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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・四部 闘技大会
158/632

最終日二回戦・続

 俺は、3頭のブレスに、それぞれ同じ威力の魔法を放ち相殺する。空中で身体を捻り、3頭から距離を取って、俺はリングに着地した。


「おっと、3頭の凄まじい連携!!これは、ベイ・アルフェルト選手も、流石に厳しいかぁ!!!」

「まぁ、余裕よね。余裕」


 アリーの解説は、解説としてどうなんだろうか?まぁ、具体的に召喚魔法使ってないから余裕です。って言われても困るけども。にしても、結構、手強いのは事実。少し本気を出すべきか…。俺は、3頭の攻撃をいなしながら、反撃のチャンスを伺う。だが、見事なほどに連携の穴が無い。近接戦闘のみで戦うのは、今の状態では無理があるか…。いい練習には、なるけども。


「うん?」


 不意に、俺のローブから魔力を感じる。ポケットの辺りか?するとそこには、いつの間にか手紙が入っていた。俺は、3頭の攻撃を器用に躱しながら、その紙を見る。


(えっと…、何々、魔法呪文かこれ?天地に広がる膨大なる魔力よ、万物の理を超え、その身を大きな一つの形として顕現せよ。我が前に立つ敵を焼きつくし、我が前に立ち塞がるすべての事象を破壊せよ。魔神創造。追伸、転移魔石を用いての、アイテム転送を試してみました。無事に届いたら、読んだ後燃やして下さい。ヒイラ・スペリオ…)


 読み終えると同時に、俺に迫って来ていた3頭が、突如出現した炎の拳によって殴り飛ばされる!!徐々に、俺の身体から魔力が消費され、後ろに巨大な炎の魔神が出現した。


(…なんか、ヒイラの炎の魔神とデザインが違うなぁ…。まるでカヤみたいだ…)


 燃える炎で出来た髪、大きく豊満な胸。そして出るとこは出て、引っ込むとこは引っ込んでいる、あのボディライン…。うーん、見れば見るほどカヤだなぁ…。俺の炎のイメージがカヤだから、それに引っ張られてるのか?まぁ、いいや。強そうだし…。


「(カヤですね)」

「(カヤだな)」

「(えっ、あたし?)」

「(ええ、どう見ても…。はぁ、私もご主人様に、今度土で魔神を作るときは、豊満ロリ巨乳な可愛いミルクちゃんでお願いします!!って言っとかないと…!!)」

「(むむっ、そう言われれば、あたしのような、そうじゃないような…)」


 本人には、あまり自覚は無いらしい。でも、見てみてよ。炎の棒を出して振り回し始めたよ、あの魔神。明らかに、カヤだあれ。


「な、なな、なんと!!形は違いますが、あれはヒイラ選手が使っていた魔法では無いでしょうか?いつの間にベイ選手は、あの魔法をマスターしていたんだー!!」

「まぁ、もうヒイラは、ベイにメロメロ…」

「アリぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいちゃぁぁぁぁぁぁぁあああああああああんんんんんん!!!」


 何だか、解説席のほうが騒がしいな。アリーがまた、ヒイラに揺さぶられている。微笑ましい。


「ふっ、遂に本気を出してきたか!!ノヴァ!!お前があのでかいのを、叩き潰せ!!レッドとイエローは、ベイを攻撃しろ!!」

「「ガウッ!!」」


 おっと、2人を見て和んでる場合じゃない。カゼル達の攻撃が、再開され始めた。だが、もうこっちには、形は違えどカヤがいる。もう、勝負はついたようなもんだな…。


「グオオオオオオォォォォォォォォオオオオオオオオオ!!!!!!」


 カゼルのノヴァが、咆哮を上げて、炎の魔神目掛け突っ込む!!だが、炎の魔神が振り回した棒によって、簡単に頭を跳ね上げられ、突進の勢いを完全に削がれた。


「「ガアァァアア!!!」」


 その隙に、他2頭が、俺目掛けて襲い掛かってくる。だが、炎の魔神の方が動きが早い!!俺に近づいていた2頭目掛け、棒をなぎ払う!!そのまま2頭は、巨大な棒の一撃を受けて、場外の壁に叩き付けられた!!


