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召喚魔法で異世界踏破  作者: 北都 流
第二章・四部 闘技大会
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「遂に、出来ましたー!!」


 7月頭。その日、俺達の部屋を、テンション高く訪れたのは、ミオだった。背中には、少し長めの縦長の袋を、背負っており、とても重そうに見える。だが、本人は、いたって元気なようだ。やたら、テンション高く、俺達の挨拶にも答え、部屋に上がってくる。その理由は、本人の第一声通り、あれが出来たからだろう。


「遂に、出来たのね。例の物が…!」

「はい!!!こちらが例の…」


 そう言って、ミオは背負っていた袋を降ろし、その封を開ける。


「ベイ君専用武器、魔石剣で~す!!!」


 その声と供に現れたのは、うっすらと虹色に刀身が光る、変わった剣だった。その形状は、刃は細長く、背中に背負わないと持ち運びに苦労しそうなほど長い。持ち得も長めで、両手で振ることを、考慮して作られているようだ。クレイモアと、呼ばれる剣に近い気がする。


「どうです?私の最高傑作は!!」

「ふむ、そうね。どうベイ?」

「うーん…」


 実際に、手に取って確かめてみる。持ち得には、黒い布が巻かれており、とても握りやすい。部屋で振り回すわけにもいかないから、軽く振るだけにしておくが、感触もいい感じだ。それに、この重量なら、片腕での扱いでも、俺なら支障ないだろう。


「どうです?どうです?握っているだけで、魔力の肩代わりもしてくれますし、その魔力貯蔵量は、神魔級!!!それに、高密度な魔力の魔石で作りましたので、かなりの業物に仕上がっています。こんな細身の刀身なのに、鉄を切ろうが、魔法攻撃を受けようが、傷一つ付きません!!」

「へー、そりゃあ、すごい…」


 俺が、今使っているアリーから貰った剣なら、そのぐらいで刀身に傷が付いているだろう。まぁ、強化魔法をかけて使っているから、今では滅多に、傷つくことはないんだけども…。


「さらに、頂いた謎の石も剣の柄先につけて、いいアクセントになっています。で、これ、結局何なんですかね?」

「まぁ、ただの飾りよ。誰の物か、分かりやすくするためのね」


 まぁ、召喚用の魔石なんて分かるわけないよな。ん?何とも契約していない魔石だから、無色のはずなんだけど、薄っすらと虹色に輝いている…。……、まさかな。きっと、刀身の魔力の影響を受けているだけだろう。そのはずだ…。


「…、まぁ、とても扱いやすそうな、いい剣だな。ありがとう、ミオ」

「いえいえ!!私も、いい仕事が出来て、満足です!!…ああ、別れが辛い。ですが、私より、ベイ君が使ったほうが、その子も、本来の性能を十分発揮できるでしょう…。ベイ君、私が作った魔石剣・アルティを、よろしくお願いしますね!!」

「魔石剣・アルティねぇ…」


 そう言い、刀身を見ると、キラっと輝いたような気がした。気のせいかもしれないが…。


「さて、あまり居ると別れが辛くなるので、私はここで帰りますね。あ、あとこれが鞘です。こっちは急造品ですんで、シンプルで申し訳ないんですが、一応、どうぞ」

「ああ、ありがとう」

「ではこれで…。…最後に、その子の闘技大会での活躍、期待しております。その勇姿、是非見せてくださいね!!」

「そうね…。ベイと上手く当たれば、見れるかもね…」

「いえいえ!!!私は、出場しません!!観客席で、応援させてもらいます」

「うん、そうなの?あなたなら、結構、良いとこまで行けると思うけど?」

「だって…、ベイ君が出ますからね…」

「ああ…。まぁ、そういう判断なら、仕方ないわね…」


 ということは、ミオの大会に出る目的としては、優勝賞品の卒業までのすべての障害免除が、目的というわけか。で、俺が出るから、優勝は出来ないと悟って、出ないと…。うーん、、実力を買ってくれるのは嬉しいんだけど、なんだか寂しいなぁ…。


