VS???・続々々
空中で身構える俺の前で、相手の妖精の周りに、透明な石が形成されていく。その数、10。そして、その石に吸い込まれるように、偽物達が吸収されていった…。ああ…、悪い予感て言うのは当たるもんだなぁと、俺は冷や汗をかきながら思う。つまりこれは…。
(擬似一体化…、ってことか…!!!!)
相手の妖精の周りに、魔力で出来た、鎧が形成される!!微妙に俺達の物とデザインが違うが、その圧倒的な威圧感は、相手にしたくないの一言であった。
「(マスター、これは流石に…!!)」
「…いや、出なくていい。完全に、俺達並の力が出せているとは限らない。それに、言ったろ。最悪、死ぬことはない…」
「(でも…!!)」
「…俺を信じてくれ、フィー」
「(…)」
皆には、心配をかけてしまうな。だが今は、俺がなんとかするしか無いだろう。さて、最悪な戦いの始まりだ。先ずは、相手の動きを良く見…。
「…、グホッ…!!!」
「「…クッ」」
「(マスター…!!!!!)」
「ベイーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」
やばい!!全然、動きが見えなかった!!!俺の腹に、相手の拳がぶち当たっている!!!だが、これは想定内。有り得る事だと思っていた。このために、土魔法で、身体をより強固にしてある。だが、流石に無傷という訳にはいかないか…。今にも、胃の中の物を吐き出しそうだ…。もしかしたら、血かもしれないけど…。だが、恐れていた予想が当たった以上、ここで動かない訳にはいかない!!俺は、風魔法で吹っ飛びそうになる体を支え、その場に留まった!!
「…!!!!」
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおーーーー!!!!!!!!!!!!!!」
俺は、痛みを振り払うように、雄叫びを上げる!!!勝負は、一瞬!!素直に相手が、攻撃してきた今。ここで、決めるしか無い!!!俺は、水の糸で相手を拘束しようとする。だが…。
(これは、相殺してくるか…)
敵の強さもここまで来ると、心が折れそうになってくる。だがこれは、あくまで囮だ。本命は、水の糸の魔力に隠して、作り上げたもう一つの魔法!!!
「「へぇー…」」
水の魔力が、俺の影を形作る。残念だが、完全に俺に似せている余裕はない。無数の俺の形をした、水の魔力が、妖精を一瞬で取り囲んだ!!
「…」
このまま、決めさせてもらうぞ…!!!俺は、水の分身に、練り上げた魔力を流す!!それぞれの、分身の剣が、白く輝いた!!勿論、俺自身の剣も、光り輝いている!!
「これで…、消えろぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!」
一斉に、全方位から、俺の最大威力の魔法の斬撃が、妖精目掛けて降り注いだ!!これなら、回避すら不能!!相手は、受けることしか出来ない!!問題は、この攻撃がどれほど相手に効くのか、ということぐらいだろうか…。俺の目の前で、無数の魔力の衝突が起き、驚異的な威力の光の爆発が巻き起こる!!…流石に、これで無傷ということは無い、だろう…。
「……どうなった?」
ゆっくりと、光が止んでいき、攻撃の中心が見え始める。そこには、鎧の影が、薄っすらと見えていた。よく見ると、鎧にヒビが入り、その耐久力が失われているように見える。だが動きを見る限り、致命傷には、至っていなさそうだった…。
「ちっ…!!」
ここで、仕留められなかった時点で、はっきり言って俺の敗北と言ってもいい。二度も同じ手が通用することもないだろうし、これ以上の攻撃が、もう一度当てられるとも思えない…。だが、思考を止めたら、そこで本当に、負けが決まる!!何か、何か無いだろうか。この状況が、覆るような、確定的な何かは…。
「「…難しく考える必要は無いわよ、ベイ…」」
「…」
不意に、アイラが俺に話しかけてくる。何だか、変わった声だな。ぶれているような、二重に聞こえるような?そんな声だ。
「「私が今、あなたの上位の強化魔法を使ってるじゃない。だから、あなたも使えばいいのよ…。この、強化魔法を…」」
「…」
アイラは、何を言っているんだ?そりゃあ、神魔級強化を、俺が使えれば、この状況は変わるかもしれない。でも、いくら魔力操作に関する練習を積んできた俺だとしても、見ただけで相手の魔法を取得出来るなんてことは、出来やしない。むしろそれが人間に出来たら、魔法は、盗み・覚え放題だろう。魔法は、そんな簡単なものじゃない。俺が、一番良く知っていることだ。
「「…出来るわよ。だってあなたは…」」
「うん?」
「「ベイ・アルフェルトなんだから…」」
…どこかで聞いたようなセリフだな。あれ、何処だったか?思い出せない。…ともかく、そんなことを俺が出来るはずが…。
「…」
いや、待てよ。絶望的な状況には、違いない。何もしないより、試してみるというのも、悪くないのかもしれないな。…まず、相手の魔力をよく見る。神経を研ぎ澄まし、感覚と照らし合わせ、どの魔力が、どの程度の流れで組まれているのかを確認する。…そんなこと、人間には、到底出来ることではないだろうが…。
「…やるしか無いか」
俺は、アイラを見つめた。主軸に組まれている、大きな属性の流れが見える。だが、その中に、見覚えのない魔力も入っていて…。
「…やはり、無理か…」
「「…」」
アイラは、黙って俺を見つめ返している。まるで、俺が出来ないと、思っていないような瞳をしていた。だが、無理なものは、無理…。
「…?」
もしかして、あれは転移魔法か?それにあれは、レムが、鎧を形成する時の魔力に近い気がするし。あれは、ミルクの牛や、魔神創造の制御に近い流れの気がする…。それに、何処と無く一体化した時の、身体に流れる魔力に近いような…。
「…」
「(マスター?)」
「(ご主人様?)」
俺は、感覚を頼りに、魔力を練り上げていく。目を閉じ、魔力だけをより感じることが出来るようにした。そして、アイラの身体に流れる魔力に、己の魔力を似せていく…。
「…ベイ…。流石、私の夫ね…」
アリーの、つぶやきが聞こえる。俺の周りの光は、徐々に透明になっていった。そして、組み上げた全ての魔力が、循環し。ものすごい力と、能力を、身体に纏わせていく…。
「…出来た」
自分の体を、見る。俺は、神魔級強化を、その身に纏っていた。
この度、累計PV数が、100万アクセスを超えました。ありがとうございます。