決勝戦・魔剣
「ベィィィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!」
まるでその言葉は、雄叫びのようだった。再び、返される刃は、それまでと比べ物にならないほど速く、そして重い!!サラサの身体に纏わり付いた黒い気が、サラサをそこまで強化しているのだろう。俺も、聖魔級強化を、身体と武器に纏わせ、その一撃を、正面から受け止めた!!!!
「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーー!!!!!!!」
「グッ…!!」
2つの刃がぶつかり合い、大音量の金属音が、周囲に広がる!!それと同時に、ぶつかり合った中心点から、周りに衝撃波が広がっていった!!重い!!とてつもなく、この一撃は重い!!聖魔級強化をかけている俺が、少しづつではあるが、身体が押されるほどだ。力の強化に関しては、聖魔級強化より上ということだろうか?それとも、使用者の鍛え方の違いで差が出ているのか…。
「ふん…!!!」
「くっ…!!」
サラサが剣を、力任せに振り抜く!!俺は、耐え切れなくなり、後ろに飛んで距離を取った!!だがサラサは、待ちきれないとばかりに、口元をニヤつかせ追撃してくる!!そうか、まだまだ、戦い足りないか…。と言うより、ここからが本番ってとこだよな。…じゃあ、俺も答えてやらないとな…!!俺は、聖魔級強化に、カザネの高速移動をプラスして、再び、サラサに、真っ向からぶつかっていく!!
「はぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!」
「おりゃぁぁぁあああああああ!!!!」
再び周囲に、剣のぶつかり合いによる衝撃波が広がった!!…ここで、驚くべき事実に俺は、気が付いた。聖魔級強化状態では、カザネの高速移動を使った時、そのスピードに耐え切れず、俺自身がダメージを受けてしまう…。…どうやら、少しスピードを抑える必要があるようだ。まぁ、それでも、今のサラサに付いて行くぶんには問題ない。俺達は、その場で、連続して剣をぶつけ合った!!
「はぁあっ!!」
「…っ!!」
カヤの身体強化を真似し、何とかサラサの攻撃に、己の力を合わせて対応する!!十数回の、剣のぶつかり合いの後、俺は、サラサを力任せに押し切った!!サラサは、素早く後ろに距離を取り、剣を構える。そして、俺達は、お互いに睨み合った…。
「…」
「…」
サラサは、上段に剣を構え、俺を見据えている。俺は、その動きを見て、どう来ても対応出来るように、中段に剣を構えた…。…にしても、今のサラサと、勝負開始直後のサラサでは、決定的に違うものがある。それは、俺への敵意だ。殺意、と言ってもいい。あの黒い気を纏わせた時から、サラサから、そう言う感覚を感じる…。このピリピリと来るような感覚は、迷宮で多くの魔物と、命のやり取りをしてきた感覚に近い…。恐らくだが、サラサは俺を、殺す気で、攻撃してきているのだろう。その攻撃的な、気持ちが、黒い気となって現れているんだろうか?そう考えていると、不意に、サラサが喋ってきた…。
「…あれは、使わないのか、ベイ?…いや、私に合わせてくれているんだな。なら私も、あれの相手をするなら、一段上げる必要があるわけか…」
…恐らく、サラサが言っているあれとは、神魔級強化のことだろう。一段上げる?…出来るのか?正直、あそこまでの力が出せるなんて、人間やめてると思うんだが…。サラサは、構えを解き、目を瞑る…。ああー、あれは、出来る奴の動きだな…。俺も、本気を出すか…。俺は、愛刀を鞘にしまう。そして、何も無い腰辺りに手を、周りから見えないように、隠した。
(さて、出番だぞ…)
(了解、マイマスター。転移を開始します)
俺の手のひらに握られるように、剣の柄が現れる。俺は、それを掴んで、ゆっくりと引き抜いた…!!
「…っ!!!!!!」
「お、おっと!!!!何だ、あの剣は!!!!!!!!!まばゆい光を放つ、剣を、今ゆっくりとベイ選手、抜き放ちましたー!!!!!!」
「…アルティ…」
「きゃー!!!!!!!アルティー!!!!!格好いいー!!!」
観客席から、どよめきと歓声が巻き起こる。…アルティの名前を知っているとこから、あの歓声は、ミオだな。ちゃんと、見に来ていたようだ。ゆっくりと、光が収まっていく。俺の手には、魔石剣・アルティが握られていた。
「(各部良好、問題ありません。魔石剣・アルティ、これより皆さんと共に戦線に加わります。以後よろしくお願いします。先輩方)」
「(えっ、あっ、よ、よろしくね。アルティちゃん)」
「(えっ!!もう喋れるんですか!!早いですね!!)」
皆とアルティが、挨拶を交わす。俺は、アルティを、ゆっくりと中段に構えた。…なんか、軽くなってるな。だというのに、持っていると力が漲ってくる。うーん、本当に魔剣だなこりゃ…。その力に何だか嬉しくなり、顔がにやけてくる。俺は、顔を上げて、サラサを見た。サラサも、目を見開き、再び剣を構え直す。そのサラサの身体に、ゆっくりと、先程より勢いを増した黒い気が纏わっていった!!
「ベイ、私は、お前を…」
「…」
俺も、神魔級強化を、俺とアルティに纏わせて、構える。周囲の大気がざわめき、俺達が動いてもいないのに、周りに風が吹き出した。
「殺す…!!!!!!!!」
瞬間、リングを踏み砕き、サラサが超高速で突っ込んできた!!同じく、俺もリングを踏み砕き、サラサに剣を振りかぶる!!
「(我がマスターを、殺すことは、不可能です。私がいますので)」
サラサの持つ大剣と、俺のアルティがぶつかる!!剣と剣が、ぶつかり合った反響の唸りを上げて、周りに衝撃波を発生させた!!打ち付けあった剣の間から、地面に亀裂が入り、割れていく!!
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!!!」
サラサの気合の声と共に、剣にかかる力が強くなっていった!!だが、アルティを握っている今の俺には、その程度では、通じない。
「(モ…・ミ…。調整、不十分、改良の余地あり…)」
?アルティが、何か言っているな?何だろう?まぁ、いいか。今は、サラサに集中しよう。俺は、アルティを振り、サラサを、後ろに跳ね除ける。サラサは、全身を黒い気に覆われ、禍々しいとも取れる姿をしていた。まるで、獣だな…。だが、間違いなく俺が今まで出会ってきた中で、最強の剣士だろう。持っている大剣が、良く似合っている。大きく、サラサが剣を肩に担ぎ、構えた。さぁ、決着をつけるとしよう…。
「(了解、マイマスター)」
俺は、アルティに、魔力を集中させ、腰の横で構えた。