閉幕
魔力と気の、2つの固まりが、会場を埋めていく。俺の剣は光を、ガンドロスの気はドス黒い紫を、どんどん周りに広げていった…。やがてガンドロスが、足を動かし、剣を正面で構える。俺もそれに合わせて、振り抜きやすい体勢に足を動かし、剣を構えた。
「…行くぜ」
ガンドロスの身体が消え、空気が振動する!!踏み抜かれた足場は、完全に粉砕され、大穴が開いていた!!俺は、真っ直ぐに、そのありえないスピードで剣を振るうガンドロスを、視線で捉える。…行くぞ!!
「(はい、マイマスター!!)」
俺も渾身の力で一步を踏み出し、剣を振るう!!圧縮された、魔力の光の斬撃が、ガンドロスのドス黒い気と接触した!!そして、お互いの剣がぶつかり合い、空間をぶつかりの衝撃の熱で、揺らして、振動させる!!
「ぐっ、ぐわぁぁぁああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
あまりの威力の高い攻撃のぶつかり合いに、結界に守られているはずの実況者までもが、悲鳴を上げた。それだけ迫力があるのだろう。しかし、なんて重い一撃だ…。今まで、生身で受けてきた攻撃の中でも、最高威力。それほどの威力を感じる…。俺は、その威力に、思わず片膝を地面についた…。
「くっ…」
「(…マスター、ヤバイかもしれませんね)」
ああ、ちょっとガンドロスの攻撃のほうが、威力が高いかもな…。
「(いえ、そうではなくて、外の結界が壊れかけています…。このままでは、アリーさん達を、巻き込んでしまうでしょう)」
…えっ、マジ?
「(マジです。ですので、状況を速やかに解決する必要があると思います。以下がなさいますか、マスター?)」
…俺は、無言で、足に力を入れて再度立ち上がった!!アリーを傷つける訳にはいかない!!だから…。
「俺が、勝つ!!!!!!!」
俺は、再度アルティに魔力を込める!!そして、ガンドロスの剣を押し返していった!!
「ぬおっ…!!!」
「(了解、マスター!!では、私もお手伝いしましょう。能力発動・シゼル、真・魔強化。魔法威力を、2倍にします)」
…えっ。
即座に、アルティの発する光が巨大になり、まるで巨大な大剣にでもなったかのように、光の刃で包まれる!!その剣が、ガンドロスの攻撃を押しつぶし、切り裂いていった!!
「ぐわぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
そのまま、刃に押し切られるはずだったガンドロスだが。どうも、押し潰される前に剣先をずらして、横に避けたらしい…。直撃を避けたガンドロスだが、光の魔力で吹き飛ばされ、そのまま壁に激突してしまった。
「…ふぅ」
その光景を見た俺は、魔力を解除し、剣を元に戻す。それと同時に、周りの結界が、壊れて消えた…。どうやら、ギリギリの所で、決着が着いたらしい…。
「おう、いてて…。流石にいてぇな…」
「!!」
あれだけの攻撃を受けたにも関わらず、ガンドロスは起き上がってきた。俺は、再び剣を構えるが…。
「ん?…場外か、俺の負けだな」
短くそう言った…。
「な、なんと!!!!!世界でも指折りの実力者、ガンドロス・エジェリン先生を退けて!!!まさかの、ベイ・アルフェルト選手の勝利です!!!!!!!!!!!」
実況者の勝利宣言が、響く。しかし、観客は無言だった。そりゃあ、結界が壊れかけて、自分達が巻き込まれる手前だったんだから、そう言うリアクションにもなるだろう。…だが、ゆっくりと拍手の音が聞こえ始めた。やがてそれは、増えていき、会場を埋め尽くしていく。ここに、全大会試合がおわり。俺の完全優勝で、この大会の幕が閉じた。
*
「優勝おめでとう!!素晴らしい、試合の数々だった!!」
「ありがとうございます」
俺は、校長から優勝記念のトロフィーを受け取る。最後に、観客の声援を受けて、俺は控室に移動した。
「いやぁ、やりやがるな坊主。まさか、この俺に勝つとはよう…!!」
「えっ、ああ、いやぁ~…」
控室に行くと、ガンドロスが元気に迎えてくれた…。何だろう、勝った気がしない…。
「まぁ、俺もまだまだってことだわな…。こんな坊主に負けるなんて、修行のやり直しだぜ…」
そう言うと、ガンドロスは、背中を向けて歩いて行く。…これから、すぐにでも修行に行く気だろう。俺には、何故かそう思えた。
「おっと、坊主。優勝、おめでとう。サラサを頼んだぜ!!そして…」
ガンドロスは拳を握りしめて、振り返ってこういった。
「次は、俺が勝つ…」
…きっとガンドロスは、その言葉通り、強くなって帰ってくるだろう。それも恐ろしいほどに…。
(嫌だなぁ…)
俺は、心底そう思いながら。ガンドロスを、見送った。
「ふぅ~…」
長い激闘がおわり、俺は息を吐く。何と言うか、気が抜けた感じだ…。今日は、色々と疲れた…。早く帰って、ゆっくり休みたい…。
「ベイー!!!」
「おっと…!!」
俺は、走ってきたアリーを受け止める。そして、そのままキスされた!!うーん、疲れが癒えていくようだ。とても嬉しい。
「…格好良かったわよ、旦那様」
「ありがとう、俺のお嫁さん」
俺は、再度アリーを抱き寄せキスを返す。ゆっくりと唇を離すと、アリーは可愛く微笑んで身体を離した。…あー、アリーって最高だなぁ。俺は、そう思わずにいられなかった。
「ベイ」
「ああ、サラサ…、むぐっ!!」
サラサからも、押し付け気味にキスをされる。
「さっきお祖父ちゃんが言ってたんだ、私達を認めてくれるって!!これで私も、正式にお前のお嫁さんだ!!よろしくな!!」
俺を力強く抱きしめ、サラサはそう言う。まるで、子供みたいに無邪気に喜ぶサラサに、俺は背中を撫で、微笑んで答えた。
「ああ、よろしくな。サラサ」
「ああ!!任せろ!!絶対、幸せにするぞ!!ベイ!!」
…それ、サラサが言うのか。まぁ、悪い気はしないけど…。なんだかなぁ…。
「ふふふっ、お嫁さん修行は始まったばかり…。これから厳しく行くわよ、サラサ!!!」
「はい、アリーさん!!よろしくお願いします!!!」
いつの間にか、アリーがサラサの師匠みたいになっている…。そして…。
「ううっ…、逃がして…。離して…」
何故か、ロープで縛られたヒイラが床に座っていた。恐らく、アリーが連れて来たのだろう。しかし、何で縛ってるんだ?
「取り敢えず、修行は明日からね!!今日は、ヒイラを拷問にかけるから!!」
えっ!!拷問するの?
「離して…。逃がして…」
涙目でヒイラが、俺に訴える。うーん、離してあげたほうが良い気がしてきた…。
「あっ、ベイ駄目よ!!私達にとって、重要な事なの!!だから駄目よ!!」
えっ、そうなのか…?うーん、アリーが嘘を言っているようには見えない。俺は、仕方なく、ヒイラを撫でるだけに止めた。
「あっ…、ううっ…」
ヒイラの顔が、悲しみから、テレ顔に変わっていく。人まずは、これで良しとしよう…。その後、俺達は、研究会で優勝記念パーティをして貰った後、アリーが、ヒイラを縛ったまま引いて、家に帰った。