夏の課題
ニ、ニーーーーーーーーーーーーーーナーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!俺の頭の中では、満面の可愛い笑顔でダブルピースしたニーナの写真が、遺影に入れられ、仏壇に飾られていた!!なんでだ!!なんで、あんないい子が死ななきゃいけないんだ!!世の中間違ってるよ!!
「シアの紹介で、ニーナは来たのよね…。頼りになる回復役だって言われて。実際、私達の中で、彼女が1番の影の功労者だったわ。ニーナがいなければ、あの時の私たちは、生き延びられなかったでしょうね…」
「そ、そうなのか…」
「ええ。ロデもいたから、ある程度の回復は、アイテムで出来たんだけど。どうしても戦闘中となると、アイテムを使っている暇もなくてね…。ニーナのお陰で、戦闘に集中して戦えたわ」
なるほど。やっぱり、回復してくれる人がいるっていうのは、安心できるもんなぁ…。戦闘中の心持ちも、楽になっていただろう。いい子だなぁ、ニーナ…。
「それで、あの時…。くっ…、思い出したくもない…。でもあの子がいたから、一度世界は救えた。それだけは間違いないわ。だから今度は、あの子を死なせたりなんかしたくない。お願いベイ、貴方なら彼女を、ニーナを救うことが出来るはず…」
「待って。それって、ニーナを連れて行かなければ、済む話なんじゃないの?わざわざ、ベイに言わなくても、それで済むんじゃない?」
「甘いわね、私…。言ったでしょう、この世界はベイがいること以外は、大抵私の知っている通りに世界が動いてるって。ベイが関わったことで、その時の状況が変わった人もいるけれど。そう簡単に死の運命からは、逃れられないみたい」
「そうなの?」
「ええ…。この前の魔王軍残党討伐の事は、覚えているでしょう。ベイ達が壊滅させたあれよ」
ああー、あの時は、転移魔法陣がないかチェックしに行ったら、偶然、魔王軍と戦うはめになったんだっけ…。今考えると、かなり危ない状況だったな、あれは…。皆のお陰で、何とかなったけど…。
「ああ、あれね。あれが、何か?」
「あの時、私達の国は、ベイがいなかったから魔王軍と戦うはめになった…。でも私達の国には、強力な魔法結界が張ってあるじゃない?だから、最悪の襲撃を受けたあの時でも、被害は少なくて済んだわ…。死傷者も、三桁行かなかったし、実際凄いと思う。で、こっちでは戦うこともなく、ベイが終わらせちゃったじゃない。でも、戦って死んだ何人かの人は、こっちでも死んでしまっている人が多いのよ…。死んだ原因は、別物だけどね…」
「はぁ?何でそうなるのよ。つまり結局は、救えないってこと?」
「いえ、救えるはずよ…。実際、生きている人もいるし…。でも、ニーナが連れて行かなければ死なないかは、分からないわね…」
そうなのか…。ならいっそ、連れて行って、様子を見守るほうが良いのかな?俺が見てない所で、苦しまれても、助けようが無いし…。
「多分、多分だけど…、連れて行かないとニーナは死ぬでしょうね…。私の仮説が確かならだけど。でも、ベイがいればその運命も回避出来るかもしれない。今、私とヒイラが、その切り札も研究してるしね」
「…神魔級回復魔法」
「正解。それがあれば、ニーナがどんな状況になっても、救える可能性はあるわ。それに、世界を変えている、ベイもいるしね」
…神魔級回復魔法。思わぬ所で、必要性が出てきたな…。ニーナを救うためだ。早く完成させなければ、いけないだろう…。
「そう、どんな状況になっても…」
大人アリーは、苦々しそうに目を細めた。きっと、ニーナが死んだ時のことを思い出しているのだろう。辛そうだ。かなり、ひどい物を見たのかもしれない…。
「…あと、ニーナを救うには、出来るだけあの時と同じ人員を連れて行ったほうが良いと思うの。それなら、ベイが自由に動けるようになるでしょう?だから全員、今のうちに来れるようにしておいたほうが良いと思うの」
「まぁ、そうね…。で、誰が行ってたの?」
「シアとシュア。まぁ、この2人は言わなくても来るでしょう。あとサラサ、レラ、ニーナ、ロデ、ヒイラ、そして私…」
「見事に、英雄の末裔チームって訳…」
「まぁ、シアの思考が、そういう集めかたをさせたんでしょうね。で、今の所来るか怪しのが、ロデとニーナね…。この2人を、なんとかしないといけないわ…」
ロデかぁ…。男か女か…、謎のロデ・マルシア…。多分、ただじゃあ、動いてくれないだろうなぁ…。そんな気がする…。お金にがめつそうだし…。
「ロデを来させる、考えはあるの?というか、どうしてロデが参加しているの?あいつ、こういうのに絶対来ないタイプでしょう?」
「ああ~、それは確か…。なるほど、いい考えを思い付いたわ!!」
大人アリーは、俺の顔を見たまま、立ち上がった。…嫌な予感がする。
「ベイ、夏休みになったら海に行きましょう!!」
「う、海?」
「そう、アルナファティク!!海の近くにある町、あそこに皆で行きましょう。サラサやレラ、勿論、ニーナも誘ってね」
「うひょーーーーー!!!!!第2回水着祭りってことですか!!楽しみです!!」
それまで、シリアスに話を聞いていたミルクが、嬉しそうに叫んだ。他の皆も、何故か雰囲気が明るくなった気がする。
「そこで…、…もう時間か…」
「うん?」
よく見ると、大人アリーの身体が徐々に透けていっている。何だ?一体どうしたんだ?
「ああ、気にしないで。この身体、魔力で作ってあるの。だから、ちょっと維持に時間制限がね…。それで、…ああ~駄目だ。喋ってる余裕が無いわね。また今度、話すわ!!」
「え、ちょ!!アリー!!」
「ベイ…」
大人アリーは、スッと俺に近づくと優しくキスをする。俺の頬を優しく撫で、抱きしめてから、ゆっくりと離した。
「またね」
光の粒子が、大人アリーの身体から立ち上り、解けるように消えていく。俺は、少し寂しさを覚えながらも、彼女を見送った。
「ああ、また…」
「うーん、魔力で体を作る?一体、あっちの私は、どういう状況で存在しているのかしら?にしても、天才的ね…」
「アリーちゃん、凄いね。時間を超えるなんて…」
「まぁ、貴方のおかげでもあるらしいじゃない、ヒイラ。やっぱり、貴方はやれる子ね。その調子で、早くベイとも、色々やれる仲になって欲しいわ!!…色々と」
「あわわ!!アリーちゃん!!」
アリーは、ヒイラに揺さぶられている。海かぁ…。ちょっと不安はあるが、ニーナを救うためなら仕方ない。俺はやるぞ!!ニーナを救ってみせる!!何故か、新しい水着のデザインを、ミズキと相談しあっているミルクを見ながら、俺はそう思うのだった。