表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・四部 闘技大会
153/632

最終日一回戦

 訓練が終わってから部屋に帰ると、ヒイラがアリーと楽しそうに魔術研究をしていた。その場面を見て、なごみながらも、もう遅いのでヒイラを寮まで送っていく。その後、部屋に帰るとアリーは、にこやかな笑顔を浮かべていた。ヒイラが、仲間になってくれてよかったな…。そう思いながら俺は、その日は就寝した。ミルクの胸を揉みながら…。


「あっ、ひぃうっ、ご主人様!!私が寝れませ…、あうぅ…!!」



「さて…」


 そのまま眠って、今日は闘技大会最終日。残った14名が激突し、勝者が決まる。控室に入ると、皆、全員黙ったままだった。昨日の夜の和やかな雰囲気が、吹き飛ぶくらい、神経をとがらせている。特に1人、異様な集中力の者がいた…。


「サラサ…」

「今日は一言もサラサちゃん、喋んないんだよ…。怖いよね」

「レラ…」


 俺の横から答えてきたのは、レラだった。彼女だけは、いつもと同じように明るい雰囲気をまとっている。しかし、サラサは異常だ。その姿勢は崩れず、綺麗でありながら近寄り難い雰囲気を放っている。無心といったところだろうか。一種の、人が辿り着く精神の境地を漂っているように見える。正直、戦いたくないと、ここにいる全員が思っている相手だろう。


「それでは!!!運命の闘技大会最終日、開幕だぁ!!!!!!!!!!!!!!!」

「「「「「うわああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!!!」」」」」


 凄まじい声の歓声と共に、最終日の開会が宣言される。歓声で会場が揺れ、まるで振動しているかのようだ。


「運命の14人の戦士が出揃った!!後は、その勝敗を決するのみ!!果たして、誰が生き残るのかぁ!!!」

「予め作られたトーナメント表。これに、抽選によって選ばれた名前が当てはめられるわ。後は、優勝者が決まるまで戦うだけね」

「泣いても笑っても、今日で勝敗が決まります…!!では、運命の組み合わせ発表!!…どうぞ!!」


 会場の空中モニターに、組み合わせの名前が浮かび上がる。俺の最初の対戦相手は、ロデ・マルシア…。


「あちゃ~…」


 隣で、レラが悲痛の声を上げる。そんなレラの対戦相手は、サラサ・エジェリン…。…ああ~、頑張れ、レラ…。


「ベイ…」

「えっ、サラサ?」

「見ろ、このトーナメント表を…。この組み合わせ、お前と戦うのは、最後だ…」


 俺は、サラサに言われて、トーナメント表を見る。確かに、勝ち上がっていくと、当たるのは最後だな…。


「ふふ…。決勝で会おう、ベイ」

「おっと、サラサちゃん。私を倒してから、そのセリフは言って貰おうかな…」

「レラ先輩…。そうですね、まずは先輩、よろしくお願いします…」


 そう言うとサラサは、控室の個人部屋に入っていき、また集中に入ったようだ。しかし、レラもあのサラサを前にして、何故か笑っている…。…レラの本気も、見られそうだな。面白い試合になりそうだ…。


「さぁ!!では、早速試合を開始して行きましょう!!第1試合の入場者、どうぞー!!」


 実況の声で、第1試合の選手が闘技場に上がっていく。俺は第2試合だ、気を整えとかないとな…。10分後。俺の試合の番が来た…。


「さぁ!!第2試合の選手の入場です!!」


 歓声に見送られ、闘技場に行く道を進む。そして、闘技場中央に着いた。が、しかし…。


「よお!!ベイ君。この前はどうも。今日は宜しくな!!」

「ああ、よろしく…」


 本当にこいつ、この前会ったロデ・マルシアか?体格も、声も違うんだが…。しかも男だし。…まぁ、油断は出来ないか…。気を引き締めて当たろう。


「それでは、試合開始…!!」


 太鼓の音が響き渡り、試合が開始される。


「先ずは、挨拶代わりにっと…」


 ロデが試合開始早々に、見慣れないマスクをかぶり、瓶を投げてくる。あれは、ガスマスクか?だとすると、今、俺に投げてきた瓶は…。


「くっ…!!」


 俺は、ローブで口元を隠す。俺の目の前の床で、瓶が砕け。そして周りに、白い煙が発生した。


「どうかな、俺様自慢の眠り薬は…?」

「…ふっ」


 俺の周りに、瞬時に風魔法の風が巻き起こり、白い煙を周囲に飛ばしていく。よし、これでもう、大丈夫だろう。


「あちゃ~…。やっぱ、一筋縄では行かないか…。じゃあ、これならどうよ!!」


 今度は、緑色の瓶を投げてきた。直接、俺に当てるように、狙って投げてくる。俺は、その瓶を魔法で迎撃し、打ち壊した。瓶の中身が空中で撒かれ、床を溶かしていく…。…これってもしかして、酸?


