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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・四部 闘技大会
164/632

VS???・終

「「そう、それでいいわ…」」


 何故か、そう言うアイラの口調は、明るかった。まるで、自分のことのように、喜んでくれているみたいに…。そして神魔級強化を、纏った俺を確認して、妖精が動き出す。さっきは、一瞬足りとも捉えることが出来なかったその姿が、今は、ゆっくりと確認出来た。


「…」


 俺は、静かに、パンチを放ってくる妖精の腕を、片手で握り受け止める。そして、そのまま、自分の手に土のガントレットを纏わせて、力のままに握りつぶした!!


「…!!!!!!!!!!!!」


 声にならない悲鳴を上げるように、妖精がよろめき、後ろに下がる。握りつぶされた片腕は、光となって、空中に消えていった。…本当に凄いなぁ、神魔級強化…。しかも、さっき神魔級強化を見て、覚える時に、面白い魔力の使い方を思いついてしまった。…勝てる!!今の俺なら、この妖精に勝てるぞ!!


「…がぁ!!!!!!」


 妖精が、やけくそ気味に、もう片方の腕に魔力を纏わせて、拳を振るって来た!!だが、妖精が拳を振るった場には、もう俺の姿は無い。


「!!!!!」

「…遅いな」


 さっきまでとは、明らかに逆の立ち位置に、俺と妖精はいた。俺が思いついた魔力の使い方とは、一体化時の、皆の魔力の使い方を、コピーするということ。それも、神魔級強化をしながらだ。今は、カザネの高速移動を、参考にしている。結果、この強敵と呼べる妖精でさえも、捉えることの出来ない速度を出すことが出来た。もう、俺は知っていたんだ。勝つ方法を、皆に、教えられていた。さっき、そのことに気付かされた…。アイラに…。俺は、剣を妖精目掛けて、振り下ろした!!!


「!!!!!!!」


 魔力によって、一体化時の剣に、近い形になっている俺の剣が、妖精を背後から一刀両断する。妖精は、そのまま、魔力の粒子となって消えていった。他の、偽物も一緒に消えたらしい。さて、後は、本命を残すのみか…。


「「…ふふっ」」


 パチパチパチっと、アイラが突然、拍手をし始める。その顔は、穏やかで、にこやかに微笑んでいた。


「「流石、ベイね。たった12年で、ここまで来るなんて。やっぱり、あなたしかいないわ!!」」


 突然、距離を詰め、アイラは抱きついてくる。攻撃するでもなく、身体の全体重を預けるかのような、信頼の現れでもあるかのような、密着した抱擁。俺は、それを素直に受け止めてしまう。…????まただ、何かこの感覚に覚えがある。まるで、俺の一番大切な人を、抱いているかのような…。


「「ふふっ、じゃあ、またね。ベイ。傷つけて、ごめんなさい…」」


 そう言うとアイラは、俺から離れ、地面に降り、そのまま控室に戻っていた。…????えっと、つまり、これは…。


「じょ、場外!!!しょ、勝者!!ベイ・アルフェルト選手!!!!!!!!!!!!」

「…ふぅ」


 アリーが、安心したようにため息を付いている。えっと、なんかいいのかな…。喜んでいいんだろうか、これで。…ともかく、俺は、これで決勝進出することが決まった。



「「うん?」」

「あなた、一体何者?」


 転移しようとしていたアイラの前に、1人の女性が現れた。ヒイラ・スペリオ。彼女は、まるで警戒するかのように、力強く手を握っている。


「「何って、アイラ・バルトリオ。それが、私の名前だけど…」」

「そう…。でもね、あそこ迄の魔法が使える生徒なら、とっくに噂になっているはず。なのに、バルトリオなんて今まで聞いたこともなかった。それほどの実力なのに、前回大会では見なかったし、あなたを学校で見た覚えもない。それに…」

「「それに…?」」

「あなた、何処か私の知ってる人に、似てるのよ…。喋り方、その仕草…。まるで本人みたい…」

「「…ふふっ」」


 アイラは、抑えきれないように笑みをこぼした。そしてゆっくりと、ヒイラに近づいていく。


「あはははっ!!まさか、ベイならまだしも、あなたがそう言ってくるなんてね。…ふふっ。何と言うか、嬉しいわ、ヒイラ」


 アイラの、その二重にブレて聞こえていた声は、聞き慣れた声になっていた。何処か自信に溢れた、彼女特有の声に。


「…!!!!!」

「うん、そこで驚くの?まぁ、いいわ。どうせ、バラすのが早いか、遅いかの違いでしか無いし…」


 彼女の、赤と緑の髪が、変化していく、長い赤色の髪。目は、自信に溢れた光を宿し。鋭くヒイラを見据えていた。だが、彼女の背は、ヒイラが知っているよりも少し大きく、胸も大きくなっている。顔立ちも何処か、7年ほど、年を重ねたように見えた。


「あっ…」

「まぁ、でも、流石。私の、唯一人の親友ね。やっぱり、偽名にあなたの名前を組み込んで正解だったわ。ヒイラ、あなたは、その価値がある人物だった」

「…????」


 ヒイラは、混乱している。目の前で起こっていることが、あまりにも思考の追いつかない現実だった為だ。だがヒイラは、今の投げかけられた言葉を整理して考える。アイラ・バルトリオは、偽名。その中に、自分の名前、ヒイラ・スペリオが含まれている。つまり…。


「ア…・バルト…」

「じゃあね、ヒイラ。また、あなたと話せて嬉しかったわ…」


 アイラは、ゆっくりとヒイラの横を通り過ぎていく。だがヒイラは、彼女にもっと聞きたいことがあった。だから、彼女の名前を呼ぶ。


「待って!!…アリーちゃん…!!」

「…やっぱ、久しぶりに呼ばれると照れるわね。それ」


 アリーは、ゆっくりとヒイラに振り返った。


「見てた、ヒイラ。あれほどの魔法、超天才の私以外には、誰も扱えないわよ!!あっ、ベイなら扱えるかもね。いや、扱えるわ!!私の夫だし」


 嬉しそうに、アリーは微笑んで言う。その笑顔は、成長していても、今のアリーとあまり変わらない無邪気なものだった。…そして、その言葉を言い終えると同時に、アリーの身体が、ゆっくりと薄くなっていく。


「えっ…」

「おっと、仮の身体じゃあ、これが限界か…。結構、時間かけて用意したんだけどなぁ…。まぁ、しょうがないわね」


 足からアリーは、光の粒子になって消えていく。まるで魔力のように…。


「あ、アリーちゃん…!!」

「心配しなくてもいいわ、ヒイラ。これは、仮の身体。いずれちゃんと話が出来るわよ。それまで…」


 アリーは、悪戯でもするかのような笑みを浮かべて、口の前に人差し指を付ける。


「もう1人の私と、ベイには秘密ね」


 そう言って、アリーは、ヒイラの前から消えていった…。




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