表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・四部 闘技大会
154/632

受け流しの剣

 俺は、ロデを救護室に運び込もうと、背負って行く。だが…。


「…うおっと!!きゅう、救護室はまずい…!!」


 ロデが、俺の背中で目を覚ました。ロデがお守りのようなものを取り出し、魔力を込める。するとロデは、俺の背中から消えた…。どうやら、転移用のアイテムだったらしい。流石、アイテム使い。珍しいものを持ってるな…。


「うーん、これで救護室に行く必要も無くなったわけか…。…戻るか…」


 俺は、通路を戻り控室に足を進めて行く。その途中で、楽しそうに2本の剣を磨くレラを見つけた。2本とも同じ長さで、同じ形の剣だ。ロングソードのように、刃が細く、刃が長い剣だが、少し曲がりが有り、刃が反っている。レラは鼻歌交じりに剣を磨き終えると、両手に持って軽く振り回した。慣れた手つきで、曲芸のように剣を回転させると、スッと鞘に剣を収める。その動作には、1ミリの油断も、危なげも無い…。


「…おっと、ベイ君!!何時からそこに!!…あ、あはは、恥ずかしい所を見られちゃったかなぁ…」


 さっきの、鼻歌のことを言っているのだろうか?全然普通だと思うけど、レラ的には恥ずかしいのかもしれない。レラは恥ずかしそうに、胸の前で指先をくっつけたり、離したりしている。うん、可愛い。だが、流石は研究長といったところか…。今の動作を見るだけでも、どれだけレラが強いかが分かる。それにいつもより…。


「気合が入ってるみたいだね、レラ…」

「あはは、分かっちゃったかぁ…。まぁ、サラサちゃん相手だからね。先輩として、無様な戦いはしてあげれませんよ!!」


 ふーん!!っと鼻息を、拳を握りしめながら、レラは吐く。…いつもどおり、いつもどおりに、今のレラは見える。だが、どこか雰囲気が違っていた…。言動が変わったわけではない。明るさが無くなったわけでもない。だが、彼女の今の動きには、一切の迷いがなかった…。動作一つ一つが、よく見ると、いつもと動きが違う。まるで、さっき見たサラサのように、無駄のない動きを、レラはしていた。リアクションを取ってくれてはいるが…。


「…頑張ってな、レラ」

「おっ、ベイ君が私を応援してくれるとは、思わなかったね。これは、サラサちゃんにヤキモチ妬かれちゃうなぁ…。あははは」


 照れくさそうにレラは、俺に背中を向ける。だが、手に僅かに力が入ったのを、俺は見逃さなかった。


「第4試合決着!!!!!!!!!!!!!!」


 外の魔法音声が聞こえる。どうやら、次の試合が始まるみたいだ…。


「じゃあ、行ってくるよベイ君。サラサちゃんも、応援してあげてね!!」


 そう言うと、レラは入場者通路の方に向かって歩いて行った。…やはり隙がない。レラはレラで、普通じゃないな。俺はそう思いながら、2人を応援すべく、一旦、観客席に向かった。



「で、なんで俺は、ここに座っているんだろう…」

「別にいいじゃない。ねぇ?」

「勿論です!!しかもアリーさんは、今回は解説役。ベイ君は優勝候補。どちらもそれなりの、立場ある立ち位置。空いてる席の提供ぐらい、造作も無いってもんですよ」

「と言われても、ここはねぇ…」


 俺がいるのは、解説席の真横。アリーの隣だ。確かに、試合がよく見えるけど、何だか恥ずかしい…。


「いやぁ~、それにしてもアリーさんが、ベイ君を捕まえてくれてよかったですよ。この試合は、解説できるか分かりませんからね、実際…」

「そうね。ベイの目に頼るとしましょう」

「えっと、何の話…?」

「レラとサラサの、試合の話しよ。すぐに勝負がつくかもしれないけど、何をするにしても私の目で追えるかも怪しいわね…」


 そう、アリーが言う2人の試合は、すでに始まっている。2人共、試合が始まって数分経つのに、一向に動かない。2人共、剣の柄を握ったまま、相手を見据えて止まっている…。だが観客は、誰1人として文句を言わない。それは、この張り詰めたように漂う、異様な緊張感のせいだろう。目の前の2人は、明らかに普通の戦いはしない…。その気迫が伝わってくるからこそ、誰1人、この状況が意味のないものだと思っていなかった。