「「グギャ…!!」」


 小さく、うめき声を上げて、2頭は力尽きる。うーん、強いな、この魔神。


「…、ははははっ!!やっぱり強いな、お前は…。お前に勝つために、今出来る事を全てしてきた。家族から、ノヴァと、レッド、イエローを借り。自分の魔物を、強化する薬まで使った…。だがお前は、その程度の小細工では、勝てない相手らしい…。だがこのままでは、俺は終わらんぞ…!!!」


 そう言うとカゼルは、懐から1本の薬を取り出した。何だあれ、紫色でエグい泡立ちをしている。それをカゼルは、ノヴァの口目掛けて放り込んだ。


「広く澄み渡る熱よ、我が前に立つ者に宿り、その力を強化せよ!!ベイ・アルフェルト、これが俺の、今出来る全力だぁぁぁあああああ!!!!!!」


 これは、強化魔法か!ノヴァを、赤いオーラが包んでいく!!筋肉が盛り上がり、血管が浮き上がり始めた。魔法を使い終えたカゼルは、その場にうずくまっている。恐らく、魔力切れだろう。召喚魔法は、意外と魔力を使うからな。本来なら、俺のようにポンポン召喚出来るような代物じゃない。にしても…。


「グッ、グググ…」


 カゼルが使った魔力量にしては、ノヴァの強化率が高い気がするなぁ。さっき飲ませた、薬の効果か。身体に、負担がかかるほど強化されているのか、ノヴァも苦しそうだ。ふむ…。


「さぁ、これが最後の一撃だ。…砕けろ!!ベイ・アルフェルト…!!!」

「グウォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 咆哮を上げ、ノヴァが俺目掛けて、全力で突っ込んで来る!!…それを見て俺は、炎の魔神の発動を解いた。


「おおっと!!ベイ選手!!ここで、自ら強力な魔法を解いたぁ!!!一体、どういうつもりでしょうか?」

「戦った相手に、敬意を払ってるんでしょうね。相手の最後の全力を、己自身で受け止める。そうすることによって、相手の気迫に答えようとしているんだわ。面倒くさいから、そのまま潰せばいいのに。ベイは、律儀ね…」


 いや、まぁ。多分、炎の魔神でも、受け止める事は出来ただろう。だがそれでは、この状況で俺を倒すために、ここまでの準備をしたカゼルに申し訳無い。それに全力の一撃を、あっさり受け止められたとなれば、彼の今後の自信にも影響してくるだろう。だから俺は、全力の技の出し合いをしたうえで、カゼルが負けた。そう言う風に、見えるようにしたい。確かに一手間かかるが、辛くも無いし、これぐらいしてあげてもいいだろう。俺は剣を、目の前で低く構えた…。


「…」


 ノヴァの突進が、眼前まで迫る。その時俺は、身体に、とある強化魔法纏った。赤い魔力のオーラが、俺を包み、全身を染めていく。これは、アリーが聖魔級強化を完成させる前に使っていた、攻撃に特化させた強化魔法だ。全身に、溢れんほどの力がみなぎる。その力に任せて俺は、ノヴァ目掛けて、全力で剣を振り抜いた!!


「…」


 空気を裂くような澄んだ音がして、一瞬の静寂が訪れる。眼前まで迫っていた、ノヴァの動きが完全に止り、観客も息を呑んでいた。…ゆっくりと、ノヴァの顔に1本の線が入る。少しした後、その線から一気に血が溢れだし、ノヴァは倒れ、召喚魔法解除独特の、光の粒子となって消えていった。


「…ははっ、何だそれ!!…俺の完全敗北だ、ベイ・アルフェルト…」


 カゼルは、その光景を見届けて、魔力切れで力尽き、その場に倒れる。うーん、これで少しは、俺も本気で相手せざるを得なかった。て感じが伝わっただろうか?カゼル、お前はこの短い期間で良くやったよ…。俺でなければ、そこそこいけてたかもしれない。


「しょ、勝者!!ベイ・アルフェルト選手…!!!!何と言う、静かで、強烈な一撃!!!しかもあの魔法は、前回大会でアリーさんが使っていた、最後の試合を決めた魔法だぁ!!!ヒイラ選手の魔法に続き、アリーさんの魔法まで使えるとは!!やはり、アリーさんの夫はすごかった!!」

「「「「「うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああーーーー!!!!!!!」」」」」


 俺が剣を締まっている間に、救護班がカゼルを連れて行く。…もしかして、どこかで出てくる準備でもしていたんだろうか?今までに比べて、格段に出てくるのが速い。ともあれ、これで俺も、2回戦突破だ。後、1試合勝てば決勝…。俺は、締まった剣を僅かに握り、リングを降りた…。




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