!!!」
…当分、ヒイラは落ち着きそうにないな…。そっとしておこう…。…と、俺は思ったのだが、アリーは…。
「ちょっと、ヒイラ、聞いてる?」
と言いながら、ヒイラの巨乳を揉み揉みしていた。だが、ヒイラは無反応で、まだあわあわしている。そっとしてあげようよ、アリー。
「ごめんくださーい」
うん?玄関から、サラサの声が聞こえた。俺は、皆の召喚を解除しようとしたが…。
「あっ、ベイ、大丈夫よ!!そのままで」
と、アリーに止められた。すると皆は、ミズキの能力で特徴を隠していく。あっという間に、人間にしか見えなくなった。そして、再び水着の話に戻る。…やっぱ、重要なんだろうなぁ…。
「いらっしゃい、サラサ!!待ってたわよ!!」
「はい!!今日から、花嫁修業、よろしくお願いします!!」
アリーが、サラサを出迎え、迎え入れる。そのまま、テーブルに座らせて、取り敢えずお茶を出した。
「あ、ありがとうございます。そして、ベイ、おはよう。会いたかった」
言うやいなや、席を立ち、俺をサラサは抱きしめに来た。俺もそれに応じ、サラサを抱きしめ返す。
「うん…」
そのまま、キスをせがまれたので、キスをした。軽く、唇をついばみあって、ゆっくり離す。
「…やはり良いな…。胸が幸せで、一杯になる…」
ぎゅっと、俺を再度、サラサは抱きしめてきた。俺も、背中を撫でてあげる。少しして落ち着いたのか、サラサは、席に戻って座った。
「さて…」
「はい」
アリーは、テーブルに両肘を付いて、顔の前で指を交差させる。まるで、何か重要な事でも話すような雰囲気だ。それを察したのか、サラサも姿勢を正す。
「旅行に、行こうと思うの…」
「旅行ですか?」
「そう、海にね…。皆でね…」
「海…、ですか」
「勿論、察しのいいサラサなら、これだけ言えば分かるでしょう…?」
??アリーは、また無茶振りをする。これだけの少ない情報で、何を分かれと言うんだろう…。
「はい。分かりました」
えっ!!分かるの!!!
「つまり私に、その旅行の間で、ベイに相応しい妻になるよう努力しろということですね!!」
「そう、その通り。結果次第では、私達の重要な秘密を教えてもいいわ」
「重要な秘密…」
まぁ、皆が魔物だってことだろう。アリー的には、言うのはまだ早いようだ。
「あと、今回行く所には、ちょっとした目的があって行くの。…アルナファティクよ」
「アルナファティク…。…まさか、マルシア商会ですか」
「そう、その通り。あのいけ好かない守銭奴の実家…。マルシア商会の本店がある場所。今回は、そこに行くわ」
「つまり、狙いはロデ…、ということですか。…殺すんですか?」
いきなり、物騒なことを言うサラサ。
「まぁ、そこまではしないわよ…。ただちょっと、今度の戦いの物資補充員になってもらおうと思ってね」
「…あいつが、そんな事を引き受けますかね…。ただではないと思いますが…」
「そこはほら、ねぇ…」
アリーは、腕をパンパンと叩く。凄い、悪い顔をしていた…。ロデ、可哀想に…。
「なるほど…。でも、何故あいつを…?他にも、良い当てがあると思うのですが?」
「学生でもないと、自由に動けないでしょう。戦闘に参加するとなると、特に…」
「それもそうですね…。しかし、気が進みません…」
「私もよ…。でも、あいつしか良いのがいないのよ。諦めて、勧誘しましょう」
「…?アリーさん、別に、アルナファティクまで行かなくても、今、学校にいる間に言えば良いのではないですか?」
「…夏休み中なら、ロデが多少姿を消しても問題無いでしょう…。あいつ、買い付けとかに勝手に行くこともあるようだし、家族も怪しまないわ…」
「なるほど…」
怖い、怖いんですけど、この会話…。俺は、不安を感じながら、ロデが無事に済めば良いなぁと、祈ることしか出来なかった…。
*
「へっくっしゅん!!…誰か、私の噂をしてるわね…。悪評じゃないと良いけど…」
ロデ・マルシアは、1人、部屋で下着にシャツ1枚というだらしない格好で過ごしていた。部屋には、そこら中に箱と、棚が積み重なり、アイテムが飾られている。学生の部屋というより、まるで商人の倉庫のような部屋であった。
「おっと、昨日は闘技大会を見て疲れたのか、そのまま眠ちゃったんだっけ。にしても、すごい試合だったなぁ…。っと、あったこれこれ」
ロデは、机の上においてあった手紙の山の中から、一通の手紙を取り出す。そこには、マルシア商会のサインが書いてあった。
「なんだろうなぁ…。夏休みも近いし、そのことかな?それとも、新しい新製品の情報とか…」
手紙を開封し、ロデは読み始める。
「…ゲッ!!!」
その顔は、まるで嫌なものでも見たかのように、歪んでいた…。