原因・内容
「…どういうこと？」
「そのままの、意味よ、ベイ。あなたが、こっちの世界に来たのは、召喚魔法の応用みたいな魔法が、この世界で使われたからなの。で、それを使ったのは、私」
つまり、俺の転生原因は、ここにいる大人アリーってことか…。それは、なんでまた、そんなことを…。
「おかしいと思ったのよね…。ベイみたいな、素敵な人に、若いうちから出会えるなんて…。出来過ぎてる運命に感謝したくらいだけど、本当に、出来過ぎてたとはね…」
「そう。滅びかけているこの世界で、都合良く、ベイみたいな強さを持った人間が現れると思う？答えは、NOよ。この世界は、ベイがいないと確実に滅びている。だから、私が呼んだの。この世界を、救うかもしれない人物としてね」
「…なるほどね」
えっ、まじ？俺、そんな大役として呼ばれたの…。や、役不足じゃないかな…。
「まぁ、ベイを呼ぶなんて、良い呼び方をしたじゃない」
「殆ど、偶然なんだけどね…。残念だけど…。いや、結果としては、最高だったけども」
えっと、つまり、俺にしようと思って、呼んだわけじゃないってことか？
「…対象を選べないってこと？」
「う～ん、なんていうか…、条件付けはしたのよね。ほら、創世級を倒して、この世界を救えたとしても。その力を持っている奴が、良い奴とは限らないじゃない？そんな奴を呼んだって、良いこと無いに決まってるでしょう？大昔の魔法使いがやっていたみたいに、魔法で従える手段もあるけれど…。結局、制御出来ずに、大昔の人類は、破滅手前まで進んだのよね。つまり、扱えない力を持つものを、従えるなんて、無理があるのよ。だから、そこら辺を考えて呼んだのよね。私に、何も言わなくても協力してくれるような、そんな都合のいい相手。あやふやな条件付けだったけど、上手くいったみたい…。でも、それって…」
大人アリーは、俺を見て言う。
「私を、誰よりも信頼してくれるってことよね…。文字通り、世界を敵に回しても、私と一緒にいてくれるような人…。それってつまり…、運命の人ってことよね…」
そういうアリーの視線は、かなり熱っぽかった。俺も、何だか嬉しい気持ちになる…。アリーが、俺の運命の人…。かなりしっくり来る言葉だ…。運命の人に呼ばれたなら、仕方ないかぁ…。そう思えるほど、アリーが愛おしい。うん、俺、世界を敵に回しても、アリーのために戦えるぞ！！勝敗は、ともかくとして…。
「…でも待って。正直、ベイの強さは、ベイのひらめきによる所が大きいわ。元から持っている力じゃなく、この世界に有る物を使って強くなっているじゃない？と、言うことは…。私、強いとか、そういう条件付けは出来てなかったとか、そういう事？」
「うーん、何と言うか、強いって言っても幅が広いのよね…。創世級みたいに、只いるだけで、周りが死ぬような人を万が一呼んだら、本末転倒じゃない？だから敢えて、力は抑えるようにはしたけども、上の設定はしなかったわね」
「…それでよく、世界を救う人として呼ぶ気になったわね…」
「まぁ、実は、これが１回めなのよね。人を召喚するっていうか、呼び寄せるの。だから、本当はお試しのつもりだったの…。でも、最高の当たりを引いたみたいね。流石、私！！…いえ、私と、ベイにとっては、必然的な出会いかもしれないけど…」
う～ん、何だか、かなり難しい魔法を使ってるんだなぁ…。まぁ、アリーと出会えたし、俺的にも大当たりか。素晴らしい魔法の力に、感謝…。
「…そうね。ベイを呼べたことは、最高だわ…。でもベイを、世界の滅亡に巻き込んだとも言えるわね」
「そこは…、ごめんなさいとしか、言えないわね…。本当、こんな、私好みの人が来るなんて思わなかったから…」
「…私がしでかしたことだもの、私も謝るべきかしら…。ごめんなさい、ベイ…」
「…いいよ、アリー。俺、アリーと出会えて、人生で最高に幸せなんだ！！俺は、アリーを救えるなら、滅亡しかけの世界だって構わない！！俺が、君と幸せに暮らせる世界にするよ…」
「「ベイ…」」
２人のアリーは、抑えきれなくなったように、俺を抱きしめてきた。…ああ…、幸せだなぁ…。滅亡しかけの世界が、何だと言うんだ。俺、アリーを守るためなら、世界ぐらい救える気がする！！いや、救ってみせる！！やるぞー！！俺は、そう思いながら、涙ぐんでいる２人のアリーを、撫でて慰めた。
「うっ…、ぐすっ…。ところで、…世界が滅亡しかけたから、ここにいるっていうのは、分かったんだけど…。一体、何をどうやって、ここに来たの…？」
「うっく…。…それは、まぁ、おいおい話すわ。簡単に言うと、ヒイラと協力して、魔法を作ったのよね…。それで今、ここに居るって訳…」
「…私と…」
「そう、私の唯一の親友、ヒイラ・スペリオとね」
へー、やっぱりヒイラも、只者じゃなかったんだなぁ…。歴史を変えるような、天才だったわけだ…。
「…ヒイラは…」
「…こっちには、来てないわよ…。正直、かなり危険な魔法で来てるから…。それに１人送るにも、莫大な魔力が、必要だったし…」
「そう…」
…何だか、悲しいなぁ…。いや、今度こそ、俺が救えばいいだけの話だ！！それで、良いはずだ！！
「ヒイラ…」
「は、はい！！」
「落ち着いたら、今度こそ、ゆっくり魔法の研究をしましょう…。ベイと、３人で…」
「…うん！！」
そう言うと、大人アリーは、穏やかな笑みを浮かべた…。そこには、俺が知らない、２人の友情が垣間見えた…。
「…ベイ。実は、１人、救って欲しい人物がいるのだけど…」
「うん？救って欲しい、人物…？」
「そう。この世界は、ベイが存在する所以外は、おおよそ、私が知っている動きをしているの。だとしたら、あの子も死ぬ可能性がある…。だから、ベイ…。あの子を、救ってあげて…」
「あの子って…、一体…？」
大人アリーは、少し間を置いてから、その名を口にした…。
「ニーナ・シュテルン…。今度の１０月の、召喚士討伐戦で、彼女は…。私を庇って、死ぬわ…」
「…」
重苦しい空気が、再び部屋に立ち込めた。
今回で、１００回記念の伏線を回収できたと思います。
