VS???
ふぅ…。お昼も食べて、少し休んで。これから準決勝・第1試合。相手は、アイラ・バルトリオか…。さて、何処まで力を温存できるかな?転移魔法を使うレベルの生徒なら、あんまり手加減は出来ないかもしれない。俺は、入場通路を歩きながらそう思った。
「うん?」
「…」
俺を追い抜き、アイラ・バルトリオが早足でリングに向かって行く。…何だ。何か変な違和感を感じる。まるで、アイラに既に会ったことがあるような?いや、そんなわけないな。まず顔に見覚えがない。緑と、赤に染まっている長い髪。優しいようで、鋭さを宿した目つき。何処にも見覚えがない。だが、何か動作というか、動きを知っているような?自分でもよく分からない。まぁ、考えても分からないなら、どうしようもないか。今は、戦いに集中しよう。そして、俺も遅れて、リングに足を踏み入れた。
「只今より!!!!準決勝・第1試合を開始いたします!!!!!!!」
「「「「「「うわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああーーーー!!!!!!!」」」」」」
歓声が、凄い大きさで会場を包んでいく!!流石に準決勝、盛り上がりが凄いな。少し、耳が痛くなるぐらいだ。
「さぁ!!!選ばれた四人の選手が、激闘を見せてくれます!!!もう、言葉は不要でしょう!!!細かい説明は、もういりません!!!我々は、ただ見守るだけです!!普段見ることの出来ない、この最高の戦いを!!!!」
「「「「「うわあああああああああああああぁぁぁあああぁああああああああああああ!!!!!!!!!」」」」」
「両選手、位置につきました。それでは、始めましょう!!!準決勝・第1試合!!始め!!!!!」
いつも通り、太鼓の音が鳴り響き、試合が開始される。さて、アイラは、どういう風に動いてく…。
「…」
瞬間、アイラは俺の視界から消えた!!いや、いる!!俺は、必死でアイラの動きを捉えた!捉えた時には、アイラは俺の目の前。今にも拳を振るい、俺の腹にその拳を突き立てようと…。
ガキイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィイイイイイイイイイインンンンン!!!!!!!!!!
拳と剣がぶつかったとは、思えないほどの音が、大音量で会場に鳴り響く!!な、なんだ、こいつ…!!!瞬間的に、聖魔級強化をかけていなければ、今の一撃で俺は負けていた…。
「…」
初撃を防がれたからか、アイラは飛びのいて距離を取る。その身体は、全身が光りに包まれていて…。まさかあれは、聖魔級強化魔法か…!!!!!!
「う、ううん!!!!!!?????????」
「ど、どうしました!!アリーさん!!アイラ選手が使っている、魔法に見覚えでも?というか、ベイ選手も同じ魔法を使っております!!!!これは、どういうことでしょうか!!!????」
いや、こっちが聞きたいくらいだ。こいつは、本当に何者なんだ?聖魔級強化は、アリーが研究の末に編み出した魔法だ。発想は難しくはないが、それがかぶるにしても、あまりにも似すぎている。偶然か、それとも、真似されたのか…?
「…」
さっきからアイラは、一言も喋らない。それが逆に不気味だ。少しすると、アイラの周りの光が変化していく。薄く透明になり、まるでシャボン玉にでも包まれているかのように、所々魔力が虹色に光っていた。
「…来るか!!」
俺は、油断せず剣を構える!!だがアイラの攻撃は、俺の想像よりも遥かに速く、そして重いものだった!!動きは、さっきと同じ、ただのパンチ。だが、人間が放っていい力じゃない!!!!その拳は、大地をバターのように削り、大気を振動させ、巨大な熱量を生み出す!!巨大な爆発音を響かせ、その拳は、俺の剣に到達した!!!