「ふへへ…。上級魔物・イーターフロッグが出す、溶解液。触れたら、ただでは済まないぜ…」


 そう言ってロデは、また新たな瓶を複数取り出し、俺目掛けて投げつける。…なるほど、厄介な武器を使うなぁ…。俺は、魔法で丁寧に撃ち落として行く。…しかし、何本持ってるんだ?もう20本ぐらい、投げてきてるぞ?


「お次は、こいつだ…!!」


 次にロデが構えたのは、銃のような円筒形の筒だ。ただし、出てくるのは弾ではなく…。


「燃え尽きろ!!」


 強烈な炎だった!!あの筒、短いのにまるで火炎放射器だな。生身の人間がくらったら、ひとたまりも無い。俺は、水魔法で水の壁を作って、ロデの攻撃を防いだ。


「へへっ、チャンスだな…!?」


 ロデが、俺の水の壁目掛けて、何か玉のようなものを投げ入れる。すると、周囲に雷が発生し、俺を襲った。俺は、慌てず、落ち着いて回避する。


「ちっ、あれを避けるとか、どうかしてるぜ、全く…。うおっと…!!」


 雷が、ロデにも飛んで行った。慌てて、ロデは回避する。…どうやら、コントロールしている訳では無さそうだ…。


「ちっ、これじゃあ埒が明かねぇ…。仕方ねぇから、とっておきを見せてやるよ!!」


 俺に対して、攻撃が全然効かないことを感じたロデは、焦ったらしい。懐から、また違う筒を取り出した。その筒は、小さな穴が6つ開いており、本当の銃のように見える。


「さぁ、これでもくらえ!!!」


 ロデの掛け声と共に、銃の先端部分が回り出し、小さな魔法の弾丸が次々と射出された!!これは、さながら、魔法の機関銃だな。俺は、土の壁を形成して、その攻撃を防いだ。しかし…。


「そんな薄い壁じゃあ、こいつは防げねぇよ!!」


 徐々に、魔法の弾によって、壁が削れていく。


「おっと、あれは面白い武器ですね。アリーさん!!」

「思うに、筒の中に魔法石が仕込んであるのね。その魔法石に魔力を送り込んで、射出出来るようにしてあるのよ。簡易的に、無詠唱での連続魔法発射が出来る、という仕組みだと思うわ…」

「なるほど…。しかし、何故1発ずつなんでしょう?一気に6発出したほうが威力があるのでは…?」

「それは、魔力充填をする間の隙を、無くすためだと思うわ。1つずつ回しながら発射することで、充填から、射出までの時間をいい感じで、隙無く保っている。その為の回転と、連続発射だと考えられるわね…」


 へー、なるほどなぁ。うーん、面白いなぁ…。あれ、欲しいなぁ…。


(マイマスターには、あのようなおもちゃは、必要無いと思われます…)


 ………えっ!!誰!?…周りには聞こえてない…。もしかして、念話か?


(正解です。マイマスター。しかし、今はそのことより、相手の攻撃が壁を貫通しそうになっています。魔力を注いでの、強度増強を提案いたします)


 えっ、あ、ああ…。じゃあ、そうするか…。


「おら、おら、おら!!降参したらどうなんだ、ベイ君よう…!!」


 壁が面白く削れていくので、気分良さ気に、ロデは魔法銃をぶっ放している!!だが…。


「うん?」


 俺の土の壁が、徐々に治っていく。ついには、魔法の弾を通さないほどの、強固な壁として復活していた。


「げ、まじかよ…。え、ちょっと…!!ぎゃぁあああああ…!!」


 ロデの目の前で、土の壁は徐々に巨大になっていく…。そして、壁はそのまま倒れ、ロデを押し潰した!!…俺は、壁が人型に盛り上がっている部分に腕を突っ込んで、ロデを引っ張り出す。


「…これはひどいぜ、ベイ君よう…。負けても格好がつかねぇ…。ガクッ…」


 ロデは、そのまま気絶した…。


「け、決着!!!!!勝者、ベイ・アルフェルト~!!!!」

「「「「うわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああーーーー!!!!!!!」」」」


 歓声に包まれながら、俺はロデを背負って、リングを降りていく。にしても、もしかして、あの声はあいつの…。


「…」


 声はもう、帰ってこなかった…。だが、少し進化しているのかもしれない。それも面白い方向に…。俺は、誰に見せるでもなく自然と笑顔になっていた…。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