意外とでかい
「いらっしゃいませー、ヒイラ。さぁさぁ、あなたの席はここですよー」
「…ああ、どうも…」
キッチンに入ると、ミルクがヒイラを案内する。俺の隣か。まぁ、妥当な位置かな?
「えっと…。ま、魔物?」
「そう、魔物」
俺の隣に座った、アリーが言う。所で、いつもならヒイラが座っている席は、フィーが座っているのだが、今日はどこに座るんだろう?
「マスター」
「うん?」
「そ、その…」
「…ああ~、なるほどね」
ミルクが仕切りに、俺に向かってウインクしている。俺は意図を察して、フィーを自分の膝の上に座らせた。
「…あ、ありがとうございます、マスター」
「可愛いフィーなら、何時でも大歓迎だよ」
「あうぅ…」
照れてるフィーは、可愛いなぁ。最近は、訓練でやられっぱなしだから、こういうフィーを見るのも新鮮でいい。思わず俺は、フィーを撫で撫でしていた。
「…魔物?」
「魔物」
ヒイラは、どこが魔物なんだ。ただのコスプレしている美少女がいるだけじゃないか?っと、再度訪ねてくるが、アリーは魔物だよ。っと短く返す。
「どこが?」
「そうね…。あそことか、あそことか…」
アリーは、ミルクの牛耳や、シデンの狐耳、ミエル達の羽などを指差す。
「へ、へ~…。本物なんだ、あの胸…」
何を勘違いしたのか、ヒイラはミルクの胸を見て言っている。…まぁ、あれは凄いからな。服の上からでも、凄さが分かるからな。解き放たれている時なんて、もっとヤバイ…。
「で、誰と誰が魔物なの?」
「私とベイ以外、全員よ」
「全員?」
「全員」
「はぁ~…」
なんだかヒイラは、今日はもう驚き疲れました。みたいな、ため息を吐く。 う~ん、まぁ、取り敢えず、食事にしよう。せっかく皆が作ってくれたのだし、冷めては勿体無い。俺はヒイラに、話は後でと促して、まずは夕食を食べることにした。
*
「う~ん、お腹いっぱい…!!」
「ふふふ、満足いただけたようで、なによりですよ」
ヒイラは、なんだかんだでお腹が空いていたのか、結構な量、食事を食べていた。それに、アリーに付き合って料理をしていた、皆の料理の腕が良くなっているのも、ヒイラが食べ過ぎた原因だろう。ヒイラは今は、満足そうにお腹を撫でている。皆は、片付けの真っ最中だ。
「…!!!」
「…うん?どうしたの、アリーちゃん?」
「ヒイラ…、あんたまさか…」
アリーは立ち上がると、ヒイラの隣に素早く移動する。そしておもむろに、ヒイラの胸をわし掴んだ!!
「…へっ?」
「…やはり。さっきあんたがお腹を撫でていた時、胸とお腹にかなりの段差ができていたから、もしやとは思ったけど…。ヒイラ、ミルク的に言う所の、あんた隠れ巨乳だったのね…」
…ぐにぐにと、アリーは掴んだ腕を動かす。うん。完全に、わし掴めてるね。ミルクほどじゃないが、これは結構あるんじゃないか…。
「…!!!」
「!?」
顔を赤くして、無言でアリーの腕から逃れようと、胸を隠し移動しようするヒイラ。しかし、今アリーから逃れるために移動するということは、俺にぶつかるということだった。
「おっと…!!」
「ひゃう…!!」
俺は、反射的にぶつかってきたヒイラの体勢を入れ替え、抱きとめる。その間も、ヒイラは目を伏せ、恥ずかしそうに胸を隠していた…。うーん、可愛い…。ちょっと襲いたくなる可愛さがあるな、これは。俺も男だ。そんな気分になったりもする、状況もある…。仕方ない、仕方ない…。
「ベイ、そこよ!!揉むのよ!!」
「…えっ!?」
俺の嫁は、何を言っているんだ…。嫌がってそうなヒイラに、そんなこと俺が出来るわけ無いだろう…。
「…そうだよね…。私の身体なんて、ベイ君には、そんな興味ないよね…」
「!?…いや、決してそんなことは…」
「そう…」
ゆっくりとヒイラは、俺の腕の中で、隠していた胸を出すように、腕を退けていく…。…えっ!!なに、これ…!!揉んでいいの!?揉むべきなの!?
「…」
ヒイラは目をぎゅっと瞑り、俺が揉みやすいように、胸を突き出しているように見える…。なんだこれ、可愛い…!!凄い威力ある、可愛さが出ている…。これは、揉まねばなるまい!!男として!!人として!!俺は、チラッとアリーを見る…。アリーは、首をうんうんと縦に振り、ゴーサインを出していた。…俺は、ゆっくりと、ヒイラの胸に手を伸ばす…。
「ふゃぁあん…!!」
「…」
ヒイラが、可愛い声を上げた。おお~、これは…。ミズキほどではないが、レムにも並びそうなほどの大きさ…。そして、いい感触…。うーん、何だか今までのヒイラとギャップがあって、凄い可愛い!凄い可愛いぞ!!
