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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第一章・一部 召喚魔法使い ベイ・アルフェルト
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見知らぬ闇

「……どこだここは?」


 光りに包まれて光が消えるとそこは見知らぬ場所だった。周りは、加工した石で作られた巨大な部屋になっていて壁にかけられたロウソクの火で辛うじて辺りが見える。どこかの屋敷か、または城という感じだろうか? だが、もしかするとここは……。


「周りの魔力量が高いところを見ると、ここは迷宮みたいだな」

(……)


 レムは周りを警戒し、敵がいないのを確認すると唯一つながっている通路奥を見つめて身構える。とりあえず、フィーとミルクを呼びだそう。向こうでの召喚を解除して、こっちに再召喚する。人間同士のチームならこうはいかないから召喚は便利だな。


「マスター!!」

「(無事ですか、ご主人様!!)」

「ああ、俺もレムも大丈夫だ」


 フィーが抱きついてくるので頭を撫でる。一瞬離れただけだが、こんなに心配してくれて嬉しいな。さて、これでうちのフルメンバーが揃ったが状況は悪いままだ。まず、ここがどこか分からない。迷宮だとしても、どのような迷宮か見当がつかない。嫌なんだよなこういうの。俺は、出来るだけリスクを減らして戦いに望みたいからな。正直、悲惨な死に方はしたくないし、仲間を危険に晒したくない。


「ふむ、そうだ!!帰還の宝珠を使おう!!」


 帰還の宝珠は、迷宮脱出用アイテムだ。もしもの時のために買っておいてよかった。未知の迷宮に挑むよりは、外に出た方がいいに決まってる。早速魔力を流し使ってみるが……。


「……動かない」


 ホラー映画で扉が閉まって出られないぐらいのお約束みたいに起動しない。こういう時は、焦ってはいけない。使い直してみよう!! ……やはり使えない。この帰還の宝珠が不良品か、あるいはこの迷宮がそういう場所か……。むしろ、迷宮じゃないなら使えなくて当たり前なのだが。この周りの魔力量で、迷宮じゃないほうがおかしい。どっちにしろ、いいことではないな。


「……しょうがない。皆、今からこの場所を探索……」


 言いかけたその時、通路の奥から金属が擦れ合う音が聞こえてきた。まるで、鎧を着た人間が近づいてきているかのような音だ。音から考えて相手は一人。全員が、音のしてくる通路を見て身構えた。


 それは、音で想像したように鎧だった。全身が黒く、その大きさはレムより一回りでかい。黒い大剣を片手に持ち、大盾をもう片手に持っている。重装備な騎士というところだろうか。勿論、人間ではありえない大きさを除けばだが……。


 黒い騎士は、この部屋に入ると少し立ち止まりスッと剣を持ち上げレムを示した。


「……タタカエ」


 黒い騎士の目があるであろう場所が赤く光る。おどろおどろしい声で喋り、俺達に少し近づくと武器を構えた。


(……)


 レムが前に出る。少し進み、俺たちから離れると武器を構えた。どういうわけか知らないが、敵の狙いはレムのようだ。ここは、全員で倒すべきではないだろうか? そう考えていると、レムが魔力を通して気持ちを伝えてきた。自分に、任せて欲しいと……。俺を通して、フィーにもミルクにも意志が伝わったらしい。決して喋ったわけではない。だが、レムがそう考えていると分かった。


「(はぁ~、ここはみんなで戦うのがいいと思うんですけどねぇ。あの黒いの強そうですし。まぁ、レムがちゃっちゃと倒すならいいですよ。危なかったら助太刀しますけどね)」

「レム!!ファイト~!!」


 2人は、レムに任せるようだ。今まで喋らなかったレムが、わざわざ気持ちを伝えてきたのだ。答えてあげたいのだろう。そこは、俺も同じだった。


「レム!!負けるなよ!!」

(……!!)


 レムは、僅かにだが頷いていた。


  レムと黒い騎士は、同時に相手に対して切りかかった。お互いの剣が打ち合い、鋼が鳴る音がする。お互いがお互いをはじき、剣の軌道を変え数回剣を打合せた。大きく踏み込みをかけて、レムが黒騎士を切り伏せにかかる!! 相手もそれに合わせ、力を込めて剣を振り下ろした。互いの剣が、互いを切り伏せようとかち合いつばぜり合いになる。少しの間力は拮抗したがレムが押され始めた。ジリジリと、相手の刃がレムを押し切ろうと迫る。


「(レムより力があるなんて。まぁ、私には劣るでしょうが只者ではないですね。もしかして、上級の魔物かもしれませんよご主人様)」

「……上級」


 確かに、有り得る話だ。中級のレムより力が強いなら、中級以上は確実だろう。ミルクのような例外でなければ。それでいて、レムよりはるかに強いというほどでは無いように見える。上級が妥当だろう。


(……)


 押し切られそうなレムだったが、片腕で持っていた剣を両手で持つ。柄を握り、一気に力をかけ相手を跳ね飛ばした。黒騎士は、反動で少し後ろに下がり盾を構え体勢を立て直す。レムが切り上げガードを崩そうとするが、びくともしない。黒騎士がレム目掛けて剣を振り下ろす。レムは、剣でガードしようとするが。


(……!!)


 突然、レムは飛びのいた。ぎりぎりのところで相手の剣を避けたようだ。見ると、レムの岩の剣が相手の剣によって上半分が切り落とされている。レムの岩の剣は、レム自身が土魔法で硬化させていた。その為、鋼の剣より固い作りになっているのだが、それが綺麗に切断されている。黒騎士の剣に魔力が宿り、紫色の光を放っていた。何かの魔法で強化したようだ。


(……)


 俺達には、焦りが生まれていた。レムが負けるんじゃないかという考えが頭をよぎる。だが、敵と向かい合っているレムの背中が語っていた。必ず勝つと……。レムは、半分になった剣を中段に構える。黒騎士も中段で迎撃姿勢を取った。レムは、身を低くするとそのまま突進した。 黒騎士は、迎撃の剣をレム目掛け横薙ぎに振るう。……レムは、それを見ると折れた剣で横上薙ぎに相手の剣を下から押し上げ剣の起動を変えた。一方で、レム自身はさらに身を低くし相手の剣をくぐり抜ける。足の力で、倒れ込みそうになる身体を支え。勢いを保ったままレムは、黒騎士の盾に斜めから激突した。黒騎士は、盾を吹き飛ばされ剣は振り抜ききり守りの手段が失われている。レムは、突進の勢いを殺さぬまま接近しリーチの短くなった剣を振るってそのまま黒騎士を切り伏せた。


「(あっぶない戦い方をしますねぇ。ひやひやでしたよ)」

「お~~!!レム、すごいぞ~!!」

「……」


 俺も、内心肝が冷えた。まぁ、召喚された魔物は、一回致命的なダメージを受けただけでは死なないんだけどもそれでも見ててキツイところはあるな。切り伏せられた黒騎士は、傷口から黒い霧のようになって消えてしまった。持っていた剣を残して……。消えるなら素材も取れないわけだし、死んだら残すものが決まっている魔物もいるんだろうか。ドロップアイテムってやつかな?


(……)


 レムは、落ちていた黒騎士の剣を拾う。レムの剣も半分に切られてしまったし、代わりにいいんじゃないだろうか? なんて、考えが甘かった……。


(……!!!!)


 黒騎士の剣から黒い魔力が溢れ出しレムを押しつぶそうとするように包み込んでいく。レムの周りが、一瞬にして黒い魔力に覆われた。

 





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