「おっと、動きますか…」


 サラサがゆっくりと、胸の前で剣を構え、そのまま背中に担ぐ。今、サラサが使っている剣は、とても大きな剣1本だ。背の高いサラサよりも長く、刃が大きなその剣は、どんな魔物も一撃で切り裂けそうな、強烈な見た目をしている。刃は黒く、光を反射して光るその刃は、異様な切れ味をしていることだろう…。


「シッ…!!」


 短いサラサの声と共に、剣が振り下ろされる。すると、目の前のリングが、衝撃で切り裂かれていった!!その衝撃は、レラに向かって真っ直ぐに進む!!


「あーっと!!これは強烈な一撃!!…しかし、レラ選手全く動かない!!!」


 そのまま、レラは衝撃に飲み込まれるかと思った。しかし…。


「よっと…」


 軽い動作で、レラは剣を振るう…。すると、衝撃がレラを避けて後ろに飛んでいった…。


「…な、なななな!!!!?」

「逸らしたのね、今の斬撃を…」


 そう。レラは、あの無駄のない動きで、衝撃の軌道を逸らした。レラのいる足場の部分だけ、衝撃でボロボロになっておらず、綺麗なまま残っている。…異様だ。異様すぎる。


「次は、こっちの番かな?サラサちゃん」


 瞬間、レラの身体がブレて、消えた…。風魔法を使っての高速移動だな。俺には見えるが、観客には見えないだろう。そのままレラは、サラサに向かって2本の剣を振り下ろす!!


「クッ…!!」


 ガキィィイイン!!という、刃同士がぶつかり合う音がして、サラサがレラの2本の剣を、剣で止めた。そのまま間合いを取るために、力任せに剣を振り抜き、レラを吹き飛ばそうとする!!だが…。


「えっ…」

「駄目だなぁ、サラサちゃん…。私がこの距離で、斬撃の軌道を変えられないとでも、思ってるのかなぁ…」


 サラサの振りぬいた刃は、レラの剣に当たると、レラを避けて剣を振るわされ。全く意味の無い、攻撃の隙を作る形となってしまった。そこに、容赦なくレラの追い打ちの剣が、サラサの脇腹目掛けて振り下ろされる!!


「…!!」


 とっさに、後ろに飛んで、回避するサラサ。しかし…。


「まだ、私の間合いだよ!!」


 一瞬でレラは、再び距離を詰める!!サラサは、剣の軌道を変えられながらも、レラの攻撃を防ぎ、なんとか対応していった。しかし、今のレラが、明らかな脅威であることは変わりない…。


「どうしたのかな、サラサちゃん?そんな防いでばかりだと、勝てないよ?ドーンと、この先輩にぶつかって来なさい!!」

「…手厳しい、ご意見ですね、先輩…」


 サラサが、剣でリングをえぐり、岩をレラに向かって飛ばす。レラは、それを避け。やっと2人の間に、少しの間合いが出来た。


「…ふふーん。先輩相手に、隠し技持ったまま勝ち上がろうなんて、ちょっと許せないからね。…出来るんでしょう、あれ?」

「…」

「うーん、黙りかぁ…。でも今日は、私は手加減しないよ。うちの技を使ってでも、勝たせて貰うからね!!」


 レラのセリフ終わりを気に、サラサが再び、遠距離の斬撃を放つ!!だが…。


「甘い、甘い…!!」


 レラの目の前で、サラサの放った斬撃が反転する!!サラサの放った斬撃が、そのまま、サラサを襲った!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