「…ッウウ!!!」
何とか俺は、その攻撃を防ぎ、耐え切る!!だが聖魔級強化でも、ダメージが完全に防げていない。後ろの観客が、無事なのが不思議なくらいだ!!俺の周りは、まるで隕石でも落ちたかのように、不自然に抉れている。辛うじて俺の足元だけ、足場が残っていた。
「チッ!!」
俺は、剣を振るい、アイラを遠ざける。そして、まだ原型が残っているリングに移動した。なんだ、あの魔法?もしかしてあれは、…神魔級強化なのか?だとすると、目の前のこの生徒の強さは、神魔級ボスと同等、もしくはそれ以上…。
「(マスター!!)」
「いや、お前達が出る必要は無い。何とかする…」
「(しかし、ご主人様!!!これは、明らかに想定を超えた相手では!!?)」
「だとしても、ここは大勢の人が見ている。お前たちを出す訳にはいかない。勿論、一体化もだ。なに、負けても最悪、死ぬことは無い。やってみるさ…」
「「「「「「「「「「「(……)」」」」」」」」」」」
全員の、息を呑む音が聞こえた気がする。確かに、目の前のアイラは、普通じゃない。それどころか、一体化して挑むべき相手のはずだ。だが、状況がそれを許さない。…参ったね、本当。
「「…」」
アイラが、俺に向かって手招きをする。かかってこい、ってことか?
「すー、はー」
俺は、深呼吸を行う。それと同時に、気持ちを入れ替えた。手加減をしていた今までの自分から、神魔級ボスに挑む自分に…。よし!!!いっちょ、見せてやるか!!俺の全力を!!!!
「…行くぞ」
俺は、眼前に剣を構える。そして、跳躍した!!
「…シッ!!!!!」
大気を揺るがせるほどの、全力の剣がアイラを襲う!!!だが俺の剣は、アイラの素手で、容易に掴まれ、その動きを止めた!!
「…この!!」
俺の連続の剣技が、アイラに向かって降り注ぐ!!だが、実力の差はでかい!!まるで手加減されているかのように、右に左に、剣を防がれるだけだった!
「…なに、あの化物…」
アリーが、そう呟く。俺も思っていることだ。この子は、人がしていい強さをしていない。まさに、桁が違う存在と言えるだろう。今の俺が、いや、俺達が本気で戦って、やっと互角という所だろうか?
「グワッ…!!!」
流れるように、攻守が入れ替わる。速い、あまりにも速い!!俺の攻撃を、あっさり防ぎながら反撃してきたアイラとは違い。俺は防いでいるだけで、精一杯だ!!!というか、本当によく防げてるな、俺!!自分で自分を褒めたい!!!
「…」
考えろ、何か手は…。とは言っても、剣で駄目なら、魔法しか無い!!俺は、まずうっとおしいアイラの足を止めるべく、水魔法で強靭な糸を作り上げた!!!
「「…!!」」
水の糸が、アイラの身体に絡みつき、その動きを取り押さえる!!かなりの魔力を使ったが、お陰で何とかアイラの動きを止めることに成功した!!!よし、ここから反撃を…!!
「カァ…!!」
瞬間、アイラの身体から魔力が発生し、風の魔力が一つの形をなす。その生物は、俺の水の糸を、高速で切り裂いていった!!
「風の魔力のカラス…」
カラスは、アイラの肩に止まる。それと同時に、周りにアイラは、魔力の固まりを展開し始めた。それぞれが形をなし、その姿を形作る。闇の魔力のゴーレム、土の魔力の牛、水の魔力のイカ、火の魔力の猿、聖の魔力の天使4体、雷の魔力の狐。そして…。
「全属性の妖精…、だと…」
「はあああああああああああああああ???????????????????」
アリーの、訳が分からないという声が、会場内に鳴り響く。それは、そうだろう。だってこれは明らかに、俺の仲間たちを模しているんだから…。一体こいつは、何者なんだ…?答えの出ない疑問が、俺の頭の中に、うずまき続けた…。
160回めの更新になります。いやぁ~、やっとここまで来たという感じですね。でも、普通に200行きそうなペースです。恐らく行くでしょう…。皆さん、これからもよろしくお願い致します。皆さんの反応が更新の支えです。よろしければ感想など、暖かいご声援を頂けますと嬉しいです。それでは、召喚魔法で異世界踏破を頑張って書いていきますので、まだまだよろしくお願い致します。