「あっ…。あっ…!!」
「…おっと!!」
思わず、揉みすぎてしまった…。ヒイラの口から、涎が垂れている…。うーん、エロい…。
「ふふふ、順調に落ちてるわね…」
…俺の嫁さんは、何だか満足げだ。頼もしいながらも、ちょっと怖い…。取り敢えず、ぐったりしたヒイラをベッドに運び、暫く休ませることにした。
*
「ひぃやぁぁああん…!!…ん、んん?」
「お、やっと起きたのね。ヒイラ」
「えっと…、おはようアリーちゃん…」
「夢の中で、お楽しみだったみたいね…」
「…!?」
「まぁ、いいわ…。ベイ達は今、軽い訓練中だから、終わったら送って行くわね。それまでゆっくり休んでていいわよ…。私達のベッドで…」
「私達の、ベッド…?……凄い、広いねぇ…」
ヒイラが寝ている横に、アリーは魔術書を広げて、あぐらをかいて座っている。それでも、十分な広さのあるベッドであった。ベッド全体を見たヒイラは、なんかエロいなぁ、という感情を、自然に抱いてしまう…。
「なんだったら、泊まっていく?見ての通り、寝るスペースは十分あるし、問題ないわよ。まぁ、ベイの横には、簡単に寝れないけどね」
「いやいや!!いいよ!!帰れるよ!!それに…」
「うん?このまま居たら、今日中に、ベイの虜になりそう…?」
「!?」
「まぁ、それも仕方ないけどねぇ…」
アリーは魔導書を眺めながら、紙にペンを走らせていく。その顔は真剣そのもので、かつて幼い頃見たアリーの魔法研究に向かう情熱は、少しも衰えていないことが確認出来た。
「それにしても、ベイ君は特異すぎるね…。私より上の魔力量、見たこと無い召喚魔物…。だと言うのに、今は訓練まで…。あれほど強くなって、一体何をするんだか…」
「うーん、それはねぇ…。色々と事情があるのよ。事情が…」
アリーは、これまでの事をおおまかに話した。魔王軍残党からの情報。創世級迷宮に近づいて得た確信。結果、世界に滅びが迫っていること…。
「…はぁ?そんなの、1人で何とか出来る問題じゃ無いじゃん!!今からでも、国とかに言ったほうが…」
「こっちには、こっちの事情があるのよ…。それに、私がいかに天才でも、確信が持てているのは、あの迷宮に近づけたベイ達のみ…。周りに証明のしようが無いのよ。創世級迷宮崩壊なんて、気が狂ったような話…」
「なるほどね…。近づけば死ぬんだもんね…。それは、どうしようもない訳だ…」
「でしょう?言った所で、止められるわけ無いけど。ただの人間にはね…」
「…まるで、ベイ君なら出来るって口ぶりに聞こえるけども…」
「出来るわ!!何故なら私の夫!!妻の私が、夫を信じないでどうするの?私は、ベイを信じるわ。どんな国家よりも、魔法使いよりも。ベイ達がいれば、この星は救われる…。勿論、私も少しだけど手伝うわ。それが私に出来る、唯一のこと…。だから、少しでも早く、強力な魔法をベイに教えてあげなくちゃ…」
「その為の、神魔級回復魔法…」
「ええ…。(それだけじゃないけどね…)」
「うん?今、何か言った…」
「ふふ、何も言ってないわよ…。それでね、少しでも早く、多くの強力な魔法をベイに教えたいの。協力してくれる、ヒイラ?」
アリーは魔導書を閉じ、真剣にヒイラに向き合う。その眼差しは、一直線にヒイラを見据えていた。
「はぁ…。まぁ、仕えた相手が、創世級とやりあうって言うなら、協力するのが専属魔法使いの勤めだよねぇ…。分かったよ。私も、出来るだけ強力な魔法を集めて、ベイ君に教えましょう」
「やった!!あなたがいれば、実質集められる魔法量は2倍になるわ。やっぱり、頼りになるわねヒイラわ」
「アリーちゃん…」
ヒイラ自身、アリーにここまで褒められたようなことは、今までなかった。それ故に、軽い感動のようなものがヒイラの心の内に沸き起こる。この天才に、自分は認められていたんだなぁ…。という感動が、ヒイラを奮い立たせていた。
「後は、ベイと夜を共にすれば対等って感じかしらね…」
「!??」
「ふふ、まぁ、それはいずれね…」
「あうぅ…。意地が悪いよ、アリーちゃん…」
ヒイラは、顔を赤くしてフードをかぶる…。それから2人は、ベイ達が帰ってくるまで、楽しそうに神魔級回復魔法の研究を進めた。幼かった頃に、2人して魔法研究を進めていた、昔を思い出しながら…。