「…それに、自分で作った剣と戦うなんて!!悲劇的過ぎますし!!!!!!!」

「……」


 どうも、そっちのほうが大半の理由みたいだな…。アルティが、ある限り、ミオは、俺とまともに戦えないという訳か。それなら、仕方ないな。


「では、私はこれで、失礼します。……、ベイ君!!絶対、大切に使ってくださいね!!!!!!!」

「ああ、わ、分かったよ…!!!」


 最後に、ものすごい剣幕でそれだけ言うと、ミオは帰っていった。俺は、再び、鞘にしまわれた、魔石剣を、眺める…。


「…う~ん」

「どうしたの、ベイ?」

「いや、ちょっとね…」


 さっき、こいつの名前を呼んだ時、名付けが完了した。と、考えれなくもない…。召喚石は、薄っすらとではあるが、反応しているみたいだし。これは、もしかすると…。


「よっと…」


 俺は、アルティを鞘から抜き放ち、腕に持って念じる。浮かべるのは、魔石を、自分の中に収納する感覚だ。すると…。


「おっ…!!」


 すんなりと、アルティは俺の中に収まっていく。どうやら、召喚石の効果で、収納が出来るみたいだ。…、これ、鞘、要らなくなっちゃったなぁ…。


「なるほどねぇ。魔力として、収納できるというわけ…。これは便利ね…」


 そう言いながら、アリーは、鞘を部屋の隅に置く。うーん、一見飾ってあるように見えるけど、すぐに片付けられてしまったな…。すまない、鞘…。


「確かに、かなり便利な剣だ。持ち運びも、これで楽々だし。強度も、かなりの物みたいだし。今の、剣とは、分けて使えそうだな」

「あとは、これを、例の泉につけるだけね…。さて、上手く事が運べばいいのだけど…」


 そう。アリーの言う通り。この剣が、魔物化すれば、更に、強い剣になる可能性が出てくる。いい武器を手に入れるのは、この先の戦いにおいても、かなりプラスになるだろう。早速、俺達は、例の泉のある迷宮に、行くことにした。



「ここに来るのも、久しぶりだなぁ…」


 レムの進化以来だろうか。あの時は、結構な脅威をこの迷宮からは感じたものだが、今はそうでもない。強くなったなぁ…、俺達。


「さて、泉も、そのままあるな。ここに、アルティを…」


 ゆっくりと、泉の端にアルティを漬ける。これで、しばらく様子を見てみよう。俺達は、アルティを漬けたまま、その場でしばらく訓練をすることにした。



 *1時間後



「う~ん、ちょっと、召喚石の虹色が濃くなっているような、いないような?」


 結論から言うと、変化しているのか分からない。魔力は、吸収しているようだが…。


「…その剣は、私と違って、自主的に多くの魔力を吸い上げているわけではありません…。必要な、魔力吸収量に達するには、時間が必要という、ことではないでしょうか?」

「なるほど。ということは、かなり漬けておく必要があるということか…。前の時、レムはどれくらい吸収したんだ?」

「そうですね…。今の、この剣の吸収魔力量の、1000倍くらいでしょうか?」

「せ、1000倍…!!」


 ということは、かなりの時間、泉に着けておかないといけないということか…。しかも、それも一応の目安だから、もっと掛かるのかもしれない…。ともかく、大会中までに、魔物化は難しそうだな…。


「うーん、取り敢えず、泉に漬けたままにしとくか…。その前に、確認しておこう…」


 俺は、アルティを召喚魔法で、召喚できるか確認する。問題なく召喚できた。そして、アルティを泉につける。そのまま、召喚を解除して、再召喚。すると、アルティは、すぐに俺の腕に戻った。うん、正常に、召喚ができる。これなら、漬けておいても、何時でも取り出せるだろう。


「ミルク」

「はいはい、ご主人様!!」


 泉に、ミルクが土魔法で剣を入れておくスペースを作る。アルティを漬けて、そのスペースに蓋をする。これでよし。上手く、周りに合わせて、カモフラージュも出来ている。ここに剣が埋めてあるとは、誰も思わないだろう。


「後は、様子見だな…」

「美少女化!!美少女化!!美少女化!!美少女化!!美少女化!!…」


 …ミルクが、アルティに、必死になって美少女化しろと吹き込んでいる。果たして、今のアルティに言って、効果はあるのだろうか…。ともかく、待とう…。俺達は、アルティを漬けたまま部屋に戻ることにした。





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